四谷大塚元講師が教え子を盗撮・逮捕。 日本版DBSの必要性と難しさとは?
四谷大塚元講師が教え子を盗撮・逮捕。 日本版DBSの必要性と難しさとは?
毎週水曜日、Twitterスペースでお届けしている「#あべラジオ」。
今日のテーマは「四谷大塚元講師の盗撮事件」について。
「日本版DBS」の議論がなされている最中に明るみになった事件。
DBS(Disclosure and Barring Service)とは、どんな制度なのか?その必要性と設計の難しさについて、安部さんが分析します。
※性加害について触れる内容になっています。あらかじめご留意ください。
※記事は「#あべラジオ」を編集してお届けしています。全編を聞きたい方はこちらから↓
日本でも導入検討が進む
DBS(Disclosure and Barring Service)とは何か?
井上
「四谷大塚元講師の盗撮事件」が世間を騒がせました。
四谷大塚という中学受験の進学塾で働いていた24歳の元講師が、9歳の女子児童を盗撮、画像等をSNSのグループチャットにアップして逮捕された事件。
一方で、こども家庭庁の有識者会議で「日本版DBS」という、小児性犯罪を防ぐための新たな制度について議論が進められています。
今日は「小児性犯罪はどうやったら防げるのか」について、掘り下げていけたらと思います。
まずは、現在進行形で議論が進んでいる「日本版DBS」とは何か、解説をお願いできますか?
安部
「DBS」とは、「ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス(前歴開示および前歴者就業制限機構)」の頭文字を取ったもので、もともとはイギリスで生まれた制度になります。
子どもを性犯罪から守るため、子どもと接する仕事への就職を希望する人に対して、性犯罪歴がないことなどの証明を求める制度で、そのために個人の性犯罪歴をデータベースで一元管理していこうというものだね。
井上
なぜ「DBS」が必要なんでしょうか。
安部
背景として、小児性犯罪は一人の加害者によって複数の被害者が生まれやすいとされています。
DBS制度導入を検討する有識者会議に出された「性犯罪の再犯に関する資料」によれば、下記のような記載があります。
- 小児わいせつ型の性犯罪で有罪確定した者のうち、それ以前に2回以上の性犯罪前科を有している者について見ると、それらの前科も同じく小児わいせつ型であった者の割合は「84.6%」に上る。
- この数値は再犯率ではないものの、小児わいせつ型の性犯罪に及んだ者の中に、複数回の刑事処分を受けているにもかかわらず、同じく小児わいせつ型の性犯罪を繰り返す者が一定数存在することが認められる。
こういった背景も踏まえ、再犯を未然に防ぐための仕組みとして、日本版DBS導入に向けた議論が進められているところです。
適用範囲は?性犯罪歴はどこで線引きする?
DBSを考える上でのふたつの視点
井上
DBSの導入に向けては、どのあたりが論点になると見てますか。
安部
大きく見ると、二つの論点があると思います。
一つ目は、DBSの「適用範囲」をどこまで広げられるか。
現状では、学校や保育園などの「公的事業」に関しては導入することが決まってきているけど、ベビーシッターや進学塾、スポーツクラブといった「民間事業」も対象となるかという視点ですね。
公的事業だけがDBS導入の対象となった場合には、小児性犯罪を犯した者が民間事業者へ再就職するといった抜け道が残ってしまう。再犯を防ぐという目的から考えると、やはり民間事業者もDBS制度の対象に含めるのが望ましい。(※)
井上
なるほど。二つ目はどのような観点になりますか。
安部
DBS制度を運用するにあたっては、性犯罪歴のデータベースが必要になるわけだけど、このデータベースに記録する犯罪をどの次元で線引きするかという視点。
疑惑レベルのものは対象とせず、実刑判決された案件だけを対象とするという考え方もあると思う。
だけどその場合は、小児性犯罪をどう立証するかという問題が出てくる。性犯罪を立証するのはとても難しいですし、詳細に掘り下げると「セカンドレイプ」といった問題も出てきます。
さらに言えば「示談」となった場合はどうするか。被害を受けた方々が、金銭的な補償を求めて示談で決着することは全然あると思うんだけど、その交換条件として起訴自体を取り下げるケースもある。
そうなると、性加害を起こした履歴は残らないですよね。子どもの性被害を防ぐという観点からすると、示談のケースを対象に入れないで良いのかという問題は残ります。
どこからを犯罪として履歴に入れるのか。ここはとてもセンシティブな問題なので、慎重な議論、制度設計が必要になるところだと思います。
(※編集部追記:2023年9月5日にまとめられた有識者会議の報告書では、DBSの民間事業者への導入は「任意とした上で認定制度を設ける」と結論づけられました。また、2023年9月24日には、当初見込んでいた秋の臨時国会への提出は見送るという報道が出ています)
活動家と法律家は相性が悪い?
新しい法律を創る難しさ
井上
有識者会議での議論を経て、今後は具体的な法案の制定に進んでいくフェーズになると思いますが、ここから先はスムーズに進むものでしょうか。
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