【新世代社会起業論vol.3】コロナショックに立ち向かう—社会起業、1億円の次の壁は?(前編)
【新世代社会起業論vol.3】コロナショックに立ち向かう—社会起業、1億円の次の壁は?(前編)
お金にならないと思われがちなソーシャルビジネスで、億単位の事業をつくってきた若手の社会起業家たち。それぞれの団体はコロナショックをどのように乗り越え、ここからどのように社会課題の解決を目指すのか。
地域に根差した質の高い学童保育を提供するChance For All代表の中山勇魚(なかやま・いさな)さん、途上国の中高生に映像授業を届ける事業を展開するe-Education代表の三輪開人さん、子どもの貧困問題に取り組むLearning for All 代表の李炯植(り・ひょんしぎ)さんに、リディラバ代表の安部敏樹が、個々のNPOの課題からソーシャルセクターという業界の脆弱さまでざっくばらんに聞いた。
※本記事は、リディラバが主催する社会課題カンファレンス「リディフェス2020」のセッション「新世代社会起業論part3 社会起業、1億円の次の壁は?」を記事にしたものです。昨年度のR-SIC2019で行われた「続・新世代社会起業論 社会的事業が1億規模に至るまで」はこちら。
新型コロナウイルスの影響は?
安部敏樹 本セッションは、私たちリディラバが主催するカンファレンス「R-SIC」で2年連続人気ランキング1位になった「新世代起業論」のパート3です。今年は「リディフェス」と名を改めて、カンファレンスをオンラインで開催しています。今回は新型コロナウイルスの影響や現在の事業の状況についてみなさんに伺っていきたいと思います。
まずは改めて、みなさんの事業と今の課題をご紹介いただければと思いますが、いかがでしょうか。
(写真 安部敏樹)
李炯植 Learning for All の李です。うちは子どもの貧困問題の解決のために、貧困や虐待で居場所がなかったり学習ができなかったりといった問題を抱えている子どもたちをサポートする活動をやっています。
今の課題は、政策をどのように変えていくのか。子どもの貧困対策予算を増やしていくことを目指して活動しています。
三輪開人 僕たちは、バングラデシュなど途上国の子どもたちの大学進学を応援するため、東進ハイスクールやスタディサプリのような映像授業を届けています。
コロナで学校が開かない、予備校にも行けない。だからこそオンラインで授業を受けたいという声が上がってきて、またとない追い風が吹いているのかもしれません。
一方で、アジア最貧国から中所得国になったバングラデシュで、生徒に映像授業を購入してもらう仕組みもできてきたのに、コロナで教育にお金を出せない状況になり、ビジネスとしては逆風です。
中山勇魚 Chance for Allの中山です。学童というかたちで、共働き家庭やひとり親家庭の小学生のための居場所づくりを足立区、墨田区で9カ所やっていて、300人ぐらい毎日通ってくれています。
ユニセフの調査では、日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位でした。勉強だけじゃなくて、お金があってもなくても苦しい子どもが増えていて、お父さん・お母さんも、相談できる人が少なくてつらそうです。
最近は日々、子どもたちが幸せに生きるために僕たちは何ができるのか考えています。課題としては、幸せがわからない。この国における幸せって何だろう?というのを模索しているところです。
コロナショックで寄付が増えた
安部 みなさん、新型コロナの影響も受けていると思うのですが、そうしたなかで今期の売上はどうなのか。落ち込んでいるとしたらお金をどうやって工面しているのか、ざっくばらんにお聞かせください。
自分のところから言いますと、リディラバは修学旅行事業が全滅しまして、非常に厳しい時期を過ごしましたが、銀行融資を受けながら、少しずつ攻めに転ずるフェーズに入ってきたところです。
李 うちは正直なところ、かなり順調なんです。コロナの発生直後は自治体からの委託事業を受けられるかどうかわからなくて、マイナス4000万円ぐらいで結構あわてましたが、クラウドファンディングを行ったりと必死でさまざまな対策を講じて、マイナス分を補填しました。
(写真 李炯植さん)
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