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公開日: 2022/12/23(金)

「もう対応が追いつかない」 深刻化する「孤独・孤立」と向き合う3人の提言

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「もう対応が追いつかない」 深刻化する「孤独・孤立」と向き合う3人の提言

公開日: 2022/12/23(金)
オーディオブック(ベータ版)


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「最終的に誰かの孤独を埋めるのは、学者でも専門職でもなく、行政でもない、半径5メートルにいる一人ひとりなんです」

DV、いじめ、自殺願望など、悩みを抱え孤独を感じる人たちのチャット相談「あなたのいばしょ」を運営する大空幸星さんは、「孤独・孤立」という社会課題の特徴をこう語った。

日本でも担当大臣が設置されるなど、近年注目を集めている「孤独・孤立」
様々な社会課題の当事者が共通して抱え、対象者が広く多様なゆえに、解決が難しい「孤独・孤立」のブレイクスルーはどこにあるのか。

シングルマザーのセルフケア支援に取り組むNPO法人シングルマザーズシスターフッド代表理事の吉岡マコさん、子どもの貧困に対して、学習支援や居場所支援に取り組む認定NPO法人 Learning for All 代表理事の李炯植(り・ひょんしぎ)さん、そして冒頭の大空さん。

異なる領域で「孤独・孤立」を抱える当事者と向き合ってきた3名が、ハヤカワ五味さんのモデレートのもとでパネルセッションを行なった。

「対応しきれないほどの相談が来ている」

「子どもと一緒にいて、ひとりじゃないのに孤独という感覚は、自分自身が子育てをするまで想像もつかなかった」

「毎週のように、虐待や自傷行為の対応に追われている」

3者がそれぞれに直面している「孤独・孤立」の実態とはどのようなものか。
そして、「孤独・孤立」の解消に向けて、行政・地域・私たち自身にできることは何か。

課題解決に取り組む現場の最前線から、「孤独・孤立」について考える。

このセッションを動画で見たい方はこちら

「孤立」していなくても「孤独」?
「孤独・孤立」とは何か 

 ハヤカワ五味  本日、モデレーターを務めますハヤカワ五味です。

私自身は、株式会社ウツワ、株式会社ILLUMINATEの代表取締役として、主に女性の社会進出や生きづらさと向き合う事業を行っています。
パネラーの皆さんも、自己紹介をお願いします。


(ハヤカワさん)

 大空幸星  NPO法人あなたのいばしょの理事長をしている大空と申します。私たちは「望まない孤独を無くす」というミッションで、24時間のチャット相談サービスを行っています。

相談を受けるだけではなく、政策によって課題解決を進めていくため、いわゆるアドボカシーやロビー活動も行っています。

最近、日本ではイギリスに次いで世界で2番目に「孤独・孤立担当大臣」が設置されましたが、このような動きを政府と共に作り上げています。

 吉岡マコ  NPO法人シングルマザーズシスターフッド代表の吉岡マコと申します。シングルマザーへの支援や連帯のサポートを行っています。

具体的には、シングルマザーが参加できる、心身の状態を整えるためのオンラインのセルフケア講座、マネーリテラシー講座や就労支援など、未来の生活に寄与する支援活動などをおこなっています。

 李炯植  認定NPO法人 Learning for All の李と申します。

私たちは子どもの貧困問題の解決に向けて、貧困や虐待、不登校などさまざまな困難を抱えている子どもたちに支援活動を行ってきました。

具体的には学習支援や居場所づくり、訪問支援、子ども食堂の運営など、子どもたちに必要なサポートを包括的に行っています。

また、大空さん同様に政策提言を行ったり、子どもと関わる各団体・組織と連携してノウハウをシェアする機会を設けたりもしています。

 ハヤカワ  皆さんそれぞれの現場で課題解決に取り組む中で、共通項として見られるのが今日のテーマ「孤独・孤立」だと思います。

「孤独・孤立」という言葉は近年よく見聞きするようになりましたが、どんな状態を意味していて、何が違うのかと言われると、実はよくわからない人もいるんじゃないかと思います。

今日、頻出するワードだと思うので、最初に、「孤独・孤立」とは何なのか、定義の部分を、大空さんにお伺いできたらと思います。

 大空  「孤独」と「孤立」は一見すると近いニュアンスを持っている言葉なのですが、実はこれらが指している状態は異なります。

イギリスの社会学者ピーター・タウンゼントは、孤独と孤立を次のように定義をしています。

「社会的に孤立しているというのは、家族やコミュニティとほとんど接触がないことであり、孤独であるというのは、仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからざる感じを持つこと」

簡単に言い換えると、「孤立」は周囲との繋がりがないという客観的な現象で、「孤独」は本人が感じる主観的な概念なんです。

また、孤独についても、英語では「ロンリネス(loneliness)」と「ソリチュード(solitude)」という二つの言葉があります。「ソリチュード(solitude)」は積極的に望んで孤独を獲得すること。

例えば人間関係の悩みから、自分と向き合う時間が欲しいと自らひとりになる場合はこれにあたります。一方「ロンリネス(loneliness)」は望まない孤独であり、私たちが課題として設定し、取り組んでいる部分です。

 ハヤカワ  「孤立」と「孤独」は異なるもので、かつ「孤独」にも、本人が主体的に望んだものと、望まないものがあると。

 大空  そうです。例えば、李さんが取り組む子どもの問題は、「孤立」していないのに「孤独」であるケースが多いと思います。

子どもにとって居心地が良いかは別にして、客観的には家族や学校を通して、周囲との繋がりがあるため、「孤立」ではない。
けれども、家族から虐待を受けていたり、学校にも馴染めなかったりして、「孤独」である。

逆に、周囲との繋がりがなく、「孤立」していても、その方が幸せで、楽しく生きていけるんだ、という人もいます。

これまで日本の福祉政策では、客観的に把握可能な「孤立」に焦点を当ててきました。
しかし、「孤立」していなくても、「孤独」を感じ、自傷行為や自殺に至る人もいる。

「孤独・孤立」は異なる状態を指し、目に見える「孤立」だけを対策しても、本質的な課題解決に繋がりません。


(大空さん)

「孤独」はあらゆる課題の源流
45万件の相談から見える共通点

 ハヤカワ  「孤独」が主観的なものであるとするならば、ここにいる私たち誰もが「孤独」を感じたことがあると思います。

一方で、社会課題としての「孤独」とはどのようなものなのか、みなさんが現場で見てきた「孤独」について聞かせてください。

 大空  チャット相談「あなたの居場所」では、これまで45万件以上の相談を受けてきました。
コロナ禍の影響もあり、相談件数は最大を更新し続けていて、直近では1日1000~1500件の相談が届いています。

抱える課題は、自殺、虐待、DV、いじめ、不登校、生活困窮と様々ですが、ほぼ全ての相談に共通するのが当事者が「孤独」を抱えていること。

何かしらの課題を抱えている時に、相談したり頼ったりできる相手が周囲にいない、誰にも言えなくて、チャット相談に来た、という人がたくさんいます。

この取り組みを始めて、僕はありとあらゆる社会課題の源流に「孤独」という課題が存在しているような感覚を抱いています。

「孤独」は誰しもが抱く感情ですから、重要なのは「孤独を全く感じない」状態を目指すのではなく、「孤独を感じた時、誰かに繋がることができて、重症化が防げる」状態を目指すことだと考えています。

 李  子どもたちが置かれた状況の厳しさは、目に見える数字でも明らかになっています。
少子化で年々子どもの数が減少しているにもかかわらず、虐待の報告件数、中高生の不登校者数は過去最高を記録しています。

不登校に関しては、子どもが主体的に学校に行かない選択をしているケースもあり、全てがネガティブとは言えませんが、虐待に関してはこの5年で2倍以上に膨れ上がっています。

また、各年代の自殺者が減少傾向にある中で、子どもの自殺だけが増加しています。

近年では、コロナ禍の影響もあってSNSでの問題も増えています。
ライブ配信等で裸になってしまったり、見知らぬ人と出会ってトラブルに巻き込まれたり、というケースが見られます。

私たち現場の肌感覚としても、子どもたちの状況は悪化しています。

虐待の通報や、リストカット・オーバードーズといった自傷行為に走る子どもの対応が毎週のように発生しています。

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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