更新日: 2026/4/30(木)
「人生が閉じるわけではない」不登校経験者のその後と、多様な学びの必要性(vol.82後編)
更新日: 2026/4/30(木)
更新日: 2026/4/30(木)
「人生が閉じるわけではない」不登校経験者のその後と、多様な学びの必要性(vol.82後編)
更新日: 2026/4/30(木)
毎週水曜日、X(旧Twitter)スペースでお届けしている「#あべラジオ」。
今回はゲストに不登校ジャーナリストの石井しこうさんをお呼びし、「不登校の実態」をテーマにお話しました。
後編は、不登校をめぐる現状や問題について。
小学生低学年からの不登校の裏に潜む、陰湿ないじめの実態とは?塾至上主義が子どもたちに与える影響や、多様な学びの場を提供するアイデアまで。
不登校経験者の石井さん、安部さんが自身の経験を交えながら話しました。
(前編「猛勉強した少年と、野球少年は今……2人の不登校経験者が本音を語る」はこちら)
※本記事は2024年7日17日12時に放送された「#あべラジオvol.82」を編集してお届けしており、同時点の情報に基づいています。全編を聞きたい方はこちらから↓
学校にほぼ触れず大人に。石井さんが伝えたいこと
安部石井さんは中学生のときに不登校になった後、フリースクールに通われたそうですが、それから高校や大学には行かれたんですか?
石井私は一切行かなかったんですよ。フリースクールには行ってたんですけど、高校も大学も、果ては自動車免許まで取ってないので、その後は学校というものに触れずにきました。
安部すごい。いいですね。つまり現行のパノプティコン的な教育制度に対しては常に批判的になれるわけですね。
石井一切の妥協を許さずに関わっておりますので。
安部かっこいい。だいぶロックンロールですね。
石井気づいたらそういう尖ったプロフィールになっていたという。まあ学校に行ってなかっただけなんですけど(笑)。
安部学校に行かなくてもちゃんと立派な大人になって食っていける事実を、まず世の不登校の皆さんに伝えなきゃいけないじゃないですか。
石井本当にね。私だけじゃなくていろんな職業に就いてる人がいますから。
それこそ安部さんもそうですけど、不登校から東大に行っている人も何人もいますし、大工になった人もキックボクサーになった人も、サッカー選手になった人もいるのでね。
不登校になったら人生が閉じるわけじゃないことは伝えたいですね。
安部石井さんは大人になって不登校新聞社に就職したそうですが、そもそもそのときには設立されていたんですね。
石井そうなんです。不登校に関して当事者から発信することが必要だろうということで、親の会の方をはじめ、色々な方が集まって団体を立ち上げました。私は設立から3年ぐらい経ってから入りましたね。
安部やっぱり自分の不登校経験が仕事に活きることが魅力だったんですか?
石井そうですね。ただ、まだ19歳だったので正直もっと自分のことばっかり考えてました(笑)。
自分が助かるためには?不登校だった自分はどうしたらいいのか?ってことをもっと人に聞きたいって。
安部なるほどね。僕ら社会問題屋から見ると、社会問題の当事者の回復のプロセスの一つに、当事者だった自分が当事者を支援する側にまわっていく中で自分自身も癒されていく……ということがあるんですよね。
石井さん自身が不登校新聞社に入ったという話が、その形に非常に近いなと感じました。
石井そうですね。中島みゆきさんが「麦の唄」という曲で「1本の麦になる」と歌ったみたいに、私も活動していく中で「不登校だった人にとってもう少し良い社会ってないだろうか」って思うようになって。確かにそういう面はありました。
小学生低学年の不登校やいじめの実態
安部ちなみに、当時は不登校になる時期って中学生が多かったかなって気がしますけど、いまってどんな感じなんですか?
石井もちろん数字としては中学生が多いんですけど、注目してほしいのは小学校低学年の不登校ですね。
安部なるほど。
石井いま私のところにきている相談だと、小学1年生とか2年生から不登校になっているパターンが一番多いですね。
安部マジっすか。これね、不登校当事者検定があったら、たぶん一級を取れる私としてはですね……。
石井(笑)。
安部実は私の妹は小1から不登校だったんですよ。
石井そうきましたか。
安部兄と一緒で再現性があるってことは家族に課題があるんじゃない?って思うんですけど、不登校の兄弟も学校に通わなくなる傾向ってあるんですか。
石井明確に因果関係があるとは言えないので、基本的に無いとは言っています。ただ、親が不登校に免疫があるかどうかは大事だったりしますし、兄弟で学校を休んでいる人がいると苦しい人が休みやすくなることは、あると言えばありますね。
安部 なるほどね。
石井小1、小2で学校に行きたくない子はこの3年間で倍増してます。あと、私や安部さんの時代から比べてちょっと増えていると思うのが、小学校低学年のいじめですね。
安部いじめの低年齢化はいろいろなところでデータが出てますけど、それがやっぱり原因なんですか?
石井けっこう多くなってきてはいますね。本人たちに聞くとけっこうエグいというか、陰湿ないじめが起こっています。
たとえばリレーのアンカーを決めるとき、わざと多数決で足が遅い子に決めたりとか。
安部いやいや、陰湿!
石井これを低学年でやる子がいて。全員での無視とかも含めて、そういう陰湿ないじめが増えてきて苦しんでる子は多いですね。
安部もう小1の時期から組織戦を挑んでくるわけですね。
石井そうなんですよ。小1、小2なのにそんなことするんだ……って感じで。
安部それはきついなあ。
いまの話を聞いていても感じますが、僕は不登校になること自体は決して悪いことじゃないと思うわけですね。学校に行きたくないのに行ってる方が不健全じゃないですか。
石井はいはい。
安部不登校ということは学校には行かなくて済んでるわけだから、ポジティブなことでもあるような気がするんですけど、年々増えている不登校の子どもの数に関してはどうやって評価するのがいいんですかね?
石井全くおっしゃる通りで、不登校になること自体は悪くないと。ただ、現状ですと学校で苦しんで不登校になる子が多いので、「苦しんで行かなくなる」というのは減らしていったほうがいいですよね。もう少し楽にならないと。いじめや不登校の経験が自殺念慮と結びつくこともあるので、苦しさは減らしていきたい。
安部そうですよね。不登校の数字は「逃げたい場所から逃げられている」という数字ではある一方で、不登校の子どもに対して適切な教育サービスを社会として提供できていないのが現状なのかなと。
もちろん大人側の責任でもあると思いますが、そもそもなんでこんなに不登校の子どもが多いんですかね。
石井仕組みの問題だと思います。学校には絶対に行かなきゃいけないという制度があり、すべての子は決められた学校に行き、決められた教室で過ごし、決められた机の前に座っていないといけないと。
この一択しかないっていうのが苦しすぎるんですよね。
安部いや本当にそうですね。僕は小1のときにそれが全くダメでした。学校の椅子に座ってられなくて立ち歩いちゃうんですよね。
石井荻上チキさんは“通学偏重主義”って呼んでましたね。学校に通うことしか許さないから、子どもが苦しんでるんじゃないか。
安部ほんとだよ!
石井やっぱり学びの在り方を多様にするべきだと思いますね。
安部なるほどね。
“塾至上主義”の影響は?親と子どもを取り巻く教育環境の変化
石井よかった、大谷翔平さんの話からここまで来れると思わなかったな(笑)。(※詳しくは前編へ)
安部話を広げたように見せてちゃんと回収するというね(笑)。
石井さすがですね(笑)。
安部いやいや。でもこれね、大谷さんの話を出してもらったので戻しますけど。
石井(笑)。
安部実は大事なトピックがありまして。大谷さんも、あるいはメジャーリーグで活躍している菊池雄星さんも、岩手県の花巻東高校が輩出してるわけですが。
石井 はいはい。
安部近年メジャーリーガーになった人で、首都圏出身の人ってそれほど多くないんですね。これってもしや首都圏の塾システムが、首都圏から“大谷翔平2”を生み出してない背景にあるんじゃないかと思うわけです。
大谷さん、まあまあ賢そうじゃないですか。たぶん賢いです。
石井そうですね(笑)。
安部もし首都圏に生まれたら、彼はちょっと背の高いイケメンの医者になったんじゃないか。首都圏の教育環境がそういうルートに乗せるんじゃないかって、けっこう問題意識を持っていまして。
石井なるほど。
安部この辺はどうなんですかね。首都圏では小学生から“塾至上主義”みたいな話がかなり出てきていると思っていて。中学受験でいえば東京都は本当に多いですし、クラスの半分以上の子が中学受験をする区もありますから。
石井そうですよね。私たちも不登校やいじめの低年齢化を訴えるときに、塾は大きなポイントじゃないかって言っています。
いまは幼稚園生や小学生のうちから塾で早期教育を行う場合が多くて、プログラミングや英語を教えようとして、勉強につまずく幼児や子どもたちが出てきています。
すごくストレスを抱えていて、かなり頻繁に友達に意地悪をしてしまう子も目立ちます。ある面では早期教育が子どもに良くない影響を与えてるんじゃないか?という点は危惧されてますね。
安部僕も地域の小学生にソフトボールとか野球の体験をさせても、「小4くらいから塾に行かなきゃだからダメだ」と言われることは多いです。
中には小2、小3から塾に入るための準備をし始めるっていう話も聞いて、小学生のうちほぼ全部塾やん!と思って。
石井そうですよね。でも親としては「子どもが遅れたらかわいそうですよ」って言われると、やっぱり抗えないですよね。
安部うーん。
石井うちの子が苦労しちゃうかもしれないし……って思いますよ。
安部親も良かれと思ってというか。ここは難しいところですね。
石井本当にそうなんですよ。
多様な学びの提供に向けてできること
安部学びが多様であるべきと言うのは石井さんの言う通りだと思うし、通信制も含めて特に小学校の教育環境は複線化するべきであると思っています。
現状だと、自分の住んでる学区の学校に行けなくなったら、学区外の学校にお金をかけて引っ越すか、通信制の学校やフリースクールに行くしかオプションがない。特に小学校はそうじゃないですか。
それ以外の選択肢を提供するとなると、かなりの予算が必要になると思っていて。
子どもたちに社会として教育システムを提供しなきゃいけない一方で、そのシステムをどう提供していくのか。予算はどうするのか、現行の学校のシステムをどう転換させていくのか。ここら辺の具体的なアイデアって持ってたりします?
石井やはり、高校でやってることを小中学校でも弾力的に認めていくことがポイントになると思いますね。
具体的には通信制を認めていくこと。現在は義務教育の段階で通信制の学校やフリースクールは基本的に認められていないので、ここを教育委員会が既存の学校として認めていくことですね。
そうすれば特に財源のことを考えずに、ひとまずは多様な教育を認めることができる。そしてそういった実践を通して、さらにみんなで議論していくことになるかと思います。
安部なるほど。小中学校バージョンの通信制の学校が義務教育でちゃんと認定されるようにしていけば、予算も必要なくやれるでしょうということですね。
石井そうです。日本でも通信制の中学校は数校だけですけど認められてるんですよね。これは戦後の動乱で学べなかった人向けなんですけども、ここのあたりの制度を弾力的にすると。
夜間中学校とかもありますし、やりたい私立学校さんってたくさんいらっしゃると思うんですよね。
安部なるほどな。
あと一点お聞きしたかったのは、先ほどご自身がADHDだとお話しされてましたが(※詳しくは前編へ)、発達障害と不登校は関係していると思われますか?
石井そうですね。隠れて苦しんでいた子が不登校になることはあるので、関係していると思います。いまは発達障害の認知が広がって、苦しんでいた子が見つけられるようになってきているとは感じますが。
安部やっぱり認知されていくことは大事ですよね。
石井本人の取扱説明書を、本人も親も持ってると楽になると思うんですよね。ファイリングされるっていう問題もありますけども、知らないより知ってた方が断然いいですよ。
どうしてこの子は忘れものが多いのか、どうしてこの子は一人で遊びたいのか。親が不安になるところを、臨床の経験を持って少し安心してもらえる方がいいなと感じますね。
不登校体験を”活かす”とはどういうことか?
安部その点で言うと、石井さんはTikTokで開催されている不登校制動画甲子園(※)に関っているそうですが、認知の向上や取説を知ってもらうことにもつながりそうな気がしました。
(※編集注:動画募集期間はすでに終了していますが、受賞作品を表彰する授賞式が2024年8月25日に東京都現代美術館にて開催予定です。詳しくはこちら)
石井私はずっと不登校を活かした全国大会が欲しかったんですね。野球に甲子園があるように。
安部なるほど。
石井大人になったら不登校を活かせる場面ってたくさんあるんですけど。
安部それは本当にそうですね。
石井でも大人がそれを10代の不登校の子に言うのは最悪の説教なんですよ。
安部どういうことですか。
石井大人が「いま苦労してるかもしれないけども、大人になったら役立つから」って。うるせえって(笑)。
安部わかる(笑)。確かに言われてみれば「うるせえ」ですね。
石井不登校動画甲子園では、不登校を経験した人が「学校に行きたくない君へ」というテーマで動画を作って、投稿してもらう形になっています。
不登校した人だけが参加できる場で、その動画を見るのは同じように苦しんでいる人たちですと。「必ずあなたの不登校の経験が活きて、誰かの勇気になる。そういう場面ができるから」ってことを伝えたいと思っています。
安部不登校経験者の僕としては、なかなかアイデアが出てこなかったんですけど、不登校を活かすってどういうことなんですか?
石井学校に行かなかったときに考えたことってありますよね。安部さんがコンビニで立ち読みしていたとき、漫画のことだけじゃなくて将来や社会のこととかも考えていたはずです。それを具現化してどこかに出せる場が必要だと思ったんですよね。
安部確かに。不登校してると時間があるので色々考えるんですよね。
石井そうです、そこです。
安部しかも考える内容は多様な方向にあるわけで。
石井そのときに考えたことが自分の骨格になってる人は多いと思うんですよ。
安部なってますね、僕も正直。
石井私が取材させていただいた方だと、リリー・フランキーさんは「迷う時間も糧になる」、押井守さんは「ひきこもっていた時間が原資になった」とおっしゃっていました。
骨格がつくられるときに「こんなこと考えちゃダメだ」って思うんじゃなくて、それを活かせる場があることを大人が言ってあげるべきではないかなと。
安部説教するんじゃなくて、場を作ると。
石井そうです。
安部いいですね。
石井いいでしょ(笑)。
安部大人が投稿しても変な話だと思うので、みなさんにはぜひこうした取り組みがあるってことを知ってもらえたらね。
石井はい。
安部ありがとうございます。
では、時間が迫ってきてるので今日はこの辺りで。石井さん、ありがとうございました!
石井ありがとうございました!
(前編「猛勉強した少年と、野球少年は今……2人の不登校経験者が本音を語る」はこちら)
【今回のまとめ】
・石井さんと安部さんの経験談、取材談のように、不登校になることで人生が閉じるわけではない
・石井さんに寄せられる相談としては、小学校低学年からの不登校やいじめが増加している。要因として早期教育や塾至上主義の影響があると考えられる
・子どもに多様な学びを提供するために、通信制の小中学校をはじめ、社会として教育の選択肢を増やしたり認めたりする必要があるのではないか
【今回の問いかけ】
・不登校に対する考え方は変わりましたか?それはどのような変化でしたか?
・学校以外の学びの場(通信制やフリースクールなど)について、あなたが知っているものや、これから必要だと思うものはありますか?周りの人に伝えたいことは何ですか?
「社会のおしゃべり #あべラジオ」は毎週水曜日(祝日除く)12:15~12:55にRidiloverX(旧ツイッター)からお届けしています。
アーカイブはこちらのPodcastからもお聞き頂けますので、ぜひフォローよろしくお願いします!
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