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自治体と進めるMaaS戦略――地方創生におけるMaaSの可能性(後編)
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地方創生や地方活性化という文脈で、「MaaS(※)」という概念を活用した課題解決が期待されている。

 

※MaaS:「Mobility as a Service」の略称で、自動車や鉄道、バス、航空など、あらゆる移動手段を統合して移動の最適化を図ることで、快適な移動を実現しようとするもの

 

MaaSへの期待や国内事例を紹介した前編に続き、後編では、自治体との連携における課題について、MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐さんにお話を聞く。
 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2/24のライブ勉強会「地方創生vol.5 買い物難民、災害、交通渋滞に革命!?~MaaS戦略から探る地方創生の行方~」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<日高洋祐さん>
一般社団法人JCoMaaS 理事・事務局長、MaaS Tech Japan 代表取締役。2005年、鉄道会社に入社。ICTを活用したスマートフォンアプリの開発や公共交通連携プロジェクト、モビリティ戦略策定などの業務に従事。14年、東京大学学際情報学府博士課程において、日本版MaaSの社会実装に向けて国内外の調査や実証実験の実施により、MaaSの社会実装に資する提言をまとめる。現在は、MaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う。国内外のMaaSプレーヤーと積極的に交流し、日本国内での価値あるMaaSの実現を目指す。共著に『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(日経BP社)がある。

MaaSの取り組みの有用性を示すには

MaaSのサービス展開においては、自治体と手を組んで実施していく場合も多い。たとえば、フィンランドの隣国のエストニアでは、国が公共交通機関をすべて無料化したという事例がある。

 

エストニアは、市街地から離れたエリアまでバス網が敷かれており、地方に分散して住んでいる人たちがバスに乗って街に行き、ショッピングや食事などを楽しんでいた。

 

しかし2013年ごろ、リーマンショックの影響で国が不景気になり、GDP(国内総生産)が約20%低下。人々は節約のために市街地に行かなくなり、消費も落ち込んだ。

 

消費が落ち込めば、従業員に仕事を辞めさせなければならず、その人たちも地方に引きこもってしまう。物は売れず、雇用は減り、人は動かない。経済は負の連鎖に陥った。

 

そこで国は、バスをはじめとする公共交通機関を無料化。経済状況は変わらなくても「街にでもふらっと出てみようか」というように、国民の交通の費用負担と消費喚起をリバランスさせることを目的とした。

 

街に出れば、おいしそうなパンや好みの服が売っていたりして、買おうかという気持ちが芽生える。そうして消費が生まれれば、再び雇用も生まれ、経済は活性化していく。

 

(写真AC)

 

一方で、たとえば民間のプロジェクトが自治体を巻き込み、費用などを補助してもらう場合は、MaaSによってどのような効果が上がるかを証明し、取り組みの有用性を示す必要がある。

 

日高さんが取り組んでいる広島のプロジェクトでは、バスの利便性向上のため、現在地から目的地までドアtoドアで直接送迎をする「デマンドバス」の導入検証を行っている。

 

その効果を計測するために、消費動向を示すデータを紐づけて、商店街等の売上がどれほど上がる可能性があるか調べているという。

 

バスの利用と商店街での買い物を具体的に紐づけようとすると個人情報が必要となるため限界はあるが、「これが証明されれば、商店街や商工会議所が『広告宣伝費をかけてチラシを配るよりもデマンドバスを走らせることに投資したほうがいい』と考えるようになるかもしれません」と、日高さんは述べる。

 

移動と消費に関する似たような事例は観光地であるハワイのホノルルでも行われており、無料のトロリーバスがブランドストリートやアウトレットモール、ホテルなどを行き来している。

 

無料だからこそ「積極的に移動しよう」という気持ちが起きて、結果的に観光客はたくさんの買い物をする。日高さんは「アクセスの良さが向上すると、消費を促しやすくなります。今は電子決済アプリと連携すれば簡単に効果の証明ができますし、消費者が思わずお金を使ってしまうような場所に行くようにすれば、収益を上げることができるでしょう」と話す。

課題解決には、複数の分野を俯瞰できる人材が必要

MaaSの取り組みは、交通だけでなく、経済や福祉、子どもの教育など、複数の分野と関わってくる。こうした分野の課題を解決するためには、行政と連携する必要性が出てくる。

 

しかし、行政の組織や予算は縦割りになっていることから、連携に苦労することが多いと日高さんは話す。

 

「たとえば海外におけるスマートシティの取り組みには、3~4分野に精通した人が中心に携わり、分野を横断した課題解決を提案します。

 

日本にはそんなにたくさんの分野に深い知見を持つ人はいないかもしれませんが、MaaSを知っている人が地域に入っていき、新たな取り組みを提案できるようになっていけばいいなと思っています」

 

(写真 日高洋祐さん)

 

国においても似たような課題はある。日高さんは「省庁間の力関係などにより『経済と公益性、どちらを優先するのか』という議論が起こって、それが障害になることがあります」と話す。

 

それでもMaaSの施策を推進するには、国民に対してアンケートなどを実施し、「子どもの送迎に困っている」「適切な移動手段がない」といった課題を可視化し、MaaSの必要性を示すことが大切だという。

 

また、未来に長く続いていくMaaSを実現するには、ビジネスプロデュース力を持った人材の存在も欠かせない。

 

「社会課題を解決したいという思いだけでビジネスプロデュース力がなければ、結局はボランティアのようになってしまい、解決できる課題の量が減ってしまうのではないかと考えています。

 

課題解決ができる専門知識を持った人材とビジネスプロデュース力を持った人材がタッグを組んで、課題解決型のビジネスとしてスケールさせていくこと。それがMaaSの取り組みを広げていく上で必要なことだと思っています」
 

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