地方創生って結局なに?「ぶり奨学金制度」創設者が語る | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
いまこそ学び直し!あべとしきと考える社会問題の構造20
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2020年4月。新型コロナウイルスの感染拡大により、すべての人が、ひとつの社会問題の「当事者」となりました。不安に溢れる今だからこそ、困難な状況にある人たちへの想像力をもち、社会全体で「やさしい関心のセーフティネット」が築けたら――そんな思いで、私たちリディラバは、4月5日から毎日毎晩、社会問題に関するオンライン勉強会「リディズバ」をスタートしました。 熱量あふれる勉強会のようすを、記事と動画でお届けします。
2020/5/21(木)
地方創生って結局なに?「ぶり奨学金制度」創設者が語る
2020/5/21(木)
2020/5/21(木)
地方創生って結局なに?「ぶり奨学金制度」創設者が語る
2020/5/21(木)
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 あべ  「地方創生」というワードはよく耳にしますが、そもそも地方創生とはなんなのか、ひいては政策ってどのようにつくられているのか?これはあまり語られてこなかったテーマかなと思います。

 

今回は、地方創生の文脈に長らく関わってきた井上貴至さんをお呼びしました。総務省に入省した後、鹿児島県長島町の副町長を経て、現在は内閣府で地方創生推進事務局の参事官補佐を務める井上さん。地方の現状や課題については相当のデータベースを持っている方です。

 

<井上貴至(いのうえたかし)>
内閣府地方創生推進事務局参事官補佐。人とお会いする、町に出るのが何より好き!「地域で活躍する人はそのホームグラウンドが一番輝く」という信念のもと、総務省入省後、毎週末、私費で全国の現場を訪ね歩く。キャッチフレーズは「井上貴至(いのうえたかし)は、令和の伊能忠敬(いのうただたか)になる」。ミツバチが花粉を運ぶように、僕が出会った素敵な人や事例を繋げ、新しい花を咲かせたい。地域のミツバチがライフワーク。2015年4月、自ら提案した地方創生人材支援制度の第1号で、世界一のブリの町・鹿児島県長島町に派遣、29歳で史上最年少の副町長に。ぶり奨学金など官と民の力を合わせた地域”超”密着の取組が注目を集める。愛媛県市町振興課長を経て、本年4月より現職。

 

 

 

 

※上記ダイジェスト動画・本記事は、リディラバ主催のオンライン勉強会「リディズバ」第19回(4/23開催)を要約・編集したものです。

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地方創生の成功事例「ぶり奨学金」とは?

 あべ  井上さんは地方創生に関する取り組みを数多くされてきたと思うんですけど、たとえばどんな事例がありますか。

 

 井上  長島町の副町長を務めていたときに創立した「ぶり奨学金制度」は注目されましたね。これは高校・大学卒業後、長島町に戻ってきた方の奨学金返還を補てんする制度です。

 

長島町は養殖ブリの世界シェア10%を占める“ブリの町”なんですけど、その出世魚かつ回遊魚であるブリにちなんで「地元に戻って活躍してほしい」という願いを込めて名づけました。

 

この制度は、町全体で利用者の返済を補てんする仕組みになっています。地域の方や事業所から寄付を集めたり、「養殖ブリが1本売れたら1円寄付」というルールをつくったりして、みんなでお金を集めました。

 

 あべ  ちなみに、なぜ地方創生の施策として奨学金制度をつくろうと思ったんですか。

 

 井上  まず、地方創生の目標は「人口減少の克服」と「地域経済の活性化」です。

 

たとえば長島町は高校・大学が少ないので、卒業後に町外へ出て戻ってこない方が多いと。それで町の人口が半分とかになった場合、町の事業者の売り上げも半分になってしまいますよね。

 

そこで「地元に戻れば返済を補填する」という仕組みをつくったんです。地域の方々に「できる範囲で寄付ください」と話したら、ちゃんと寄付をしていただけました。長島町で人口や経済の問題があることはみなさん分かっているけど、どうしたらいいかわからない。そこに奨学金制度というチャンネル・アイコンがあると、行動を起こしやすいんですね。

 

 あべ  ぶり奨学金を使って町外へ出ていった方々は、そろそろ戻ってくる頃なんですか。

 

 井上  実はいま、社会増減(ある地域の人口が他地域からの転入、あるいは他地域への転出によって生じる増減)がほとんどなくなりました。

 

長島町は人口約1万人の町なんですが、これまで多いときで毎年100人以上出て行ったのが、いまはもう20人くらいになっています。来年にはその増減が入れ替わってくる、しかも出生率も上がってきているので、町としては安定したモードに入ってくると思います。

「人口増加=地方創生」ではない

 あべ  僕自身すごいなと思っているのは、地方創生は造語なんですが、そのまま台湾でも使われているんですよね。地方創生という概念が海外にそのまま輸出されているのは、なかなか新しい。「地域活性化」とはまた違ったニュアンスで受け止められていると。

 

そうした中で、そもそも日本における地方創生とはなんなのか、というところを井上さんにお聞きしたいです。

 

 井上  先ほども言ったように、国の目標は「人口減少の克服」と「地域経済の活性化」です。一方で僕はもっとミクロで考えていて、地方創生というのは、地域の一人ひとりに居場所や役割があったり、それぞれのチャレンジが連なっていくことではないかと思っているんです。

 

いままでは国や市町村などに対して「税金払っているんだからやってよ」という、おまかせ民主主義だったんですけど、それだけではやはり限界があって。自分たちが参加すること、グラウンドに降りて汗をかいていくことが実はすごく楽しくて、地域に必要なことなのかなと思ってます。

 

 あべ  そもそも地方創生が人口減少を止めるために始まった施策だということは、たぶん多くの方が知らない事実だと思うんですよね。

 

 井上  実は「人口減少の克服」というのはすごく大事なキーワードで、人口増加とは言っていないんですね。目標は人口安定かもしれないし、人口減少に応じた社会システムや助け合いのコミュニティをつくることかもしれない。

 

なので、地方創生は必ずしも人口の増加だけを目標にしているわけではない。そこがミソかなと思ってます。

伝わらない政策の中身と真意

 あべ  そもそも政策ってどうやってつくられるか、という点についても教えてもらってもいいですか。これは意外に多くの人にとってブラックボックス化しているんじゃないかと思っていて。

 

 井上  いろいろな部署があってやり方が異なるので、一概には答えづらいですが、よくあるのは役所で審議会を開いて意見を聞き、問題点があったらその解決のために法律を改正したり……というケースですね。

 

たとえば審議会では、社会に大きな影響を与えたセンセーショナルな事件や、さまざまな社会問題などに対する改善策について話し合います。

 

その際は諸外国の事例をはじめ、似たような制度や仕組みを調べます。だいたいは比較表のようなものを作りながら原案を整えていきますね。

 

 あべ  そうした議論の過程や背景をふくめて、政策ってなかなか国民に伝わっていないですよね。

 

 井上  それは僕も力不足をすごく感じてますね。政策の背景や真意が伝わっていないし、支援を必要とする人に必要な情報が届いていない問題もある。

 

 あべ  これは本当にそうで、社会問題の分野でよくあるケースです。たとえばシングルマザー向けの良い支援制度があるんだけど、そういう制度があること自体、シングルマザーの方に届いてないから、結局だれも利用していないと。

 

(動画全編につづく)

 

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【オンライン勉強会「リディズバ」第19回(4/23開催)】

・テーマ:「地方創生」って結局なに?社会を変える政策とは

・語り手:安部敏樹、ゲスト:井上貴至さん

・時間:約68分間

 

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