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介護
公開日: 2023/3/13(月)
更新日: 2023/3/27(月)

「よくできた」その一言で、母も私も変わった。安藤優子さんが語る母の介護と“第三者”の意義(後編)

公開日: 2023/3/13(月)
更新日: 2023/3/27(月)
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公開日: 2023/3/13(月)
更新日: 2023/3/27(月)

「よくできた」その一言で、母も私も変わった。安藤優子さんが語る母の介護と“第三者”の意義(後編)

公開日: 2023/3/13(月)
更新日: 2023/3/27(月)

「私が言うことでもないのかもしれませんが、母は800%幸せだったと思います」

 

約16年にわたって認知症の母親の介護を経験したキャスター・ジャーナリストの安藤優子さんは、母親が人生の終わりに過ごした穏やかな時間をそう振り返る。

 

そして、その穏やかな時間を作り出すことができたきっかけには、母親が「よくできた」と自己肯定できた“ある瞬間”があったという。

 

前編に引き続き、介護・福祉事業者の人材採用や人材育成支援、介護領域に関心がある人たちのコミュニティ運営などを行う秋本可愛さん(株式会社Blanket代表)と、介護経験者の安藤さんが対談。

 

家族だけで介護を抱え込み、深刻な状況に追い込まれてしまうケースも少なくない現在の社会の中で、介護を第三者に頼る意義について語ってもらった。

 

「昔と変わってなかったんだ」
自己否定の嵐を抜けて、穏やかになった母

 安藤優子  介護って「お世話をする」のではなくて、その人の人生をもっと豊かにしていくものなんだと感じたエピソードがありました。

 

母が高齢者施設に入って約1年が経った頃、臨床美術(※)を始めて、臨床美術士さんが週に1回ほど母のもとへ来るようになったんです。

 

※臨床美術:絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、高齢者の介護予防や認知症の予防・症状改善、働く人のストレス緩和、子どもの感性教育などに効果が期待できる芸術療法(アートセラピー)の一つ(引用元:特定非営利活動法人 日本臨床美術協会HP

 

母はハワイが大好きだったので、「母にとってのハワイ」を絵に描いてみようということになって。

 

部屋の窓を開けて風を入れ、ハワイアンを流す。あと、母が好きだったハワイアンキルトのクッションや、アンスリウム(ハワイで親しまれている花)を置いて。

 

それで、母のハワイで過ごした思い出のアルバムを見ながら、臨床美術士さんが母の昔話を聞いてくださるんですよ。

 

そして最後に、母が「母にとってのハワイ」を絵に描くんですが、そのときにアンスリウムを描きました。もちろん臨床美術士さんのアシストがあって描くんですけれども、これが見事な絵なんです。

 

その絵が完成したとき、母は「よくできた」って言ったんですね。

 

認知症になった母は、好きだった旅行も、人と会うのも、買い物も、おしゃべりも、何もかもができなくなっていました。

 

そんな自分に対して、母はものすごい怒りを持っていたと思いますし、ずっと自己否定の嵐の中にいたんじゃないかと思うんです。

 

何か自分を表現したいんだけど、できない。だから人をつねったり、暴力的な行為に出たりしたんじゃないかなと。ごめんなさい、専門家ではないので私の勝手な解釈ですよ。

 

でも、その絵ができたときに久しぶりに自己肯定したんですよ。「よくできた」って。

 

それから母は徐々に変わっていって、すごく穏やかになったんです。

 

私も「ただ表現ができなくなっただけで、母は全く変わっていないんだ、ちゃんとそこにいるんだ」ということが分かって、母に対しての気持ちが変わりました。

 

母に対してすごく優しくなれましたし、ほっとしたというか、楽になったというか。そんなことを経験しました。

 

ちなみに、母が亡くなったとき、それまで描き溜めていた絵を介護士さんたちが欲しいと言ってくださって、いまでもそれをとても大切に飾ってくださっています。

 

私が言うことでもないのかもしれませんが、母は800%幸せだったと思います。

 

(安藤さん)

 

ーーとても素敵なエピソードを、ありがとうございます。まさしく臨床美術士さんという「第三者」の存在が良い影響を及ぼしたように思いますが、秋本さんはどのように感じられましたか

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リディラバジャーナル編集部 東憲吾
デザイン会社のライター/コピーライターを経て、2020年からリディラバジャーナル記者/編集者。
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