
「日本は、妊婦や乳児へのケアについては非常に手厚い公的支援が用意されています。一方、産後の女性へのケアは、ほぼ本人任せという状況です。出産後の心と体のダメージが長引くことで、産後うつ病(以下、産後うつ)をはじめ、虐待や夫婦不和など、さまざまな社会問題につながっています」
こう語るのは、NPO法人マドレボニータ代表の吉岡マコさんだ。
吉岡さんは、大学院生だった25歳のときに出産。「産後の体がこんなにつらいなんて誰も教えてくれなかった!」と衝撃を受けたという。
以降、産後ケアプログラムの普及や産前・産後ケアの調査・研究などの取り組みを続けている。
どうして産後にうつになるのか、周囲にはどんなサポートが求められているのか。前編では、吉岡さんの20年間の活動から見えてきた、産後うつの特徴と課題について聞いていく。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた6/12のライブ勉強会「自殺する母たち〜産後うつを知っていますか?〜」の内容をもとに記事化した前編です。リディ部について詳しくはこちら。
1996年東京大学文学部卒業後、同大学院で運動生理学を学ぶ。1998 年自らの出産を機に、産前・産後に特化したヘルスケアプログラムを開発。2008 年NPO 法人マドレボニータを設立。指導者の養成・認定制度を整備。(マドレボニータHP)
楽しみにしていた子育てが苦痛に変わってしまう
出産直後の女性は、心身の変化から不安定になるリスクを抱えている。産後うつの罹患率は、およそ11人に1人(厚生労働省平成25年度)。決して少ないとは言えない数字だ。
産後うつとは、分娩後の3ヵ月以内に急激に発症するうつ病のことをいう。赤ちゃんが可愛いと思えない、何をやっても楽しくない、落ち込みから抜け出せない、疲れているのに眠れない、涙が出てくる……などの訴えが2週間以上〜数ヵ月後まで続く。
自分を傷つけたい、死んでしまいたいと思うこともある。
2018年に発表された厚生労働省研究班の調査によると、産後1年までに起きた妊産婦の主な死因のうち1位は、病気でも事故でもなく「自殺」だった。
2015〜16年の2年間で102人。うち91人が出産後の自殺で、35歳以上や初産の割合が高かった。産後うつが原因の一つと考えられている。
子育てに不安を覚えるのは男性も同じ。出産によって生活環境が変わることで、男性やパートナーにも産後うつリスクがあると言われている。
産後がこんなにつらいなんて…

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