• 新しいお知らせ
    ×
    • 記事修正のご報告

      2024年1月26日、3月8日に行った記事の修正につきまして、その内容と対応をこちらの通りご報告させていただきます。
       

      2024/3/8(金)
構造化特集
特別養子縁組
公開日: 2018/2/18(日)

【特別養子縁組】喪失からはじまる三方良しの輪

公開日: 2018/2/18(日)
構造化特集
特別養子縁組
公開日: 2018/2/18(日)

【特別養子縁組】喪失からはじまる三方良しの輪

公開日: 2018/2/18(日)
構造化特集 : 特別養子縁組
構造化の視点

生みの親が子どもを育てられない時。子どもと子どもを育て

・・・もっと見る

生みの親が子どもを育てられない時。子どもと子どもを育てたい親を結ぶ「特別養子縁組」という制度がある。児童虐待や不妊など、様々な事象の結節点ともなる「特別養子縁組」。本特集では、公的機関と民間事業者の取組みの違いや、児童相談所の業務体制など制度を取り巻く構造を紐解く。


 

「特別養子縁組」という制度によって子どもを家族に迎えた、ある夫婦が不妊治療についてブログに書き記した言葉があります。

 

19歳からお付き合いし25歳で結婚した私たちは結婚したら普通に2、3人授かるものと思っていた。28歳になっても授からず自分で病院を調べて、デイビッド(夫)にも話して行ってみた。
 

不妊治療専門のクリニックで高度不妊治療も行ってるとの事。分娩は安定期になると紹介状をもらえるシステム。

 

2、3度と精液検査や触診しても結果が思わしくなく、医師からは「無精子症」と告げられた。手術についての説明を受けるが、現実を受け入れたくない私たちには説明が入ってこなかった

(ブログ「オリーブ家 のんびり日記」より)

 

この夫婦のように日本で不妊に悩むカップルは約6組に1組と言われ、結婚をし子どもが欲しいと望む夫婦にとっても、出産はもはや「当たり前」のことではなくなっています。

 

しかし、子どもを欲しいと願っても産むことができない人がいる一方で、子どもを産んでも育てられない人もいます。

 

そうした何らかの事情でみずから子育てができない親(生みの親)から生まれてきた子どもと、子どもを育てたい親(養親)を結び、戸籍上も実子として認定する、「特別養子縁組」という制度があります。

 

今回のリディラバジャーナルの特集は「特別養子縁組を通して考える家族と社会のかたち」です。

 

冒頭の話は、特別養子縁組によって子どもを家族に迎えたある夫婦が、不妊治療についてブログに書き記した文章です。

 

不妊に悩むカップルにとって、治療と同時に特別養子縁組を検討することは、現時点ではそこまで一般的ではありません。

 

しかし、今回多くの取材を進めていく中で編集部は、「血は繋がっていなくても子どもを受け入れる」という選択肢はより早くから多くのカップルに提示されても良いのではないだろうか、と考えるようになりました。

 

今回の特集では、特別養子縁組を中心に、子どもを養子として送り出す「生みの親」に対する包括的なサポートの必要性、実際に制度を担っていく行政機関や民間事業者の中に生じる歪み、養親になるためには“ 結婚 ”がハードルとなっている現状などを紹介していきます。

中絶を減らすための手段として

日本で特別養子縁組が制度化されるきっかけとなったのは、人工妊娠中絶(以下、中絶)を減らしたいと思った一人の医師の行動です。

 

特別養子縁組制度のなかった1970~80年代。宮城県石巻市の産婦人科医、故・菊田昇氏は生みの親が育てられない赤ちゃんを、その生命を救うため、子どもを望む親に紹介し、実の親子として虚偽の出生証明を書いていました。

 

もちろん、戸籍法、医師法に触れる違法行為です。しかし、特に妊娠後期の中絶を減らす政策議論に繋げたいとして、あえて公表。大きな議論を巻き起こし、1988年の特別養子縁組制度制定へ繋がりました。

 

厚生労働省によると今なお、中絶件数は年間約16万8千件。中絶の時期や理由はさまざまですが、特別養子縁組という選択肢があれば生まれてきた生命があるかもしれません。

 

中絶や虐待(死)から子どもを救うための防止策。さらには、不妊など何らかの理由で子どもを産めない人が、戸籍上も実子として子どもを家庭に迎える選択肢。

 

本特集では、そうした多面性を持つ、特別養子縁組という制度を取り上げます。

いかに社会全体で子育てをしていくか

今回特集する「特別養子縁組」は、養育が困難な親のもとに生まれた子どもを社会全体で育てていく「社会的養護」のひとつとされています。

 

昔からおこなわれている家制度の維持や相続のために親子関係をつくる「普通養子縁組」とは異なり、子どもの福祉のために子どもを望む夫婦が法律上「実子」として子どもを家族に迎える制度です。

 

現行の制度(2018年2月)では、原則6歳未満の子どもが対象となります。

 

生みの親が育てられない子どもたちが行く先は、年齢や子どもの状況に応じて、いくつかの選択肢があります。大きく分けると、親代わりとなる人が「家庭で育てる」場合と、「施設で育てる」場合の二つのパターンです。

 

生みの親だけでは育てることができず、社会的養護を必要とする子どもの数は約4万5千人。

 

そのうち、約8割以上が児童養護施設などの施設で暮らしています。戦後、戦災孤児を施設で養育していた名残です。

 

時代は変わり、児童福祉法では、「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されること」が子どもにとって好ましいとされています。

 

2017年8月には、社会的養護が必要な子どもたちの子育て方針として「新しい社会的養育ビジョン」が打ち出され、里親や養子縁組といった家庭で育つ子どもを増やす具体策が明確になりました。

 

これは「施設養護から家庭養護へ」と社会的養護の方針が変わっていく大きな転換期にあることを意味します。

 

しかし、変化には混乱や対立もつきものです。

ましてや、子どもの人生や親権の影響を左右する繊細なイシューだからこそ、議論や制度設計も難しいものです。

 

「社会的養護」は、公的責任のもと社会で子どもを養護すること。その理念は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」です。

 

では、私たちは、生みの親が育てられない子どもたちをどうしたら幸せに育てていけるのでしょうか。

まだまだ知られていない特別養子縁組

 

特別養子縁組に関わるプレイヤーは数多く、その仕組みや特別養子縁組を取り巻く社会的養護の現状は複雑です。

 

本特集では、その全体像が分かるように、出産しても子育てができずに悩む「生みの親」や、出産できないけれど子どもを育てたい「養親」、子どもと養親のマッチングをおこなう児童相談所や、民間の養子縁組あっせん機関など、各プレイヤーの実情や関係性を整理してお伝えしていきます。

 

特別養子縁組という制度を紐解いていくと、公的機関と民間事業者の方針の違いや、児童相談所の業務体制、はたまた国の予算や国民の家族観など、さまざまな要素が絡み合っています。

 

日本では未だ特別養子縁組に対する認知度が低く、実績としても年間500件ほど。一方、「養子大国」とも呼ばれるアメリカでは、人口は日本の3倍弱にも関わらず、養子縁組の成立件数は年間約11万件と雲泥の差です。

 

これらの事情を踏まえて、本特集では、どんな人がどんな理由で特別養子縁組に関わるのか、なぜ日本では特別養子縁組が広まっていないのかを考えていきます。

 

今回は14回にわたって記事を配信していきます。特別養子縁組という切り口からどんな社会の様相が見えてくるでしょうか。

 

第1章 生みの親の事情と養子縁組あっせん機関との関係性(全4回)では、特別養子縁組をおこなう「生みの親」に焦点を当て、子どもを産んでも育てられない事情に迫ります。

 

 

第一回【もしかして妊娠している……。身近な人に相談もできず、困惑する母親たち】第二回【しんどい母親を支える“ 課題発見装置 ”としての役割】は、生みの親がなぜ子どもを育てることができないのか、どうしたら生みの親がみずから子育てができる環境をつくれるのか、を見ていきます。

 

特別養子縁組で子どもを養子に出した女性を取材。「自分で育てたい」「苦労をかけるだろう」——。そんな葛藤の末、子どもを養親に託した事情や、子どもへの思いを聞きました。

 

第三回【「親子ともに幸せな未来を」生みの親に寄り添う支援機関の想いと葛藤】は、特別養子縁組支援をおこなうNPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんが「課題の発見装置」と話す、養子縁組あっせん機関の果たす役割とその社会的価値について紹介します。

 

第四回【親と子どもの利害が対立するとき】は、日本の社会的養護の課題となっている「親権」について考えます。特別養子縁組における親権制度の何が問題となっているのか。生みの親と子どもの関係は、どこまで重視されるべきなのか。線引きが難しいからこそ、皆さんにも考えていただきたい問題です。

 

第2章 施設養護から家庭養護への転換(全3回)は、特別養子縁組からさらに視野を広げ、転換期にある社会的養護について見ていきます。

 

 

第五回【いま、社会的養護の転換期にある日本】は、社会的養護の歴史的文脈と変化の途上にある現状を紹介します。

 

第六回【子どもの引き渡し、児童相談所がためらうわけ】は、国際的に「脱施設化」が進んでいる中で、日本では施設から家庭養護への移行を進めるのが難しい理由を子どもの育つ場所を決める児童相談所に焦点を当てて見ていきます。

 

第七回【支援者の分断を越えて、すべての子どもにとってベストな選択肢を】は、子どもを育てる受け入れ側である、施設と家庭養護それぞれに関わるプレイヤーの主張を見ていきます。

 

児童養護施設や児童相談所に詳しいNPO法人Living in Peace代表の慎泰俊(しん・てじゅん)さんは、社会的養護に関わるプレイヤーが分断状態にあることを指摘します。

 

第3章 養子縁組の仲介役 行政機関・児童相談所と民間あっせん機関(全3回)では、養子と養親のマッチングをおこなうあっせん機関に焦点を当てます。

 

 

第八回【親子を「切り離す」機関でありながら「子育て支援」を担うジレンマ】では、養子縁組あっせんをおこなう、児童相談所と民間あっせん機関それぞれの抱える課題と、連携方法を見ていきます。

 

児童相談所は、虐待対応に伴う親子分離と子育て支援を一手に引き受けることの難しさを語ります。

 

第九回【子どものあっせん事業。児童福祉と人身売買との違いはどう見極めるのか】は、そんな養子縁組あっせん事業の仕組みと、2018年4月1日から施行される新しい法律の意義について見ていきます。タイムリーな法律なので要チェックです。

 

第十回【「子どもを迎えるのにかかる費用」は誰が負担するべきなのか】は、ときに200万円ほどかかるという、特別養子縁組にかかる費用について扱います。金銭の授受のもと、子どもをあっせんすることからしばしば「人身売買」と批判される養子縁組。その実態はどうなっているのでしょうか。

 

第4章 養親の事情と養子縁組あっせん機関との関係性(全4回)は、養子縁組によって子どもを迎える養親の事情を見ていきます。

 

 

第十一回【特別養子縁組で子どもを授かった夫婦が語る“新たな家族が生まれるとき”】は、実際に特別養子縁組をおこない養親となった夫婦への取材をもとに、生みの母親と出逢った時の心情や、不妊治療と同時並行で考えていたという特別養子縁組に対する考え方を紹介します。

 

第十二回【問われる、私たちの“ 家族 ”のありかた】は、特別養子縁組という制度に反映される家族観について考えます。アメリカなどでは認められている同性カップルの養子縁組。日本ではどうなのでしょうか。

 

第十三回【0歳の女の子が人気。子どもを「選ぶ」親たち】は、日本を飛び越え、海外に子どもを送り出す国際養子縁組について見ていきます。日本で生まれた子どもたちが、アメリカやカナダなどの家庭で育つ事情をお伝えします。

 

第十四回【特別養子縁組で子どもを授かった夫婦の願い】は、特別養子縁組という最初の一歩を踏み出した後の子育てについて見ていきます。特別養子縁組家庭ならではの子育ての課題とは何でしょうか。


 

(2018年2月25日14:13 各記事の記事番号および記事紹介の内容を一部追記・訂正。全13回→全14回に訂正。)

リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
イシューから探す
×
CONTENTS
intro
生みの親の事情と養子縁組あっせん機関との関係性
no.
1
no.
2
no.
3
no.
4
施設養護から家庭養護への転換
no.
5
no.
6
no.
7
養子縁組の仲介役 行政機関・児童相談所と民間あっせん機関
no.
8
no.
9
no.
10
養親の事情と養子縁組あっせん機関との関係性
no.
11
no.
12
no.
13
no.
14
安部コラム
no.
15