no.
137
認知症
2021/6/3(木)
「寄り添う」とはどういうことか――認知症に必要なケアのあり方とは(後編)
2021/6/3(木)
no.
137
認知症
2021/6/3(木)
「寄り添う」とはどういうことか――認知症に必要なケアのあり方とは(後編)
2021/6/3(木)

前編では、「こうあるべき」というある種のステレオタイプに基づくサポートが、「その人らしさ」を損なってしまうこともあると触れた。

 

私たちは長年の生活の経験から、たとえば「食事は箸を持って食べるもの」だとか、「夜は布団で寝るもの」だといったような無意識のバイアスにとらわれている。しかし、認知症ケアにおいては必ずしもそれが正解とは限らない。

 

後編では、その認識にもとづいて現場で活用されている方法論について、社会福祉法人福祥福祉会理事長の阿久根賢一さんに話を聞いた。

 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/4/28のライブ勉強会「認知症患者の世界観とどう向き合う?」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<阿久根 賢一さん>
1976年生まれ。大学では、社会福祉を専攻し、卒業後、高齢者施設にてソーシャルワーカーとして勤務。2002年より社会福祉法人福祥福祉会が開設する特別養護老人ホーム豊泉家北緑丘の立ち上げよりソーシャルワーカーとして参画。その後、施設長、運営本部長、副理事長を経て2017年より社会福祉法人福祥福祉会 理事長。
取得資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員
その他:社会福祉法人 天森誠和会 理事・一般社団法人 日本棒サッカー協会 理事長・青森大学 客員教授 等

認知症の人の生きる世界を見る

私たちは過去から現在、現在から未来といったように連続した時系列を認知し、その中で生きている。だからこそ計画や予測をしながら行動ができる。

 

しかし、認知症における認知機能の低下という中核症状は、この時間の流れを混乱させてしまう。自分がいま「いつのどこ」にいるのかがわからなくなってしまうことで、いま目の前で起こっていることが正しく理解できず混乱することがある。

 

阿久根さんはその混乱状態に対し、「ロジカルケア」と「ラテラルケア」という二つのアプローチを実践している。

 

まずロジカルケアは、混乱した時系列のなかにいる認知症の人の「その場その場の理解」を助けることで、本人の納得度を上げていくものだという。

 

中核症状の中には、記憶力の低下や判断力の低下、また言語理解が難しくなる「失語」や、道具などの使い方がわからなくなる「失行」、そして五感による認知・理解が難しくなる「失認」などがある。ロジカルケアでは、それぞれの症状に応じた代替的な伝え方で理解を支える。

 

ロジカルケアについて、阿久根さんはいくつかの事例を紹介する。

 

食事後、食堂から入居者が出た後に清掃をしているとき、一人の入居者が食堂に来て「いまはお掃除の時間ですよ」と伝えても、掃除のために上げてある椅子を下ろしてまた座ってしまうということがあった。

 

そこで、食堂の入り口に「ただいま掃除中です」という文字を書いた看板を出したところ、その人は納得して清掃時間に食堂に立ち入らなくなった。

 

そのほかにも、洗濯をする衣類をタンスに戻してしまったり、かばんの中に入れてしまう入居者もいた。「汗をかいて汚れたら着替えなければいけない」ということはわかるが、その後どうすればいいかわからない「失行」の例だ。

 

このケースでは、洗濯をする衣類を入れるかごに「脱いだ衣類はここにいれてください」と書いた紙と写真を付けたことで、このような行動は起こらなくなった。

 

認知症になると、新しくなにかを覚えることが難しい。ロジカルケアは覚えてもらうのではなく、その瞬間瞬間の理解を助けることがポイントなのだ。

 

(pixabay)

本人の見る世界に入っていく「ラテラルケア」

一方のラテラルケアは、「前提をなくして水平的・多角的に物事を考える」という「ラテラルシンキング」の考え方を応用したもの。ここでいう前提とは認知症でない人の持つ常識や固定観念を指す。

 

阿久根さんはラテラルケアについて「私たちがその方の世界に入っていくこと」であると言う。前編で紹介した、手づかみで食事をする人の行動を否定せず、無理に箸やスプーンをもたせることをやめたというのは、まさにラテラルケアの一つだ。

 

私たちが生活のなかで無意識に身に着けた「こうあるべきもの、こうするべきもの」という固定観念は、認知症の世界ではときに通用しない。それを押し付けてしまうことはある意味拷問ですらあると阿久根さんは言う。

 

ラテラルケアについて、ほかにもこのような事例があるという。

※リディラバ会員登録はコチラ
編集長からのメッセージ
×
CONTENTS
intro
ホームレス
no.
1
no.
2
若年介護
no.
3
no.
4
奨学金
no.
5
no.
6
差別
no.
7
no.
8
観光
no.
9
no.
10
子どもの臓器提供
no.
11
no.
12
都市とコロナ
no.
13
no.
14
ICT教育
no.
15
no.
16
産後うつ
no.
17
no.
18
宇宙
no.
19
no.
20
戦争
no.
21
no.
22
人工妊娠中絶
no.
23
no.
24
緊急避妊薬
no.
25
no.
26
テロリスト・ギャングの社会復帰
no.
27
no.
28
社会起業家
no.
29
no.
30
海上自衛隊
no.
31
no.
32
プロジェクト
no.
33
ソーシャルビジネス
no.
34
教員の多忙化
no.
35
no.
36
性的マイノリティ
no.
37
no.
38
出所者の社会復帰
no.
39
no.
40
ワクチン
no.
41
no.
42
薬物依存
no.
43
no.
44
性の悩み
no.
45
no.
46
リブランディング
no.
47
no.
48
少年犯罪
no.
49
no.
50
学校教育
no.
51
no.
52
LGBT
no.
53
no.
54
スロージャーナリズム
no.
55
no.
56
ソーシャルセクター
no.
57
no.
58
教育格差
no.
59
no.
60
メディア
no.
61
大人の学び
no.
62
no.
63
地方創生
no.
64
no.
65
家族のかたち
no.
66
no.
67
他者とのコミュニケーションを考える
no.
68
no.
69
地方創生
no.
70
no.
71
地方創生
no.
72
no.
73
非正規雇用と貧困
no.
74
no.
75
他者とのコミュニケーションを考える
no.
76
no.
77
家族のかたち
no.
78
no.
79
他者とのコミュニケーションを考える
no.
80
no.
81
地球温暖化対策
no.
82
no.
83
就労支援
no.
84
no.
85
1年の振り返り
no.
86
no.
87
動物との共生
no.
88
no.
89
行政のデジタル化
no.
90
no.
91
温暖化対策
no.
92
no.
93
動物との共生
no.
94
no.
95
地方移住
no.
96
no.
97
動物との共生
no.
100
no.
101
温暖化対策
no.
102
no.
103
組織論
no.
104
no.
105
キャリア
no.
106
no.
107
復興
no.
108
no.
109
コミュニティナース
no.
110
no.
111
MaaS
no.
112
no.
113
地球温暖化
no.
114
セックスワーカー
no.
115
no.
116
感染症とワクチン
no.
117
no.
118
大学生の貧困
no.
119
no.
120
温暖化対策
no.
121
no.
122
同性婚
no.
123
no.
124
フェアトレード
no.
125
no.
126
シェアハウス
no.
127
no.
128
飲食業
no.
129
感染症とワクチン
no.
130
no.
131
国際報道
no.
132
no.
133
社会的養護
no.
134
no.
135
認知症
no.
136
no.
137
入管法
no.
138
no.
139
国際問題
no.
140
no.
141
コミュニティ
no.
142
no.
143
コミュニティ
no.
144
no.
145
コミュニティ
no.
146
no.
147
吃音
no.
148
no.
149
コンサル×社会課題解決
no.
150
no.
151
いじめ
no.
152
no.
153
社会課題×事業
no.
154
no.
155
社会課題×映画
no.
156
no.
157
感染症とワクチン
no.
158
no.
159
社会教育士
no.
160
no.
161
山岳遭難
no.
162
no.
163
支援者支援
no.
164
no.
165
いじめ
no.
166
no.
167
ゲーム依存
no.
168
no.
169
トランスジェンダーとスポーツ
no.
170
no.
171
うつ病患者の家族
no.
172
no.
173
パラスポーツ
no.
174
no.
175
代替肉
no.
176
no.
177
弱いロボット
no.
178
no.
179
戦争継承
no.
180
no.
181
女性の社会参画
no.
182