歴史から紐解くワクチン忌避が生まれた背景――手を洗う救急医Takaさんと「ワクチン忌避」に向き合う【医療ゼミ#4 後編】
歴史から紐解くワクチン忌避が生まれた背景――手を洗う救急医Takaさんと「ワクチン忌避」に向き合う【医療ゼミ#4 後編】
前編では、日本はワクチンを打つ・打たないという「行動」だけでなく、「姿勢」の面でもワクチン忌避が根強いということに触れた。
後編では、引き続き医師の木下喬弘さんに、国民の予防接種を巡る歴史的な背景やワクチン忌避国となった理由などについて聞いた。
※本記事の内容は2021年8月25日時点の知見に基づいています。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/8/25のライブ勉強会「【リディ部×手を洗う救急医Taka 特別ゼミ第3回】」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
2010年阪大医学部卒。大阪急性期・総合医療センターで初期研修、12年同救急診療科に入職。19年にフルブライト奨学生として、ハーバード大公衆衛生大学院に留学。20年HPVワクチン接種率向上への取り組みで同大大学院の卒業賞Gareth M. Green Awardを受賞。8月28日にHPVワクチンのsocial marketingを行うために一般社団法人「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」を共同設立し、現在副代表。科学に基づいた医療情報の提供を心掛け、Twitter(@mph_for_doctors)でも情報発信中。
根拠のないデマは昔から存在していた
コロナ禍の現在、ワクチンを積極的に打とうする人と接種を拒絶する人、また理由があって接種できない人がいる。特に推進派と反対派は時に激しく対立し、ワクチンが人と人の間に断絶を起こす原因にもなってしまっている。
では、そもそもワクチンは歴史上いつ頃から使われるようになり、ワクチン忌避はどのように始まったのだろうか。
紀元前から人々に恐れられてきた疫病に、致死率が非常に高い「天然痘」がある。西暦1000年ごろの中国では、天然痘の治療と称して、患者のかさぶたを粉末にして鼻から注入するという方法がとられていた。
しかし、この方法は(天然痘に感染し)30人に1人が死亡するという危険なものだった。
その後18世紀の末ごろになると、英国の医師ジェンナーが、牛の乳しぼりをする女性が天然痘にかからないことに気づいた。
ジェンナーは牛痘(牛の天然痘)の膿を子どもに接種して、その後天然痘ウイルスに感染させ、発症しないことを発見した。これが人類至上初のワクチンだ。
日本では、江戸時代の末期に蘭学者たちが牛痘ワクチンを国内に持ち込んだ。
すると、「接種すると牛になる・牛の角が生えてくる」「赤い色を身につければ天然痘を避けられる」といった根拠のないデマが広がった。また、「野蛮な国の獣臭い苗を求めて、日本の貴人に植えるとは実に嘆かわしい」といった声もあがった。
「このように日本のワクチン忌避は、海外から来たものに関する忌避感から始まったといっていいでしょう。
また当時、からわ版のようなものでワクチンの正しい情報を知らせるといった取り組みも行われていました。実は現代に起きていることとあまり変わらないのです」と木下医師は話す。
(写真 木下医師さん)
ワクチンが大きく広がった時代もあった
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