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157
社会課題×映画
2021/7/28(水)まで無料公開
鑑賞後の「対話」が解決の第一歩になる――プロデューサーと監督が語る「映画が伝える社会課題」(後編)
2021/7/28(水)まで無料公開
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157
社会課題×映画
2021/7/28(水)まで無料公開
鑑賞後の「対話」が解決の第一歩になる――プロデューサーと監督が語る「映画が伝える社会課題」(後編)
2021/7/28(水)まで無料公開

映画作品を通じて社会に問題提起をする手法はあるが、多くの人の共感を呼ぶ作品をつくったり、たくさんの人に観てもらったりするのは決して簡単ではない。

 

精神障害の妹を持つ姉を主人公とした「きょうだい(※)」がテーマの映画「ふたり〜あなたという光」が特徴的なのは、作品を観て終わりではなく、その作品から何を学び感じたかについて共有する場を設けていることだ。

 

後編では、本作品のプロデューサーの三間瞳さん、脚本・監督を担当した佐藤陽子さんに、映画作品で社会課題を伝えることの意義や課題、映画制作をするにあたって意識した点、鑑賞だけでなくその後の「対話」に力を入れている理由などについて話を聞いた。
 

※きょうだい:障害のある兄弟姉妹を持つ健常者

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/6/17のライブ勉強会「映画が伝える社会課題」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

 

<三間 瞳さん>
映画プロデューサー/社会起業家。青森県出身。一橋大学卒業。BP&Co.株式会社 代表取締役。
自身の5歳下の実妹が統合失調症と診断された15歳の頃から、「障がい者」を取り巻く社会課題に関心を持つ。一方、自身もNY留学中にパニック障害になったことをきっかけに、障がい者本人も障がい者の家族も含めた全ての人が「情熱を解き放つ社会」を創ることを理念に掲げて活動している。初プロデュース作品である「きょうだい」を主役にした短編映画『ふたり〜あなたという光〜』は、制作費を募集するクラウドファンディングで531名の方に支援され、204%の600万以上を達成、各種メディアにも取り上げられるなど注目を浴びる。

<佐藤 陽子さん>
映画監督。2019年4月 ENBUゼミナール監督コース卒業。
女性×働くに興味があり、2013年~2017年まで働くママのロールモデルを紹介する勉強会を主催。より多くの方に情報を届けるために、映像制作という手法に切り替えることを思い立ち、2017 年から映像制作を学び始める。 興味のあるテーマはジェンダー、夫婦のパートナーシップ、女性×仕事など。

非当事者だからこそ気づき、表現できることがある

今回、脚本・監督を務めた佐藤さんは身近に障害者の方がいない「非当事者」だ。その立場から作品をつくるうえで意識したことや、苦労した点はどのようなところだったのだろうか。

 

「まず、当事者ではない自分が作品をつくることで、作中の表現などで当事者の方々を傷つけてしまうのではないか、という不安はありました。

 

でも、映画を通じて『きょうだい』が抱える社会課題を伝えることが目的なので、障害のある人がその家族にどのようなインパクトを与えているのかというのは、映画で表現をするうえで避けてはいけないことだとも考えていました。

 

今回の脚本は、三間さんの実体験に加え、複数のきょうだいの方々や福祉関係者などに取材をしたエピソードがベースとなっています。三間さんにはご自身の体験を細かく話していただいたのですが、自分の人生をさらけ出してくださった勇気と覚悟を受け止め、それをしっかりと作品のなかで表現したいと思いました。

 

あとは、三間さんという『当事者』と、私という『非当事者』が一緒に手を組むからこそ伝えられることが、絶対にあるはずだという想いもありました。
 

当事者はいろんな感情を持っていたり、それこそ社会に対する怒りもたくさんある。一方で、非当事者の立場だからこそ見えることもあるし、自分と同じような人たちに気づきを与えることができるのではないかと考えながら、制作に取り組んでいました」(佐藤さん)

 

(写真 佐藤陽子さん)

 

今回の映画は、きょうだいが抱える問題のなかでも「結婚」がメインテーマとなっている。今後、きょうだいの別の問題をテーマにした続編も構想しているそうだが、第一弾として、このテーマをメインにした理由はあるのだろうか。

 

「私もそうですが、障害がテーマの映画を観ても、どこか『自分とは関係ない話』という他人ごとの意識があって、当事者意識が上がらない人も多いと思うんです。

 

でも、たとえば結婚を考える相手ができたとき、パートナーに障害のある家族がいるというシチュエーションは、現実の世界でも起こり得ますよね。結婚をテーマに置くことで、身近に障害者がいない方でも、当事者になる可能性を感じながら、ストーリーに没入してもらえるのではないかと考えました」(佐藤さん)

映画作品だからこそのハードル

本作品は、配給会社が行う劇場での期間限定の上映ではなく、作品を上映したい、観てほしいと感じた人が上映会を主催する「自主上映」という形を取っている。

 

観た人たちとの対話やつながりなどが生まれやすくなる反面、問題提起のためにメッセージを込めた作品をつくっても、多くの人に観てもらえるまでにはある程度の時間を要するという面もある。

 

「まず、どんなにいい映画を撮ったとしても、それを一般公開するハードルは高いという点はあります。ですが、短編作品などを対象とした映画祭に出品して賞を取ることができれば、上映するうえでの交渉の強みになる。この作品も、映画祭に出品する予定です。

 

一方で、映画祭に出品する作品は『一般公開されていないもの』という決まりがあるので、受賞結果が出るまでは、たとえばYouTubeなどで公開することも現実的にはむずかしい。

 

もちろん、最終的には多くの人に作品を届けることを目指していますが、すぐに大勢の人たちに観てもらえるわけではないという部分は、どうしてもありますね」(三間さん)

 

今回、きょうだいという社会課題を伝えるためにふたりは映画という方法を選んだが、社会課題を映像で伝える手法としては、フィクションの要素を加えず実際のできごとを記録する「ドキュメンタリー」もある。

 

しかし当初から、フィクション映画作品以外の選択肢はなかったという。

 

「(ドキュメンタリーではなく)フィクション映画というかたちにしたのは、そういった映画が大好きだったということもありますが、『エンタメ』であることにこだわりたかったからなんです。

 

もちろん、ドキュメンタリーにもすばらしい作品はたくさんあると思います。でも、ドキュメンタリーはリアルな人間を写しますが、フィクション映画は実在の人間ではなくて創作上の人物であるぶん、気負わずに観ることができるという魅力がある。ストーリー性があり、つくりこまれた映像やプロの俳優に演じてもらうということに、すごく意味があると考えました」(三間さん)

 

佐藤さんも「観た人が登場人物に自分を重ねて感情移入できるのは、フィクションならではの魅力」という考えを持っている。

 

(pixabay)

 

鑑賞後の「対話」における意義

本作品の特徴の一つに、観終わった後、鑑賞者同士の感想の共有を通じて社会課題解決に向けた対話を促すことを目的とした「シネマローグ(シネマ×ダイアローグ)」に力を入れている、という点がある。

 

作品を観てきょうだいの問題を知ってもらうだけではなく、その後の「対話」を大切にしているのはなぜなのだろうか。

 

「今回の映画は社会課題を解決する手段の一つですが、観た人が何を感じたかを言葉にして『自分ごと』にしてもらうところまでを目指しているんです。

 

映画を観た後、せっかく作品からいろんなことを感じたのにそれを言葉にする機会がなく、一人でモヤモヤしたまま終わる人も多いんじゃないかなと、以前から感じていました。

 

自分が感じたことを言葉にしてほかの人と共有するという経験をしてもらうことで、今後の人生における行動が変わったり、気づきを深めていったりできる効果もあると考えています。

 

当事者であるきょうだいの方のなかには、当時のつらい記憶がフラッシュバックしたりして、映画を観てすぐは感想を言える状態にないという方もいるかもしれません。

 

でも、さまざまな気持ちをご自身のなかで消化して、たとえば映画を観た一週間後や一ヶ月後などにシネマローグに参加していただたくのも、とても良いことだと考えています。そのときにほかの人の意見を聞くことで、自分では気づかなかったことも言語化できるのではないかな、とも思っています」(三間さん)

 

(写真 三間瞳さん)

 

センシティブな題材の映画だからこそ、シネマローグではグランドルールを共有したり、モデレーターが入って進行したりするなど、心理的安全を確保した場で、一人ひとりが感じたことを言語化しやすい環境になるよう配慮している。

 

「シネマローグのなかで興味深いのが、同じ一つのシーンについて語るときでも、観る人によって全然解釈が違うということ。

 

自分で感じたことを言語化して感想を言うというファーストステップだけも、きょうだいという社会課題に対するアンテナが一つ立つことになりますよね。その積み重ねで、少しずつ変化が起きていけばいいなと期待しています」(佐藤さん)

 

最後に、きょうだいという社会課題をテーマとした作品を通じて世の中の人たちに伝えたいこと、社会に起こしたい変化について聞いた。

 

「この映画を観たりシネマローグに参加してくれたりした人たちが、障害者の方のことだけでなく、そこから一歩進んだところまで考えられるような優しい気持ちを持つことができたら、この映画は成功といえるのだと思っています。

 

たとえば障害のある人に出会ったとき『この人にもきょうだいはいるのかな』『いるとしたら、どんなことを感じているのかな』と、興味を持つきっかけになってもらえたらいいなと思います」(三間さん)

 

「今回の映画制作をきっかけに知ったのですが、世の中には、自分がきょうだいであることを周囲に言えないという人も少なくないそうです。実際に、私の身近にもそういう友人がいました。もしかしたらみなさんの身近にも、きょうだいの人がいるかもしれません。

 

この作品を通じて、私が三間さんの実体験を聞いたときのような衝撃や『世の中にはきょうだいという人がいて、こういう問題や生きづらさを抱えているんだ』ということを知り、ご自身の想像力を一つ、増やしてもらえたらと思っています」(佐藤さん)

 

※映画「ふたり〜あなたという光」について、詳しくはこちら

 

編集長からのメッセージ
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