野生動物と人間は馴れ合うべきではない――獣害対策の専門家が考える野生動物との共存とは(前編)
野生動物と人間は馴れ合うべきではない――獣害対策の専門家が考える野生動物との共存とは(前編)
猿やイノシシなどの野生動物が農作物を荒らしたり、街へ出没して人を襲ったり、車と衝突したりするなどのニュースを耳にする機会も多い。
農林水産省農村振興局の発表によれば、2019年の野生鳥獣による農林水産被害は年間で約158億円にのぼる。
長岡技術科学大学准教授であり、野生動物の獣害対策支援に取り組む株式会社うぃるこの代表取締役をつとめる山本麻希さんは「野生動物と人間の『共生』ではなく、『共存』を目指していくべき」と考えている。
前編では山本さんに、獣害対策に取り組むようになったきっかけや、具体的な獣害対策の方法、課題などについて話を聞いた。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2/3のライブ勉強会『【動物との共生vol.2〜駆除される動物〜】「害獣」を「野生動物」に戻す獣害対策とは』の内容をもとに記事化した前編です。
長岡技術科学大学の准教授として地域の獣害対策に関わる傍ら、2011年に獣害対策の支援団体(現NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ)を設立。また2015年より、一般社団法人ふるさとけものネットワークの代表として、獣害対策のプロをつくる「けもの塾 」を開催している。2018年、VCファンドからシード出資を受け株式会社うぃるこを設立し代表取締役に就任。科学的アプローチと、培ってきた現場力を武器に「野生動物と人間の共存」を目指して活動している。
「人間の都合で殺される野生動物がいる」現実
動物好きな母の影響で、自宅には数十匹もの犬や猫がいるような環境で育ったという山本さん。獣医を志したこともあったが、実習や実験で動物を殺さなければいけないことに耐えられず獣医学部の受験をやめたという。
そんな山本さんは早稲田大学に進学後、野生動物の生態学を専攻。卒業研究では南極を観測する研究所へ出向し、ウミネコやペンギンなどの生態の研究をしたり、大学院時代は北海道の離島に数ヶ月間滞在し、1日中海鳥を捕まえて研究するような生活をしていた。
「研究をしていくなかで、ウミネコがある島では守られている一方で、ある島では人間の都合によって有害駆除されていることを知ったんです。
動物を無闇に殺したくはないけれど、人間の産業を守るために殺されてしまっているという事実がある。人間と動物はどうしたら共存できるのかと、学生時代から考え始めるようになりました」と、山本さんは話す。

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