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温暖化対策
2021/2/23(火)
温暖化対策のためにはじめた間伐が引き起こしたこと――日本の林業のジレンマ(前編)
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温暖化対策のためにはじめた間伐が引き起こしたこと――日本の林業のジレンマ(前編)
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国土の3分の2を森林が占める日本。内閣府の世論調査では国民が森林に期待する役割として「山崩れや洪水などの災害を防止する」、「二酸化炭素を吸収することにより、地球温暖化の防止に貢献する」と回答した割合が高い。

 

自然災害の防止にせよ、環境保護にせよ、森林は私たちの生活を守ってくれる存在だ。一方、森林管理の担い手である林業従事者の減少や木材価格の低迷など、林業を取り巻く状況は厳しい。

 

今回は、江戸時代から続く速水林業の9代目で、日本林業経営者協会長も務めた速水亨さんに、地球温暖化対策として林業が果たす役割やその課題、消費者としてできることを聞いた。

 

<プロフィール>
三重県紀北町生まれ。速水林業代表、株式会社森林再生システム代表取締役。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学農学部造林学研究室研究生。「最も美しい森林は最も収穫高き森林」として“地域との共生、自然との共生”をめざす。2000年に日本初の世界的森林認証制度であるFSCを取得。平成30年度第57回農林水産祭天皇杯受賞(妻の速水紫乃さんと共に受賞)

適切に管理された森林由来の商品をどうやって選ぶ?

コピー用紙や段ボール、テーブルなど、私たちの身の回りには森林由来の商品があふれている。

 

一方で、その商品に使われている木を、誰がどのように育て、加工して製品化し、消費者のもとに運んできたのか。また森林の周辺に住む人々、生産や運搬に関わる人々の生活とはどういうものなのかを意識する機会はあまりない。

 

「日本の消費者は自分たちの消費が他国の人権や生態系にどう関与しているか、ということへの意識が低いように思います」

 

速水さんは、消費者である私たちの鈍感さを、こう指摘する。「鈍感さ」は森林破壊や周辺に住んでいる人たちの貧困にもつながっていると速水さんは言う。

 

では、消費者はどのように製品を選べばいいのか。

 

その基準の一つになるのが、FSC認証だ。FSC(森林管理協議会、国際本部ドイツ)は世界的な森林破壊を背景に環境団体や先住民団体、林業関係者などが立ち上げた組織で、1994年に正式に法人として発足。

 

環境保全や社会的、経済的な利益にもかなう森林管理を理念としており、適切に管理された森林から生産された木で作った製品を消費者まで届ける仕組みを作り上げた。森林の管理だけではなく、加工や流通過程で不適格な木材が混ざってしまわないよう、認証機関による審査が行われる。

 

FSC認証材を使うことは世界的な流れになっている。

 

2009年の米国オバマ大統領の就任式の招待状や2011年のイギリス王室のロイヤル・ウエディングの招待状にFSC認証紙が使われ、2010年のバンクーバー五輪でも選手村などにFSC認証木材が使われた。2016年のG7伊勢志摩サミットのテーブルや椅子なども速水林業のFSC認証木材で作られた。

 

2000年、速水林業は日本で初めてFSC認証を取得。以降、日本でも認証を取得する動きが広まっており、少し意識すれば、FSC認証の製品を選ぶことができる。コピー用紙や飲料用の紙パックなどのパッケージを見れば、認証マークがついているかどうかすぐに分かる。

 

「消費者まで届く仕組みを作ったということが大事なんです。森林を適切に管理している方は世界中にいますが、消費者が選択できる状況になかった。そこでFSCは選択できる環境を作った。そこに価値があるんです」と速水さんは強調する。

 

(写真 速水亨さん)

伐採されたまま植えられない日本の森林

国は2050年までに、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。

 

温暖化対策は温室効果ガス排出量を「どう減らすか」に注目が集まるが、排出したものを「どう吸収するか」も重要だ。

 

森林は光合成によりCO2を吸収しO2を放出する。そこでできた糖分が木の幹に降りていき、細胞分裂を起こして、セルロース(C6H10O5)になる。私たちはこれを木材として利用している。

 

(速水さん提供)

 

木材を燃やすことなく使い続ければ、CO2を空気中に放出することなく、固定し続けることができる。

 

(速水さん提供/日本人1人あたりの年間CO2排出量を吸収するのに必要な森林は、スギ14本分に相当するという)

 

木を使っても、燃やしたり腐ったりして最終的にはCO2を排出するが、その木を収穫した森林が再生していれば再び吸収されていく。適切な管理が行われていれば、森林を通してCO2が循環する仕組みができる。

 

また、森林は年月が経つにつれてCO2吸収量が減ってしまうため、CO2を吸収するためには、新たな植林も必要とされる。

 

ところが、日本では伐採後の森林の再造林が進んでいない。伐採後に再生していない土地は2017年度末時点で全国で約1万1000haにもなる。

 

「日本の森林は、伐られた森林の約75パーセントが植えられていない。非常に問題です」と速水さんは危機感をあらわにする。

 

速水さんの試算では、いま植えられていない森林に植林すると2050年には一般家庭168万世帯分のCO2排出量をその年に吸収できるという。これは、2020年の一般世帯総数の3.4%に値する。

 

森林は伐った後、ただ放置していてもすぐに樹木が生えてくるわけではない。「自然のまま木が生えてくる状態を作るのは難しくて30年以上かかる。枯れたり倒れたりした木がないと生えてきません」と速水さんは言う。

 

だからこそ人の手が必要なのだが、管理は進んでいないのが実態だ。ではなぜ再造林が進まないのか。

なぜ森林所有者は植林をしないのか

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