近しい人との関係を継続させるために外とつながる――佐々木俊尚が考える「広く弱いつながり」とは(前編)
近しい人との関係を継続させるために外とつながる――佐々木俊尚が考える「広く弱いつながり」とは(前編)
閉鎖的な人間関係から飛び出し、さまざまな人とコミュニケーションを取ることで得られるものは多い。たとえば家庭という場から一歩外に出ることで、むしろ家族と良好な関係を保てることがある。会社を離れて社外の人と交流することで、受けられる刺激がある。
逆に人間関係が閉鎖的になってしまうと、他者と関わるなかで生まれた小さな悩みや生きづらさが周囲に可視化されず深刻化し、たとえばパートナー間・親子間であればDVや虐待など、大きな社会問題に発展する危険性がある。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんとリディラバ代表の安部敏樹が、自分のコミュニティから飛び出すことで生まれるものや、近しい人たちとの人間関係を良好に持続していくための考え方などについて語った。
※本記事は、「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた11/19のライブ勉強会「他者とのコミュニケーションを考える vol.1 人間関係を楽にする『広く弱いつながり』とは』の内容をもとに記事化した前編です。
1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで幅広く取材・執筆・発信している。総務省情報通信白書編集委員。「時間とテクノロジー」「そして、暮らしは共同体になる。」「キュレーションの時代」「広く弱くつながって生きる」など著書多数。Twitterのフォロワーは約78万人。
「弱いつながり」のほうが有益なことも多い
安部敏樹 佐々木さんは1988年から、毎日新聞社の社会部で12年近く記者をされていたんですよね。いわゆる大手企業の中の人間関係というのは、佐々木さんからどう見えていたのでしょうか。
佐々木俊尚 新聞社の場合、全国記事を担当しているとどうしても転勤が多くなるんです。当時はFacebookなどのSNSもなかったので、たとえば東京で友達ができても、それから地方に数年間転勤になったりすると、東京で築いた人間関係が切れてしまう。
そして、何度も転勤を繰り返して東京の本社へ戻ってくると「社内にしか友達がいないおじさん」になっているんですね。毎晩のように、同じメンバーで会社の近くの居酒屋へ行って昔の思い出話ばかりしている姿を見ていて「こんな50〜60代にはなりたくないな」と思って、30代のときに会社を辞めました。
安部 年功序列・終身雇用のような昔ながらの企業だと、いわゆる「起業家マインド」のようなものが育ちにくそうな印象もあります。
佐々木 大きな企業にいると、社内での「化学反応」が起きにくいというのはあると思いますね。
たとえばスタンフォード大学の社会学者であるマーク・グラノヴェッターは「ストロングタイズ(強い絆)」よりも、「ウィークタイズ(弱い紐)」を持っている人のほうが、転職に成功しやすいという研究を発表しています。
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