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公開日: 2024/10/30(水)
更新日: 2024/10/31(木)

【安野たかひろ×安部敏樹】「社会はバグなしには前進しない」ハックの事例から見える民主主義システムの課題と可能性(vol.91後編)

公開日: 2024/10/30(水)
更新日: 2024/10/31(木)
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【安野たかひろ×安部敏樹】「社会はバグなしには前進しない」ハックの事例から見える民主主義システムの課題と可能性(vol.91後編)

公開日: 2024/10/30(水)
更新日: 2024/10/31(木)
オーディオブック(ベータ版)

毎週水曜日、X(旧Twitter)スペースでお届けしている「#あべラジオ」。

 

今回は、今年(2024年)の東京都知事選に出馬し注目を集めた安野貴博さんをゲストにお呼びし、選挙戦の舞台裏や民主主義システムの課題などについてお話ししました。

 

後編は、民主主義システムのハックと改善について。

 

政治の世界は予想以上にハックされている?台湾の先進的な取り組みから、NPO乗っ取りの可能性、安部さんが「政治の世界ではこの10〜20年で最も凄まじいシステムハック」と語る事例まで。

 

聴き手はリディラバジャーナル編集部の東です。

 

(前編「システムハッカーの視点で紐解く選挙戦の舞台裏」はこちら

 

※本記事は2024年10日16日に放送された「#あべラジオvol.91」を編集してお届けしており、同時点の情報に基づいています。全編を聞きたい方はこちらから↓
 

 

システムバグとどう向き合うか。台湾の事例と認定NPOの仕組みから考える

安部安野さんは都知事選のときに「(従来の選挙は)候補者の考えを一方的に伝える場になっていた」「投票のみでは数ビットの情報しかやりとりできていない」と主張してたけど、じゃあどれくらい情報量を増やせばいいんだっけ?とか、ブロードリスニング(※1)で色々な人に話を聞けるようになったとしても限界はあるんじゃない?とか、この辺りの話も聞いてみたいね。

 

安野まず限界の話の前に「どこまで目指せるか?」という点で言うと、台湾の事例まではいけるだろうなと思っていて。

 

台湾では「こういう法律をつくった方がいいんじゃないか」という問題提起ができる掲示板のようなものがオンライン上にあって、いろんな人がポストするわけですね。そこに5000いいねとか何千いいねがついたら、ちゃんと次の検討の土台に載せるという流れになっています。

 

次の土台に乗ると、ボランティアでワークショップが開催されたり、弁護士や専門家の方が入って検証したりと、いくつかのゲートがあって検討プロセスが進んでいくんですね。それで最終的には内閣が入って法制化が進んでいくと。

 

そういうパスが用意されていて、実際にこのパス経由で法律ができた事例が20〜30個くらいあるんですよ。

 

ここまでできていることを考えると、日本でもできるだろうなと思いますし、そこから先ももっといろいろなことができるかもしれない。

 

ただ、まだほとんどの国で実験されていない領域なのでわからないところは多いですし、どこかに限界もあるとは感じます。

 

安部なるほどね。

 

いまの話を聞いていると、認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)の仕組みとちょっと似ているところがあるなと思った。

 

安野ほうほう、そうなんだ。

 

安部たとえば、認定NPO法人等になるための要件の一つに「パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること(※2)」があるんだけど、その絶対値基準は「寄附金の額の総額が3,000円以上である寄附者の数が、年平均100人以上であること」ってなってるんだよね。さっきの5000人のいいねの話と近いんだけど。

 

安野確かに似てるね。

 

安部それらの基準を満たしていると確認されたら、認定が受けられると。

 

安野うん。

 

安部それで、NPOは基本的に「会員になりたい」って手を挙げた人を拒んじゃいけないんだよね。拒まないことで公益性を担保しているということだから。

 

その意味で言うと、すでに社会実装されている先行事例があると。

 

でも逆に難しいところがあって、実はNPOって乗っ取りしやすいんだよね。

 

安野へー、そうなんだ。おもしろいね。つまり、大量に人を動員させて「入ります」って言わせれば数の力で乗っ取れるってこと?

 

安部そうなの。

 

安野それ、すごい仕組みだね。

 

安部システム的にバグがあると言える可能性が高いと俺は思ってるんだけど。しかも、そんなに言うほど会員数が多いNPOってないのよ。数百人いたら多い方だと思う。

 

もちろん何千人規模のもっと大きなNPOもあるけど、基本的には少なめだから、たとえば100人、1000人動員すればすぐに乗っ取れる。論理的にはほぼすべての団体が乗っ取り可能なんだよね。

 

たぶんこれと同じ話が投票システムにも出てくる。たとえば5000いいねみたいな数字の基準をどのあたりに設定すると乗っ取りが難しい仕組みになるか?とか、事後プロセスはどのくらい平静が保たれているのか?ちゃんと審査されていくのか?とか。

 

安野いやー、マジでおっしゃる通りですね。

 

やっぱり何か仕組みやルールをつくると、ハックしようとするやつが絶対に出てくるんですよね。

 

ただ、僕はわりと楽観的ではあります。まずは最終的なブレーキを引ける人、拒否権を持つ人を設置しておいて、あとはどのような攻撃が来るのかを見ながらプロセスを洗練させていければいい。

 

もちろん、拒否権を持つ人をどれだけ信頼できるか?とか、進化の過程でバグつかれたときにどうするのか?とか、いろいろ問題はあると思います。でも、やっていきながらメカニズムを洗練させていくのが一番早いし、事前に考えて設計するよりも確実なので、こういったことを実験しながら進められるといいと思っています。

 

安部基本的に社会はバグなしには前進しないので、バグが出てくることを前提に進めなきゃいけないよね。

政治の世界の凄まじいシステムハックとは?

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リディラバジャーナル編集部。「社会課題を、みんなのものに」をスローガンに、2018年からリディラバジャーナルを運営。
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