子どもの最期を看取る時(前編) ――臓器提供をめぐる家族と医師の苦悩と葛藤
子どもの最期を看取る時(前編) ――臓器提供をめぐる家族と医師の苦悩と葛藤
人はいつか必ず死ぬ。しかし、ある日突然、年端もいかない我が子の命がもう助からないと告げられたら、家族はどれほど混乱し嘆き悲しむことだろう。親より先に子どもが逝く。世の中で最も理不尽なできごとの一つである。
一方で、失われる命が遺してくれた臓器のおかげで救われる命もある。一縷の望みをつないで待っている難病の子どもたちがいるのだ。
富山大学附属病院小児科の種市尋宙医師は、小児の救急と集中治療の現場で多くの重篤な子どもたちに出会い、彼らの生と死に直面した家族の葛藤を見てきた。
前編では、6歳未満としては日本初の小児臓器提供に携わった種市さんの視点から、日本での臓器提供をめぐる状況を見ていく。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた7/3のライブ勉強会「子どもの最期を決める権利、決めない権利。日本初の小児臓器移植に携わった医師が語る、家族・医療者それぞれの苦悩と葛藤」の内容をもとに記事化した前編です。
1973年新潟県生まれ。富山大学附属病院小児科診療准教授。1998年富山医科薬科大学医学部卒業 同大小児科入局。2007年富山大学博士課程修了。国立病院機構災害医療センター救命救急科(東京都立川市)勤務を経て、2009年より富山大学附属病院小児科勤務。小児科専門医、集中治療専門医、日本小児救急医学会代議員、日本DMAT隊員。
脳死を家族にどう伝えるか
急な病気や不慮の事故で我が子が脳死に陥った時、それが「死」だとは、家族には受け入れがたい。
心臓はまだ動いている。涙が流れたり鳥肌が立ったり、わずかに身体が動いたりすることさえある。治療を続ければ助かるのではないかとすがるような気持ちだろう。
そこで医師は家族に伝えなければならない。延命治療が子どもを傷つけることもあり得ると。
「我々はプロだからこそ、しっかりと判断して情報提供する必要があります。最終的な決断は家族がするわけですが、悪い方向でご家族に背負ってほしくないんです。『決めたのはあの医者だ』と思われてもいい」と種市さんは語る。
少なくとも家族が納得していない状況で無理やり決めることはしない。医師として説明を尽くした上で、家族の意向に沿って、子どもを傷つけないかたちで延命治療を続けることもある。
そこで奇跡が起きることはないのか。
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