リディラバ12年目の新たなスタート――思いを込めたロゴを刷新した理由(前編)
リディラバ12年目の新たなスタート――思いを込めたロゴを刷新した理由(前編)
2020年9月16日、リディラバが11周年を迎えた。12年目に向かってスタートを切るにあたり、リディラバは新たな挑戦に向けたリブランディングとして、ロゴとステートメントを一新することを決定。
それに至るまでの経緯や、新たなロゴとステートメントに込められた意味について、同日にオンライン配信した「リディフェス2020」のカウントダウンイベントで語った。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた9/16のライブ勉強会「リディラバが、変わる。新ブランドで臨む、課題解決へ次なるチャレンジ」の内容をもとに記事化した前編です。
NEWPEACE代表/3.11を契機に博報堂から独立。シェアハウスブームを起こし、全国各地に立ち上げる。2015年「20世紀から解放し、多様性を爆発させる」をビジョンに掲げ、NEWPEACEを創業。SNS時代のコミュニケーションメソッドとして「Visioning」を提唱。自動運転・シェアリングエコノミー・SDGsなどの社会浸透を仕掛ける。2017年より自社でコミュニティ事業を展開。現在コミュニティ支援システムを開発中。
The Breakthrough Company GO /クリエイティブ・ディレクター。戦略を含めたコミュニケーション全般の設計から、表現までの全てを手がける。近年は企業のブランディングや新規事業開発にも従事。クリエイティブの力で社会をポジティブに変えていくことを信念に、プロボノを含め様々なアクションを展開。Cannes Lions、Spikes Asia、PRアワードグランプリ、2014年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリストなど。二児の父。調理師。
2013年、株式会社 博報堂入社。2018年よりスタートアップ、フリーランスを経て、2019年the Breakthrough Company GOに参画。博報堂在籍時はNISSAN、Intel、Airbnb、KOSE、CCJCなどを担当。現在はスタートアップや企業の新規事業のブランディング~プロダクトのUI、メディアへの広告展開まで、デザインとアートディレクションを一気通貫して行っている。ACC Creative Award 2017ゴールド受賞。Tokyo Midtown Award 2016 グランプリなど
3人のトップクリエイターが参画し、1年前から構想
安部敏樹 初めにみなさんの経歴と、今回のプロジェクトに関わるようになった経緯をお話しいただければと思います。
高木新平 僕が代表を務めるNEWPEACEは、「ビジョニング」といって、未来への希望をかかげて挑戦していく人のためのブランドづくりをしています。
僕自身は、いろいろな企業のビジョンを考えたり、ソーシャルイシューを起点にした領域の企業のブランドづくりをやったりすることが多くて。その中で安部くんやリディラバと出会い、参画させていただきました。
(写真 高木新平さん)
安部 昨年の8月7日に何かの飲み会で一緒になって、二次会に行かずにコーヒー屋で話したことがこのプロジェクトのスタートですよね。
高木 そう、だから構想から1年ぐらいかかってるんですよね。
砥川直大 僕がクリエイティブディレクターとして勤めるBreakthrough Company GOは、変化と挑戦という言葉の下、スタートアップのブランディングや企業の新規事業開発などをお手伝いしています。
僕自身は、仕事で会得してきた「伝えること」や「広めること」を何かしらの形で社会に還元したいという思いがあり、震災以降からNPOや市民運動の手伝いをしてきました。
その中で昨年、リディラバが運営するカンファレンス「R-SIC(現リディフェス)」に登壇させていただき、リディラバや安部さんとつながりを持ちました。その際に今年のリディフェスをどういう形にしようかと相談いただき、そもそもリディラバをどうするんだというところで、このプロジェクトに合流しました。
小川貴之 僕はデザイナーとして最後に参画しました。社会やビジネスにデザインを取り入れていったときに、それらがどう大きくなっていくのか、どう変わっていくのかを見たいと思って、デザインの仕事をしています。今回、そのコアなところで直球を投げているリディラバの仕事に携わらせていただき、すごく縁を感じています。
(写真 小川貴之さん)
安部 小川さんはこのプロジェクトで初めてご一緒しましたね。本当に難しいオーダーにお答えいただきました。パノプティコンとか空海とか…デザインに落とし込むには相当、難易度が高かったと思います。
思い入れの強いロゴを変えることにした理由
高木 最初に安部くんとは、リディラバをもっと社会課題のプラットフォームとして広めていきたい、そのためにはどうすればいいかという話をしていたんですよね。でも、僕の中ではいろんなものがうまく繋がっていないなと思ったんです。
他の企業でも同じなのですが、創業者や経営者の言葉の抽象度が高いと、社員にうまく伝わっていなかったり、理解に濃淡が出ることがあります。
リディラバも、フェスやリディラバジャーナルなど活動が多岐にわたっていく中で、それぞれが有機的につながっていくためには、安部くんの思いを一旦きちんと言語化し、共有できるものにしておかなければならないと思いました。
それで今のいくつもある事業の全体像から整理し始め、そもそものコーポレート・アイデンティティも整理しようということで、ブランドリニューアルの話になっていったんですよね。
安部 そう、もとは全然ロゴを変える話じゃなかった。そもそもこのロゴは、私がリディラバを立ち上げた当初からある思い入れの強いものなんです。
毎日着ていた最初のロゴTシャツを部屋に飾る安部。(写真 安部敏樹)
リディラバは、2009年の9月16日が最初のスタッフ説明会で、そこから30人くらいのメンバーと始まりました。恥ずかしながら、当初のメンバーは宴会好きな人が集まったような「安部と愉快な仲間たち」という感じ。その中でも一緒に酒を飲んで、私と同じ熱のある話をしていた幼馴染みがいて。
彼ともっと社会を良くしたいという思いを一通り語った後に、この語り自体は非常に青臭いけれど、青臭い思いを形として残しておかなければ、いずれ俺たちもそういう青臭くない(=理念や理想を第一に考えない)ような、かっこ悪い大人になるんじゃないかという話になりました。
その話を受けて、彼がロゴとして考えてくれたのが、前の時計ロゴの最初のコンセプトでした。
これは、人の一生を24時間に例えたときに、当時21歳の私たちはだいたい朝の7時25分にいるということで、まさに活動を始めたときの我々の年齢を表しています。最初はロゴとしての形が整っていなかったのですが、1~2年してきちんとしようという話になり、仲良くしていた友人のデザイナーに今の形にしてもらいました。
このロゴは、平均寿命まで生きることを前提につくられています。この先の長い時間をかけて社会の無関心を打破していこうという思いが表現されている。
でも、このロゴをデザインしてくれた友人は、ロゴ完成の後、26歳で乳がんになり、30歳を目前に亡くなってしまいました。がんのことがわかってからなお、彼女とはいろいろなことを対話するようになりました。
彼女はデザイナー、つまり、「つくる人」だから、死ぬまでの最後の時間をつくり手として生きていきたいと話していました。
生物としての寿命はいずれ終わってしまうけれど、つくったものが残って忘れられなければ、それは第二の人生を生きるという行為に近いと。だから、このロゴを使うということは、彼女のつくり手としての人生をより長いものにしていくという意味もあったんです。
この時計ロゴは、これをつくってくれたデザイナーの第二の人生を背負うということと、創業の時の思いという二つの点で、非常に大事にしてきました。
写真中央がデザイナーの広林依子さん。(株式会社 GARDENさん 提供)
砥川 話を伺う中で、もっといろんな人を巻き込んでつながるためには、安部さんの抽象度の高い話を言い換える、わかりやすい言葉が必要と感じていました。
どこかのタイミングで、ロゴに対する安部さん個人の「想い」から企業の「意志」としての考え方へ昇華させていったほうが良いのではと提案したのが、ロゴのリニューアルに至るきっかけでしたね。
それにしても、安部さんは毎回ロゴの入ったTシャツを着て現れるので、強い思い入れがあることは知っていたのですが、後からデザイナーさんの話を聞き、これはすごいことを始めたんだなと思いましたね。
(写真 砥川直大さん)
安部 時計ロゴには、正直非常に愛着があります。一方で、創業の話もデザイナーのこの話も、私が語れば語るほど、ほかの人は語り得なくなっていくという思いもありました。
リディラバが目指すのは、すべての人たちが無理のない形で社会に関心を持ち、誰かが問題の当事者になったときに救われやすい、生態系のような、セーフティネットのような状況をつくること。
それは多くの人の主体性によって成立するものだと思います。私だけが主体性を発揮するのではなく、私が友人たちと一緒につくってきたストーリーのようなものを、今後はより多くのみなさんと一緒につくっていかなければいけないと思ったことが、ロゴを変えることにした大きな理由ですね。
・・・後編「リディラバ12年目の新たなスタート――新たなロゴに込められた意味」に続く
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