あふれる情報で見過ごされる差別の背景——いまメディアが伝えるべきこと | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
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2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
2020/5/20(水)
あふれる情報で見過ごされる差別の背景——いまメディアが伝えるべきこと
2020/5/20(水)
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あふれる情報で見過ごされる差別の背景——いまメディアが伝えるべきこと
2020/5/20(水)
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 あべ  新型コロナウイルスに関するニュースが日々大量に流れているなか、どの情報を選択すればいいのか、なにを信じていいのか判断がつかない。そうした不安に苛まれたり、いわゆる「情報疲れ」に陥ってしまう方も多いんじゃないかと思います。

 

今回は、調査報道を支援するスローニュース社で代表を務める瀬尾さんをゲストに、「いま求められているニュースの在り方とはなにか?」というテーマについて話していきます。知りたい情報を正しく届けることがニュースの目的なら、この社会不安下で一体どのような報道が求められているのでしょうか。
 

<瀬尾傑(せおまさる)>
1965年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業。88年 日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。 経営企画室、『日経ビジネス』編集部など を経て退職。 93年 講談社入社。 『月刊現代』、『FRIDAY』、『週刊現代』各編集部、ジャーナルラボなどを経て、『現代ビジネス』創刊編集長、第一事業戦略部部長などを歴任。2018年8月にスマートニュースに入社、同年8月に設立した『スマートニュース メディア研究所』の 所長に就任し、ジャーナリズムの発展や調査報道の支援に従事。19年2月にスローニュース株式会社代表取締役を兼職。19年4月より、インターネットメディア協会代表理事を務める。

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第24回(4/28開催)を要約・編集したものです。

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ファストニュースで埋め尽くされるメディア

 あべ  瀬尾さんはいまの日本のメディアの現状をどう見ていますか。特に、オンラインメディアの課題について聞いていきたいなと思っていて。

 

 瀬尾  ひとつは、広告収益によるビジネスモデルに依存し続けたために、PV(ページビュー)競争に陥っているという課題があります。コンテンツ作成に十分なお金をかけられなくなっていて、ニュースの信頼性・正確性を担保できなくなっている。

 

いま、ネットに限らず多くのメディアが出しているのは「ファストニュース」です。事件・事故、また新型コロナウイルスに関する話もそうですが、そうした情報をとにかく早く出すことに価値があって、早く出せば見てもらえると。

 

ただ、ファストニュースばかり流通している現状では、読者がニュースの波に飲まれて消耗してしまいます。

 

もちろん、事件・事故が起こったときに自分の身内がいないか知りたいとか、災害など危険な情報をいち早く知りたいとか、そうした気持ちが起こることは当たり前で、好奇心があることもわかります。だからファストニュースには一定の価値があるとは思っています。

 

一方で、僕はニュースにはもう一つの軸として「スローニュース」が必要だと思っていて。たとえば時間をかけて取材する調査報道のほうが、ファストニュースよりも信頼性・正確性は高い。

 

いまはSNSで現場の情報がリアルタイムで上がってきたりする時代なので、鮮度の高いニュースは飽和状態にあります。そういう意味でも、いまのメディアにはスローニュースが必要なんじゃないかと。

「区別」を「差別」にしないためには

 あべ  コロナ禍におけるニュースのあり方については、どのような問題意識を持っていますか。

 

 瀬尾  ジャーナリズムの一つの大事な役割に「世の中に埋もれた問題を発掘する」ことがあると思うんですけど、それができていないことに危機感を持っています。

 

たとえば、ある地域で感染者の家族がすごく差別を受けている現実があります。自宅に落書きをされたり、家族が会社に居られなくなったりするケースがあるわけですよ。

 

そうした差別が起きている地方の実情を、メディアがあまり報じていないのは問題だなと思います。

 

また、この差別の話は倫理的にも人権的にも問題があるし、絶対になくさなくてはいけないことなんですけど、一方で「なぜ差別してしまうのか」「なぜ差別が起きる文化やコミュニティが続いてしまっているのか」といった問題の背景も知らなくてはいけないと思うんです。

 

 あべ  いまの話で一つ論点としてあるのは、差別と区別の違いはなにかということですよね。感染や濃厚接触の疑いがある方を隔離するのは、サイエンスから見ると区別だと。だけども、そこに「だからあいつらは……」という感情が生まれた瞬間に、差別に近づいていく。

 

ここの差をしっかりつけるには、冷静な視点や客観的な議論、そして他人の嫌な部分を批判しないことが必要です。そこで僕がリディラバジャーナルで大事にしているのは、加害者への取材なんですね。

 

たとえば、痴漢や性犯罪、薬物依存等の加害者の方々の話を聞いてくと、彼・彼女らの中に「被害者性」があるのが見えてくるわけですよ。

 

この被害者性をちゃんと理解して許容してあげないと、人を憎むようになってしまう。だから一番大事なのは、イシューと人を切り分けて、属人的でない議論を進めていくことだと。

差別する人を差別する、歪んだ構造

 あべ  日本のメディアは俗人的な議論が好きだなあと思っていて。問題が起こったときに「だれがやったか」を追うじゃないですか。でも本当は、なぜ彼・彼女たちは問題を起こしてしまったのか、それは個人の中にあるマイノリティ性や心理的構造が理由なのか……そうしたところまで含めて報道していかないと、問題を解決することはできないですよね。

 

 瀬尾  安部くんの言う通りで、いま、まさに“差別する人を差別する人”が生まれる構造に入ろうとしてしまっていて。

 

その人たちって「田舎者だから差別してしまうんだ」と言いがちだけれども、本当は差別が起きる構造を理解しないといけないし、その上で解決方法を考えなくてはいけない。でも、差別を断罪してしまった段階で、問題解決は止まってしまうんですよね。

 

 

 

 あべ  そうなんですよね。あとはやっぱり、ポリティカル・コレクトネス(言語表現や創作物、社会制度などからあらゆる差別をなくすべきだという考え方のこと)を過度に求めすぎないことも大事ですよね。

 

要は、差別は絶対ダメ!という考え方がキツくなりすぎると、また差別が出てきてしまうと。

 

たとえば、「あいつが差別的な発言をした」と言葉だけをあげつらってしまうと、「その人を叩かないといけない」という別の怒りが起きて、“差別する人を差別する人”が生まれる構造に陥ってしまう。

 

でも、人間は誰しもが聖人君子なわけではないですよね。みんなそれぞれにロクでもない部分がある。それが人間の本性であることを、僕たちはある程度理解しないといけないと思うんです。

 

(動画全編につづく)

 

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【オンライン勉強会「リディズバ」第24回(4/28開催)】

・テーマ:コロナ時代のニュースとの付き合い方

・語り手:安部敏樹、ゲスト:瀬尾傑さん

・時間:約81分間

 

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