「友達ごと」でバリアフリーを考える――元パラリンピアンが考える東京パラリンピックのレガシー(後編)
「友達ごと」でバリアフリーを考える――元パラリンピアンが考える東京パラリンピックのレガシー(後編)
2021年8月24日から開催されている東京2020パラリンピック。今回の自国開催を通じて、障害者理解やバリアフリー化をさらに促進させていくためには何が必要なのだろうか。
今回は、パラアイスホッケーで3回のパラリンピック出場経験があり、2008年のバンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得した経験を持ち、現在は特定非営利法人D-SHIPS32の理事長として活動する元パラリンピアンの上原大祐さんにインタビュー。
後編では、日本における障害者理解の課題や、ハード・ソフト面それぞれのバリアフリーの捉え方などについて聞いた。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/8/4のライブ勉強会「東京パラリンピックのレガシーとは?~障害者理解の視点から~」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
元パラリンピアン・特定非営利活動法人D-SHIPS32理事長。2006年トリノ、2010年バンクーバー、2018年平昌と3回大会パラアイスホッケー競技でパラリンピックに出場。2012-2013のシーズンは、アメリカ・フィラデルフィアのNHLチームであるPhiladelphia Flyers Sled Hockey Teamに在籍。2013年に1度引退し、2014年にNPO法人D-SHiPS32(ディーシップスミニ)、2016年に一般社団法人障害攻略課を設立。2016年にHEROsアンバサダーにも就任し、アスリートが社会貢献する日本を作るためにトップアスリート達と活動をしている。その他、商品開発やパラスポーツ地域推進作りなど街づくりにも貢献している。
コミュニケーション不足が障害者理解を遠ざける
パラアスリートとして海外での滞在経験も豊富な上原さんは、日本の障害者理解の現状についてこう考えている。
「日本は健常者と障害者だけに限らず、男性と女性、若者と年配者といったように、同じカテゴリごとに『分けたがる』傾向があるように感じます。
異なるカテゴリにいる人たちが、ともに同じ空間や時間、感動を共有する場が少ないことで、お互いを理解するところまで発展できていない部分があるのではと考えています。
自分と違う人ともコミュニケーションを取っていこう、一緒に楽しめる場所をつくろうとしてアイデアを出していくことが、障害者理解には必要だと思います」
(写真 上原大祐さん)
たとえば、一見充実しているように見える日本のバリアフリーも、なかには障害者を理解してつくられていないものがあると上原さんは指摘する。
「入り口にスロープがある建物でも、中に入ってみると、障害者も使えるトイレは設置されていなかったということがあります。
健常者側だけが『障害を持つ人はきっとこういうことに困っているだろう』と想像してつくっている。いわゆる『ファンタジー』になってしまっているんですね。
こうなってしまう要因の一つには、バリアフリーについて考える場に当事者がいないということがあると思います。
たとえば施設をバリアフリー化するとき、障害者団体などに行政や企業がヒアリングするけれど『障害者本人ではなく、健常者である障害者団体の代表だけに話を聞いていた』など、当事者の意見やアイデアが取り入れられていないケースも少なくありません。
本来は、障害者である当事者とデザインしたり、当事者起点でデザインを考えたりすることが必要だと思っています」
「心のバリアフリー」とは何か
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