コロナショックで打撃を受ける「夜の世界」スタッフが語る実情 | Ridilover Journal(リディラバジャーナル)
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2020/5/22(金) : 2020/5/29(金)まで無料公開
コロナショックで打撃を受ける「夜の世界」スタッフが語る実情
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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、休業要請されている性風俗業や接待を伴う飲食業。店舗の休業に伴って職を失ったものの、公的な支援を申し出にくく、生活に困窮する女性たちが増えているという。

 

神奈川県相模原市内のキャバクラでボーイ、ガールというスタッフとして働く石川祐一さん・菜摘さん夫妻に、「夜の世界」の実情と二人が始めた支援プロジェクトについて聞いた。

 

 石川祐一さん・菜摘さん夫妻

女性たちが「夜の世界」で働く理由

――ひとり親や生活困窮者などに対して無償で食料を配布する「フードパントリー」の活動をされているそうですが、どのような経緯で始めたんですか。

 

私たちは長年キャバクラなどの接客を伴う飲食店で、ボーイ、ガールと呼ばれるスタッフとして働いてきて、DVから逃れてきた人やシングルマザーで生活に困窮している人たちなど、さまざまな人たちを見てきました。

 

そうした「夜の世界」で働きながら苦しい生活を送っている人たちへの支援として、2019年秋から「ハピママメーカープロジェクト」を立ち上げました。当初はキャリア支援の活動としてのスタートを目指していましたが、コロナの影響で活動がストップしてしまった。

 

この状況下で、自分たちにも何かできないかと思い、交流があった川口こども食堂の代表の方に相談したんです。その方にアドバイスをいただきながら、食料支援を行うことにしました。現在、社会福祉士や弁護士などの専門家に加え、シングルマザー当事者も含めて10人ほどのスタッフで活動しています。

 

5月5日には、埼玉県川口市の西川口エリアで、15世帯・母子40人に食料を配布することができました。事前予約制で夜の仕事をしている方を対象にしていましたが、方針として当日は職種を聞くことはしていないので、どれだけ本来の対象者がいたのか正確な数はわかりません。

 

ただいずれにしても多くの人に配布できました。フードパントリーの活動は、毎月継続していく予定です。

 

当日、配布した食料の一部。 

 

――「夜の世界」で働く人のなかには、生活に困窮している人も多いのでしょうか。

 

そうですね。とくに経済的に困窮しているシングルマザーなどにとっては、夜の世界が実質的なセーフティネットになっている現実があります。セーフティネットという言葉は慎重に使う必要がありますが、さまざまな事情で昼間には働けない人の受け皿になっていることはたしかです。

 

夜の世界は一般的には昼間のパートより時給が高くて、働き方も柔軟です。週3回の出勤で働くことができるので、毎日は難しくても週3回・夜間だけなら他の方に子どもの面倒をお願いできたり、週3回であれば夜間保育に預けられるというケースも多いですから。

 

私(菜摘さん)自身も、大学生の頃、両親との関係がうまくいかず、心理的に頼ることが難しかった時期がありました。しばらく朝のバイトと夜のバイトをかけ持ちしていましたが、体を壊し、家賃が払えなくなって夜の世界に入ったという経緯があります。

 

社会人になってからは、しばらく公務員として働いていたんですが、鬱病になり、週5日働く昼間の仕事には体力的に戻れなくなってしまいました。それでまた夜の仕事を始めたんです。

 

それと、夜の世界で働くのは収入面や働き方だけではない事情もあります。

 

たとえば、夜の世界で働いている人のなかには、昼間の仕事に就くのは難しいんじゃないかと感じてしまう人がいます。軽度な知的障害を抱えていたり、統合失調症で薬が切れると暴れてしまったりとかです。でもそういう人たちが働ける環境が、夜の世界にはあるんです。

岡村隆史さんへのバッシングをどう見たか

――そうした状況はコロナショックによってどのような影響を受けていますか。

 

とても大きな影響を受けていて、私たちの周囲でもすでに解雇されたキャストやスタッフが後を絶ちません。

 

コロナ以前には、営業中に寝てしまったり、実務のスキルがあまりない人などが何度も注意を受けながらも、全体でフォローしてクビになるようなことはありませんでした。ですが、店舗経営が危機的な状況になり、これまで多めに見られていた人たちが真っ先にクビを切られてしまった。そうした人たちが、これからどうするのかは心配です。

 

 

――少し前に、お笑い芸人の岡村隆史さんがラジオで、「コロナ明けたら可愛い人がお嬢(風俗嬢)やります」などと発言して批判を浴びましたが(※)、あの騒動は「夜の世界」で働く一人としてどのように受け止めましたか。

 

(※)4月24日に放送された深夜のラジオ番組で、お笑い芸人の岡村隆史さんが「コロナが終息したら絶対面白いことあるんですよ。美人さんがお嬢(風俗嬢)やります。短時間でお金を稼がないと苦しいですから」などと発言。それに対して、「性的搾取を待ちわびている」「女性蔑視だ」などと批判が集中し、後日、本人が謝罪した。

 

夫はキャストではなくスタッフですし、私ももともとキャストでしたが、キャバクラだったので、完全な当事者というわけではありません。また置かれている状況などによっても受け止め方は違うと思います。なので、私たちの発言が総意だと捉えてほしくないですが、岡村さんの発言はたしかにゲスかったと思います。

 

ですが、その発言や一個人を批判することで、夜の世界で働く人たちが救われるわけではないですし、むしろいま注目されるべきことはもっと他にあります。

 

たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収入が減少した企業や個人を対象とする「持続化給付金」という給付制度があります。

 

これは、性風俗業界で個人事業主として働く人は支給対象になる一方、性風俗業を営む事業者は支給対象外になっています。個人だけでなく事業者も対象にならなければ、今後潰れてしまう店舗はどんどん増えてしまうと思います。

 

実店舗が潰れてしまったら、夜の世界でしか働けない人たちはどこにいけばいいのかを想像してほしい。現在も、裏引きという、店舗を通さず、スタッフの管理外でお客さんとの直接的な金銭授受をすることが増えているように感じており、とても危険だなと危惧しています。

 

それに岡村さんが発言したことは、実情としてコロナ以前から存在していることでもあります。私たちのお店にも、昼間の仕事を失った方々から「働きたい」という応募の連絡が鳴り止まない状況がありますから。もちろん多くのお店が休業しているので、いまは雇えないわけですけど。

 

ただ単に岡村さんをバッシングをするだけでなく、これを機に、夜の世界で働く人たちが抱えている困難に目を向けてもらえたらなと思います。

 

先が見えず、困窮している人が多い

――仕事を失った人たちは公的な支援を受けるなどしているのでしょうか。

 

どうしているのかはわかりませんが、そもそも彼女たちが公的な支援に頼ることへのハードルは高いんです。

 

世の中には夜の世界で働くことへの偏見があります。そのため、自分が性風俗などで働いていることがバレてしまうことを怖れている人は多いです。

 

たとえば、公的な支援を受けようと地元の役所に行こうとしても、対応する職員が知り合いの知り合いとかかもしれませんし、周囲に夜の世界で働いていることが知られたら子どもに迷惑がかかるかもしれないと考える人もいます。

 

またこれまで確定申告をしてこなかったがゆえに追加徴税が怖くて申請できないというケース、公的な支援を受けることに後ろめたさを感じているようなケースもあります。あるいは「どうせ夜の世界で働いている私たちは制度の対象外でしょう」と利用可能な制度があることを知らない人もいます。

 

ただいずれにしても、いま夜の世界で働く人たちが利用できる制度は貸付ばかりです。職を失って次の仕事のあてもない状況で、国から借金をしたところで返済できるほど生活を立て直せる自信もない。先が見えず、生活に困窮している人は本当に多いと感じます。

 

――お二人のお店も休業しているんですよね。

 

緊急事態宣言が発令された4月から休業になり、3月に働いていたときの給料も一部しか払われていないので、私たちの生活も苦しいんです。もともと2人で月60万円ほどの収入だったのが、ほぼゼロになっているので……。いまは貯金を切り崩しているのと、公的な貸付や給付制度を利用してなんとかやりくりしています。

 

そうした制度も最大3カ月などと給付を受けられる期間が決まっています。私たちのお店は休業ですが、解雇されてしまった人などは制度を利用できている間に転職をするなどしないと、本当に生活が立ち行かなくなってしまう。

 

ですが、そもそも夜の世界の職歴は履歴書などに書きづらく、昼の仕事への転職は難しいという現実もあります。同じ業界ということもあって、夜の世界から、昼間に営業している飲食店に転職する人は一定数いますが、いまはその飲食店の経営も厳しいですからね。

 

こんな状況なので、フードパントリーの活動は続けていきます。ただフードパントリーは緊急的かつ一時的な支援ですし、今後はさらにキャリア支援なども含め、どんなサポートができるかを考えながら活動していきたいと思っています。

 

夜の世界で働くシングルマザー向けフードパントリー、次回は6月7日に埼玉県西川口エリアで行う予定だという。

 

 

本記事は、2020年5月8日の取材時の情報に基づくものです。

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