学生の経済的困窮は、コロナ禍を機に始まったものではない――コロナ禍で苦境に陥る大学生(後編)
学生の経済的困窮は、コロナ禍を機に始まったものではない――コロナ禍で苦境に陥る大学生(後編)
前編で紹介したように、コロナ禍による経済的困窮や学びの質の低下などが、学生の中退あるいは休学を招く事態となった。
これに対し、各大学で学費の減額や返還を求める署名運動が発生。その代表者らが全国から集まり、2020年4月にすべての大学の学費減額を求める団体「一律学費半額を求めるアクション」を発足、署名などの活動を行った。
後編では、現代の学生が経済的困窮に陥りやすい理由や、「一律学費半額を求めるアクション」の活動がもたらした成果について、元代表の山岸鞠香さんに聞いた。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた3/26のライブ勉強会「学費減額運動のその後〜コロナ禍の大学生の苦境〜」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
1993年生まれ。神奈川県相模原市出身。フランスで大学院修士課程に入学し、国内外を行き来するうちに、日本のアカデミアの異様さを無視できなくなり、2019年5月頃から意見発信を開始。問題意識を共にする大学院生たちと出会い交流するうちに、Change Academiaという活動が発足した。大学院修了後は、理化学研究所研究パートタイマーとして自身のテーマの数学研究を行う傍ら、団体代表として言論活動や公教育への問題意識向上のための草の根活動をしている。コロナ禍においては、全国の大学や専門学校で立ち上がった、150名を越える学費減額を求める署名活動発起人やChange Academiaの仲間と共に「一律学費半額を求めるアクション」という活動を行い、「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』の制度発足に貢献した。各学生団体は後進に引き継ぎ、自身は2020年秋から大学院博士課程に進学の予定だったが、諸事情により今年度末で民間に転職の予定。一律学費半額を求めるアクション元代表。
法律が定める「公教育」と、実情の乖離
「一律学費半額を求めるアクション」の活動の発端は、2020年4月半ばに大学から送付された学費の納入通知書だ。
2020年3月ごろに新型コロナウイルス感染症の影響が深刻化し、新学期になっても大学の授業が始まる見通しがたたないまま、満額の学費が請求された。
「『学費の納入は保留になる』か『満額だが返金の可能性がある、もしくは例年と同じ質の授業が担保される』といった説明が入っていると思っていました」と、山岸さんは当時を振り返る。
しかし通知書には何の説明書きもなく、満額の学費を支払うことに多くの学生が疑問を持った。
実は山岸さんは、コロナ禍になる以前からChange Academiaという活動を通して、学費の見直しを訴えてきた。それは、山岸さんが慶応義塾大学を卒業してフランスの大学院に進学したとき、日本とフランスの間で大学に対する認識に大きな違いがあることを知ったのがきっかけだ。
「フランスでは、小中高と同じように大学も大学院も公教育と考えられているため、小学校から大学院まで学費は基本的に無料です。
公教育は、受験のために通う学習塾などのように受益者が自分であるものとは異なり、公共の利益になる教育のこと。社会全体の教養の底上げを行うために、大学や大学院での学びも社会のためと考えられているんです」
実を言えば日本においても、教育基本法によって、学校法人の認可を得た学校は公立や私立に限らず公教育を行うとされている。つまり、学校法人の大学や大学院はすべて、社会に利益をもたらす公教育に位置づけられているということだ。
それにもかかわらず、何十万、何百万という学費がかかるために、進学を諦めている人がいるという現状がある。「この問題意識を情報発信プラットフォームの『note』に書いたところ、それを読んで共感したという院生が連絡をくれ、Change Academiaの活動が始まりました」
(PAKUTASO)
学生には、これまでも経済的な苦しみがあった
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