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公開日: 2023/1/26(木)

「もう6回も辞表を出している」 異色の現役首長が「自治体の変え方」を大公開(後編)

公開日: 2023/1/26(木)
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「もう6回も辞表を出している」 異色の現役首長が「自治体の変え方」を大公開(後編)

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「理想の地域を実際につくることができる。こんなに魅力的な仕事は無い」

 

茨城県境町(さかいまち)の町長として、自動運転バスの定時運行を日本で初めて実現させたり、ふるさと納税額を年間6万5000円から48億円超にまで成長させたりと、町に変化を生み出してきた橋本正裕さんは、町長という仕事をこのように語る。

 

「もう国や自治体がなんでもやってくれる時代ではなくなっている。僕は『おまかせ民主主義』から『顔の見える民主主義』への転換にチャレンジしたい」

 

28歳という若さで岐阜県美濃加茂市(みのかもし)の市長に就任し、当時国内最年少の市長として様々な改革を実現してきた藤井浩人さんは、市長としての目標をこう語る。

 

藤井さんと橋本さん、首長の立場から自治体改革にチャレンジする2人が、ジャーナリスト浜田敬子さんのモデレートのもと、「自治体経営」をテーマに議論。

 

「美濃加茂市だからできる」「境町だからできる」を乗り越え、全国1700超の自治体が取り組める自治体経営論を語った。

 

前編はこちら


このセッションを動画で見たい方はこちら

「政策通」が選挙で負ける 
首長に求められる条件 

 浜田敬子   前編では、首長は何がどこまでできるのか、役場の職員をどのように変えるのか、というお話をいただきました。


自治体経営においては、職員と同様に重要なステークホルダーとして「議会」の存在があると思います。

 

最近、兵庫県明石市の泉市長の退任が話題になりました。

 

直接的な原因は議会に対する暴言でしたが、議会との関係に長年課題を抱え、ご自身も「対立がずっと続いた」と言っていた。

 

子育て政策で転入人口が増加して、メディアにも注目され、市民の支持も厚かった。


それでも、議会との関係が良好でないと、持続的な自治体経営ができないと。

 

お二人は、議会との関係構築についてどんなことを考え、取り組んでいますか。

 

(浜田さん)

 

 藤井浩人  市民からの支持があれば、選挙で勝って首長になることはできます。


ただ、議会対応が上手くいかないと、自身の政策は可決されず、結局実現に至らない。

 

その逆も然りで、議会対応が上手く、国からの政策評価も高いのに、市民の支持が足りなくて、選挙でコロっと負けてしまうケースもあります。


実際、僕自身が「政策通」だと思っている候補者が、何度も選挙で敗れています。

 

市民と議会、その両方としっかり関係づくりをしていないと、僕たちは首を切られちゃうんですよね。


明石市の政策は、市民の方々に大変喜ばれていて、僕自身も賛成の立場です。

 

しかし、地方政治の世界には、議員等の「玄人」的な関係者がいて、市民に満足してもらえる政策と、「玄人」が認める政策にはギャップがあります。

 

例えば、「子育て政策」は、「玄人」からすると市民の人気取りに見えるケースもあり、警戒感を持つ方がいらっしゃるのも事実です。

 

市民受けのためではなく、短期での人気取りでもなく、地域に必要な政策なんだと、議会側にちゃんと説明して、納得してもらえるか、というのがひとつポイントだと思います。

 

 橋本正裕  藤井さんのおっしゃる通りで、僕はいつも説明責任(アカウンタビリティ)を重要視しています。

 

例えば、議員が新聞やニュースで初めて政策を知ることのないよう、リリースを出す前に必ず議会への説明をしています。

 

若くて改革に熱心な首長さんは、議会と関係が悪化しがちな印象があります。もちろん、対立が一切なくなるとは思っていません。


実際、僕自身、もう6回も議会に辞表を提出しています。

 

議会側・対抗勢力の考えよりも、自分の考えの方が地域住民のためになると思えば、言葉は悪いですが喧嘩になってもいい、負けたら職を失ってもいいと思っています。

 

重要なのは、住民の生活が良くなるか。


住民のためになる政策だと自負があれば、議会側へ説明の機会をつくり、納得するまで対話するプロセスを経ることで、議会との関係性は改善されるのではと感じています。

 

前例踏襲も縦割りもない 
共助の時代に自治体は何をする

 浜田   自治体「経営」という観点では、多くの自治体で人口が減り、財政が厳しくなり、職員の数も減らさざるを得ない、公共サービスもこれまで通りに維持できるのかといった中で、これまで自治体が担ってきた業務の全てを、これからも自治体が担うのか、という問いがあると思います。

 

自治体が担っていた業務を、NPOや企業と共に担うような外部連携のあり方について、お二人はどう考えていますか。

 

 橋本  外部連携にあたって、僕はもっと自治体側が連携先の民間団体を支援するべきだと考えています。

 

例えば今、企業が自治体と組んで何か事業を行うとき、必要な資金は企業が自分たち自身で集めるケースが多いです。

 

境町は違います。自治体側が国に補助金を申請したり、投資家を集めたり。民間側に自治体として協力できることは、率先してやっています。

 

例えば、地方創生拠点整備交付金という内閣府の補助金があるのですが、直近の予算11億円のうち6億円分は境町が獲得しています。

 

また、最近では東京オリンピックでスケートボードやBMX(自転車競技)などのアーバンスポーツが話題になりましたよね。

 

僕、気になってオリンピックの会場を調べてみたところ、仮設だったらしく今は分解されて上海の倉庫にしまってあるとわかったんです。

 

そこで、町でその会場を買い取っちゃいました。

 

境町は、BMXの先進地として世界的に有名な、フランスのモンペリエという都市と友好都市締結に向けて取り組んでいますので、ハードは町で用意して、モンペリエと色々協力して、境町で将来アーバンスポーツのワールドカップができないかと考えています。

 

また、姉妹都市で言うと、ハワイのホノルルとも姉妹都市を結びました。

 

多くの自治体は、姉妹都市と言っても形だけで、定型の交換留学を年に一度やるくらいなのですが、僕らはしっかり留学プログラムも組んでいますし、ハワイの商品を境町で売りたい、みたいな要望にも対応できる。意味のある提携になっています。

 

補助金の支援があったり、アーバンスポーツの土壌があったり、ハワイとの連携があったりすれば、企業のみなさんも境町で色々やれないかと考えやすいですよね。

 

これからは、企業に自治体を「使ってもらう」思考が大事で、自治体にできない部分は、民間に任せる。任せるための準備を、自治体でやろうと思っています。

 

(橋本さん)

 

 浜田  多くの自治体は「いつでもウェルカム、でもお金やリソースはそっちで準備してね」というスタンスだと思います。

 

橋本さんは逆で「舞台を整えるから来てください」というスタンスなんですね。

 

 橋本   よく「やりたいことを行政に持っていったら、前例が無いと門前払いを受けた」


「首長はOKと言ったけど、職員がダメと言った」といった話を聞きます。

 

境町の場合は、住民の生活に役立つソリューションであれば、前例踏襲も縦割りもありません。ぜひうちに持ってきていただけたらと思います。

 

震災から学ぶ 
自治体のマンパワー不足を乗り越える方法

 浜田  昨年NTTが人事改革として国内の全社員19万人のうち、3万人を居住地自由としたんです。全国どこで働いてもいいと。

 

首都圏一極集中の流れが緩和されていくと、副業や兼業として自治体の仕事に携わりたい人も増えていくと思います。


こうした外部人材の活用についてはどう考えていますか。

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