立場の違う人との協働で「いじめ問題」解決を目指す――「構造化」から問題の突破口を探る(前編)
立場の違う人との協働で「いじめ問題」解決を目指す――「構造化」から問題の突破口を探る(前編)
年々増え続けるいじめの認知件数。早期発見や適切な対処のためには、感情論ではなく、立場の違う人たちが協働し、問題を構造的に捉えて向き合う必要がある。
今回は、リディラバ代表の安部敏樹と、いじめ問題構造変革プラットフォームPIT代表理事の谷山大三郎さんと竹之下倫志さんが対談。前編では、PITの活動や学校現場のいじめへの意識の変化、いじめという社会課題を「構造化」する必要性について語った。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/7/21のライブ勉強会「いじめ問題の『突破口』を見つけるには」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
一般社団法人いじめ構造変革プラットフォームPIT代表理事。
1982年12月生まれ。富山県出身。千葉大学教育学部卒業、千葉大学大学院教育学研究科修了後、2008年より株式会社リクルートに勤務(営業、事業推進、人事を担当)し、2015年に退職。現在、ストップイットジャパン株式会社代表取締役、一般社団法人てとり代表理事、千葉大学教育学部附属教員養成開発センター特別研究員等務める。
いじめ問題解決のため、事業を通じ年間約300校で授業や講演の実施、アプリ等での報告相談環境の普及、そしてトップアスリートとともに「自分を助ける 人を助ける」きっかけづくりに取り組む。
<竹之下倫志さん>
一般社団法人いじめ構造変革プラットフォームPIT代表理事/一般社団法人HALOMY理事。
1982年4月生まれ。鹿児島県出身。高校中退・ひきこもり等を経て、外資系ファーム、VC等にて従事後、独立。現在は助成事業や社会的インパクト評価関連事業に従事する他、自身でいじめや不登校領域に関する団体を立ち上げ事業を行う。「いじめ x Tech」領域の事業にて経済産業省主催グローバル起業家育成プログラム「始動 Next Innovator」シリコンバレー派遣者選出他。グロービス経営大学院MBA。
いじめ問題解決のために協働が必要
安部敏樹 PITさんは我々と同じ「構造化(※)」というアプローチで、いじめ問題の解決に挑戦していらっしゃいますが、なぜ構造化が必要だと思われたのですか。
※構造化について詳しくはこちら
竹之下倫志 まず、私たちが目指しているのは「いじめを取り巻く人や団体と協働して問題にアプローチする」ということです。
PITとして活動するなかで、たとえば自分の子をいじめから守る活動をしたところ地域から孤立してしまった母親や、いじめ問題解決のために動いた結果、保護者から嫌われてしまう教員などをたくさん見てきました。
みなさんには「子どもたちを守りたい」「いじめをなんとかしたい」という共通の想いがある。ですが、一人ひとりはがんばっているのに、孤立や対立構造が起きてしまったりするケースも少なくないんです。
いじめ問題を解決したいと考えている人たちが一緒に動くことができず、個人が摩耗していく。そこを整えてみんなの方向性が揃えば、いじめ問題の構造を変えられるのではと考えています。
(写真 竹之下倫志さん)
安部 いじめに限らず、社会問題解決に向けて動こうとするとき、関係者同士でいがみ合ってしまうことはよくありますよね。目的は同じなんだけれど、手法やこだわるポイントが違うと、殴り合いのようになってしまうことがある。
竹之下 保護者と教員が協働するためには、お互いが対立しないために状況を把握し、「何ができて何ができないのか」「なぜそうなっているのか」というベースラインを理解することが大切だと思います。
そこを踏まえ、対立する関係者同士で対話し、目指せる目標に向かって走っていくのが理想的だと考えています。土壌づくりと対話の場を、いかにつくっていくか。
たとえばPITでは、相互理解を深めていくために、教員が見ている視点や感情をそれ以外の人が知る機会や、いじめで調停になったときに、立場ごとにどういう思考に陥り、対応をしてしまいがちか体験する研修などを実施しています。
またマクロの視点から、いじめや学校周辺の課題を一枚の絵にして全体像を把握し、「こういう構造にはまっているから動けない」など、多層的に課題があると知る機会も大切にしています。
定例会でも構造をいろんな視点から学術的にも研究していて、現場では共有の理解として使ってもらい、対話をスムーズにしていける材料にしていく。そしてマクロ的には、修正すべき仕組みの部分を把握し、政策等につなげていくことを心がけています。
いじめを発見しようとする意識は高まっている
安部 率直に、いまの日本ではいじめ問題は改善に向かっていると思いますか。
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