コロナ禍の一年間、飲食業が受けたダメージ——飲食ビジネスはこれからどうなる?
コロナ禍の一年間、飲食業が受けたダメージ——飲食ビジネスはこれからどうなる?
コロナ禍による時間短縮営業や休業要請などが長期化する中、飲食店はどのような課題を抱え、どんな局面を迎えようとしているのか。
サービスを提供する飲食店の厳しい状況は、食材を提供する生産者や、労働力を提供してきたアルバイトの学生など、私たちの生活にも影響を与えている。
飲食店の経営やプロデュースを手がける周栄行さんの視点から、コロナ禍の一年間の飲食業の動きを振り返り、業界の今後を展望する。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた4/15のライブ勉強会「コロナの長期化が飲食業に与える影響」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
襷(たすき)株式会社代表取締役。1990年大阪市出身。上海、ニューヨークへの留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業し、UBS証券に就職。独立後は、食にまつわるプロデュースを中心に活動。2016年に襷株式会社を創業。飲食店の経営からホテル、地方創生まで、食を軸にした幅広いプロジェクトに関わっている。
日本の飲食業界の構造とコロナ禍の一年
そもそも日本は、世界の国々の中でも飲食店の数が非常に多い。
「人口1,000人あたりの飲食店数が、ニューヨークでは2店舗程度ですが、東京では7店舗を超えています。諸外国では路面店がほとんどで、駅前の全館飲食店のテナントビルなどは日本にしかありません」と周栄さんは話す。
なぜこれほど飲食店が多いのか。その理由のひとつに、参入障壁の低さが挙げられる。
「食品衛生法などの規制も緩いですし、欧米やアジアの多くの国々ではエリアごとの店舗数に制限がかかっていますが、日本ではそのような制限がなく、過当競争が起きます」
その結果、安くて美味しい食が提供されるが、日本の飲食店は総じて利益率が低い。
「外食系上場企業の営業利益は平均して3%程度という超薄利です。優秀な店舗でもFLコスト(食材費と人件費)が60%を占め、そこに家賃が15%前後かかり、水道光熱費などを引くと手元に5%ぐらいしか残りません」と周栄さんは話す。
中でも固定費である家賃が高い。周栄さんは昨年来、家賃を売上歩合いにして変動費にシフトさせ、ビルのオーナーと痛みを共有する仕組みを提言してきたが、この一年そういった議論はあまり活発にならなかったという。
「フレキシブルに対応した人もいるようですが、オーナー側も固定資産税が払えないとか、REIT(不動産投資信託)などでは物件自体の収益性が求められ、家賃を簡単には下げられなかったわけです。
その結果、飲食店が倒れ、テナントが空いても誰もそこに出店したくなくて、結局、オーナーも固定資産税が払えないと悲鳴を上げている状況です」
とくに、“大箱”(席数50~100以上)で客単価3,000~5,000円クラスの食を提供していた店舗の経営は厳しく、連日のように大手外食チェーンが「100店舗閉めます」といったニュースが流れた。
(写真AC)
中でも、銀座、浅草などインバウンド比率が高かったエリアはゴーストタウンと化している。
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