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193
ゼブラ企業
2021/10/21(木)まで無料公開
「ゼブラ企業的考え方」をさらに広めていくために――「利益」と「社会貢献」の両立を目指すゼブラ企業(後編)
2021/10/21(木)まで無料公開
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「ゼブラ企業的考え方」をさらに広めていくために――「利益」と「社会貢献」の両立を目指すゼブラ企業(後編)
2021/10/21(木)まで無料公開

利益だけを追求せず、社会貢献との両立を目指すゼブラ企業。ただ社会貢献を目指す際には、利益の追求とは異なる難しさが存在する。
 
後編では、ゼブラ企業の啓蒙・支援に取り組む陶山祐司さんに、社会課題をどう捉えるべきなのかという見方や、ゼブラ企業の今後の展望について話を聞いた。

 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/9/22のライブ勉強会「100年続く持続可能なビジネスとは〜ゼブラ企業のあり方から考える〜」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<陶山祐司さん>
Zebras and Company 共同創業者 / 代表取締役。
(1) 社会課題解決と事業成長の両立、(2)株主のみならずステークホルダー全体への貢献、(3)短期的な時価総額向上よりも長期的な価値創出拡大を行う「ゼブラ企業」の普及拡大に取り組む。
元々は経産省で3.11を踏まえたエネルギー政策見直し、電機メーカーの競争力強化を担当。その後、VC/新規事業のコンサルタントとして、100億超の資金調達をした宇宙開発ベンチャーやIoTベンチャーの事業戦略策定、資金調達、サービス開発、営業の支援や政策提言等を実施。2018年に独立し、SIIF(社会変革推進財団)におけるインパクト投資の促進や、ガバメント・リレーションズの普及に従事。2021年にZebras and Companyを共同創業。

「大企業しか見ない」省庁時代

陶山さんは経済産業省の職員時代を振り返り、「長い時間軸と可能性が見えていなかった」と口にする。
 
「役人は大企業しか見ない、という傾向はあると思います。売上が数千億円に上る企業ばかりと意見交換をしますし、自分が経産省にいた2014年頃まではユニコーンを目指すベンチャー企業すらあまり相手にしなかったのです。
 
たとえば『5年後に1万人の雇用を増やしうる企業はどこか』と考えるとき、いま0人の企業が1万人の雇用を創出するのは大変ですが、すでに10万人を抱える企業が11万人に増やすとなると、1割増やせばいいだけ。そうすると、そちらの方が簡単に思えます。
 
そういう考え方をしていると、『一社の中小企業と付き合っても国民全体を幸せにはできない』と考えてしまいがちです。この考え方には一面の真実がありますが、大企業ばかり見ていると行き詰っていきます」

 

(写真 陶山祐司さん)

 
その反省として、いまは企業の成長可能性に目を向ける。
 
「最初は小さくても、いい仕組みをつくると何倍にも成長してきます。メルカリは設立10年足らずで時価総額1兆円を超える規模になりましたし、楽天の通信事業のチャレンジも事業を10倍に伸ばしていく可能性があるとわくわくします。
 
サイバーエージェントも、僕が経産省にいたころはほぼ注目されていなかったし、いまも省内ではそんなに注目されていないと思いますが、10年後にはAbemaTVがさらに成長して海外のメディア企業を買収し、世界に対する影響力が大きくなる可能性があると思っています」

長期的な目線で挑戦する

「ゼブラ企業が目指す『社会課題の解決を目的とした事業』が難しいのには、いくつか要因があります」と、陶山さんは話す。
 
「まずはステークホルダーが多いこと。言い方を変えると不確実性が大きいということです。みんなが賛同しないと社会課題は解決しないというときに、みんなが賛同してくれるかどうかは分かりませんよね。
 
もう一つは時間軸が長いこと。一般的に、金融における理論では時間軸が長いほど不確実性が高いと考えます。長期的な目線で挑戦することは難しいことだというのが金融における一般的な考え方であり、そうした事業に投資しにくい環境にあります。
 
一方で、この点に関しては、現実と少しズレている側面もあると考えています。
 
たとえば2015年にビル・ゲイツ氏は『今後世界が直面する出来事の中で、最も多くの死者を出す恐れのあるものは戦争ではなく、感染症のパンデミック(世界的大流行)だ』と言っていました。首都圏における震災も、いつ起きるかはわかりませんが、30年以内に70%の確率で起こるとされています。
 
また、現状の朝鮮半島や台湾環境、その他アジアの情勢を鑑みるに、日本はいずれ難民問題に向き合わなければいけないタイミングが必ず来ると考えています。
 
そのため、難民問題に向き合って、普及啓発して、問題に対応するプログラムを開発していこうという事業に対しては応援することができないかという問題意識を持っています。
 
時間軸の不確実性があるものの、高い可能性で必要になる事業が世の中にはあると思っており、一律的に、長い時間軸の事業は不確実性が高いという金融の考え方には違和感があります」
 

(写真AC)


こうした新規事業に関してはリスクがつきものだが、陶山さんは「失敗しないことを前提に進めていたら、世の中は変わらない」と話す。
 
「たとえば、単純化していうと、10社に1000万円投資したとして、そのうち1社でも10倍に成長し、社会的にインパクトがある会社が出てくれれば、10社中9社が失敗しても金融的には機能するわけです。
 
金融では、リスクがあるからリターンがあると考えます。もちろん、失敗すると傷つく人が出てくる可能性はあるので失敗はしない方がいいとは思います。
 
ただ、2回に1回は失敗するかもしれない、失敗したところで現状以上にマイナスにならないというのであれば、リスクをある程度とりながらチャレンジすべきだと思います」
 
陶山さんは「本当は、一つの事業者が責任とリスクをすべて負う必要はない」と強調する。
 
「うまくいったらいろんな人が真似して横展開していけばいい。ダメだったときにも、行政などほかの主体が、『ダメになったらこう支援する』いうところまでセットで提示できると新しい取り組みが始めやすいですよね。そこは僕たちが具体例を含めて考えていきたいところです。
 
社会課題の解決と一口にいっても、そこにはいろいろな複雑さがあります。どういう複雑さや不確実性があるかを丁寧に考えた上で、経済的・人的支援をしていくことが必要です」

世の中の方向性は「ゼブラ企業」

「世の中の流れとしては、間違いなくゼブラ企業的考え方に向かっていると感じています。若い人ほど社会課題への問題意識を強く持っていますし、ゼブラ企業に共感する動きも出てきています」と陶山さんは話す。
 
「利益の最大化ではなく、社会課題解決をしっかりやってかなくちゃいけないという風潮になるでしょうし、株主の方ばかりではなくいろんなステークホルダーを見るようになる、金融の在り方も多様化して挑戦しやすくなる、ということは確実に実現すると思っています」
 
現在の社会課題に共通して言えることとして、陶山さんは「そもそも現状がしっかり認識されていない」との問題認識をあらわにする。
 
「その中で僕ができることは、社会問題の解決に関心のある経営者や、彼らを支援する地域の金融機関を巻き込んで、社会課題の解決と経営と資本のベクトルを合わせていくことです。
 
現状でいいと思っている人は少ないんです。ただ、どうしたらいいか分からないと感じている人は多くいる。そんな人たちに、現状の課題や『こう変えたらいいんだ』ということを伝え、結果が出るまで寄り添う。 
 
具体的な行動としてどうしたらいいか分からないという人の意識や行動を変えていくことは一朝一夕ではできませんが、時間をかけながら自分たちも取り組んでいきたいと考えています。
 
また、ゼブラ企業の経営は、ふつうにビジネスをやるよりよっぽど難しいところもあります。お金を稼ぐということに加え、そこに世の中に意味があることをやっていくのはすごく難しい。
 
より多くの人が取り組んでいけるように、ゼブラ経営を理論化、体系化して、みんなが真似しやすくなるようにしていかなくちゃいけないと思っています」
 
陶山さんが立ち上げた「Zebras&Company」では、すでに1億円弱の資金調達を完了。今後は調達した資金をもとに、今後5年間のうちに1社あたり1000~2000万円の投資を4〜6社に対し実行する予定だ。
 
一般的なベンチャーキャピタルでは投資に回収期限が定められていることが多いが、Zebras&Companyは長期的な投資を実施。また、賛同者を増やすべく啓蒙活動への注力も続けていく。
 
陶山さんは、「ニッチだと思われている社会課題でも、取り上げ方を変えれば見方・捉え方は変わります」と語気を強める。
 
「たとえば子どもの貧困問題は、ここ数年、捉え方を変えて『これだけのインパクトがある』と見せることによって社会的なムーブメントになり、政府も動かざるを得なくなりました。
 
僕たちもそういう風なことができるような動きをしていきたいと思っています」

 

 

編集長からのメッセージ
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