「教員の仕事の過酷さ」が理解されるようになってきた——教員多忙化問題のこれまでとこれから(前編)
「教員の仕事の過酷さ」が理解されるようになってきた——教員多忙化問題のこれまでとこれから(前編)
2020年8月、「#先生死ぬかも」のハッシュタグがTwitterでトレンド入りし、教員の働き方の過酷な実態が話題となった。ツイートを投稿した人の多くは、現役の教員たち。もともとは、教育関係者らが参加したWebセミナーの参加者たちによるものだった。
同セミナーを共同で主催、自身も出演し教員の働き方改革を訴え続けている現役高校教員の斉藤ひでみさんに、教員の多忙化問題に関する現状や、教員が過酷な労働環境に置かれがちになってしまう構造について話を聞いた。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた8/29のライブ勉強会「『#先生死ぬかも』の背景に潜む多忙化問題の構造とは——現役教師・斉藤ひでみさんと考える」の内容をもとに記事化した前編です。
1979年生まれ。岐阜県高等学校教員。2016年8月より教育現場の問題を訴え続け、国会や文部科学省に署名提出、参考人陳述等を行う。共著に『教師のブラック残業』(学陽書房)。『迷走する教員の働き方改革』(岩波書店)。ドキュメンタリー「聖職のゆくえ」(2019民放連盟賞準グランプリ)出演。本名は「西村祐二」。
教員のつらさが共感を得られるように
岐阜県の公立高校で教員を勤める斉藤さんは、今年で教員になって9年目。教員として働き始めた当初から労働環境に疑問を抱いてきた。
「最初のころは、『なぜこんなに忙しいのかわからない』と感じながら働いていましたね。ただ当時は、いまのように教員の働き方改革に関する議論がなされることもなく、現場から教員の働き方を問題視するような声も上がっていませんでした。現在は、現役教員もSNSなどで声を上げるようになってきた。僕が教員になった当時とは、状況が変わってきていると感じます」と、斉藤さんは話す。
斉藤さんは、教員になって5年目のときにTwitterを開始。教員の多忙な現状、その根底にある給特法(「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の略称)の問題や部活動の問題などについてツイートするなどして、過酷な実態を訴え始める。数名の現役教員を集めて記者会見を開くなど、精力的な活動を続けてきた。
(写真AC)
斉藤さんは社会の変化について、「『#先生死ぬかも』もそうですが、最近は、教員はつらい状況で働いているんだという発信を当事者がSNSなどに投稿しても、生徒や保護者から共感してもらえるようになってきました」と語る。
一方、こういうツイートが話題になると「つらくても公に発信すべきではない」「教育者が“死ぬ”という言葉を使うのはいかがなものか」というような反応も少なからずあるという。
「批判的な目を向ける人も一定数いるから、つらくてもギリギリまで我慢したり、生徒のためにがんばる姿を見せ続けてしまう教員も少なくないんです。僕自身も生徒や保護者の反応が不安で、長い間、顔や本名を隠して活動していました」
斉藤さんが自分の顔と本名(西村祐二)を公開したのは、約1年前のこと。国会で働き方改革の議論がなされていたタイミングだった。
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