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国際問題
2021/6/10(木) : 2021/6/17(木)まで無料公開
なぜいま、アフリカの貧困問題に立ち向かうのか――若きアントレプレナーが見たサブサハラ・アフリカ(前編)
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国際問題
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なぜいま、アフリカの貧困問題に立ち向かうのか――若きアントレプレナーが見たサブサハラ・アフリカ(前編)
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サハラ砂漠より南に位置する、通称サブサハラ・アメリカと呼ばれる国々は、世界で最も貧しい地域として知られている。

世界銀行の統計によると、1日2ドル未満で生活する貧困層は、世界全体では1995年から2015年にかけて19億人から8億人以下に減少した一方、サブサハラ・アフリカでは世界で唯一、貧困層が増加した。現在でも、人口の約4割もの人々が貧困の中にいる。 

そんな現状を変えようと、現地の農業のあり方を根本から改革しようと挑む日本人がいる。Degas株式会社代表取締役、牧浦土雅さんだ。1993年生まれの牧浦さんは現在、ガーナを拠点に小規模農家向けのサプライチェーン効率化事業を展開している。 

前編では、サブサハラ・アフリカで貧困がなくならない理由をはじめ、牧浦さんがアフリカで事業を行うに至った経緯や背景などについて、リディラバ代表の安部敏樹と対談を行った。 
 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/3/4のライブ勉強会『【国際問題を自分ごとにVol.1】「援助」は途上国を豊かにするのか〜理想論で終わらせない国際協力〜』で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<牧浦土雅さん>
Degas株式会社 代表取締役。2012年以降、東アフリカはじめ5ヶ国以上(ルワンダ、インドネシア、フィリピンetc)に住み、オンライン教育からヘルスケアまで幅広い事業を立ち上げる。国連と共同開発した人工衛星解析サービス“Next Space”の代表も務める。第28回国家戦略特別区域諮問会議に出席し、サンドボックス特区創設を首相・関係閣僚に、カルロス・ゴーン日産自動車会長(当時)らと共に提言。Wedge誌『平成から令和へ 新時代に挑む30人』等に選出。趣味は能楽と農学。 

「援助」だけでは貧困はなくならない 

 安部敏樹  まずお聞きしたいんですが、なぜサブサハラ・アフリカだけ貧困層が増大したんでしょうか。

 

 牧浦土雅  これまでさまざま国際機関が支援してきましたが、根本的に農家の生活を変えることができなかったんです(※)。
 
世界銀行によれば、現在サブサハラ・アフリカの最貧困層は、30年前の2億500万人の2倍以上にあたる4億1400万人を数える。
 
どうしても国際機関の仕事は地域と時間が限定的になってしまう上、数値的なKPIが求められます。たとえば農家に5年間で1万台のトラクターを配っても、その後トラクターのエンジンやハンドルまで、売れるものは全部売られてしまった、という話があります。 
 
農家にとって本当に必要だったのは、資材を配って、もっと多くの農作物を作って、バイヤーと繋げて、さらに輸送経路も提供して…ということだったのではと、よく議論しています。 

 

 安部  国際機関って、担当者のポジションがどんどん変わってしまうことがありますよね。公的資金を提供した後にそれを次に活かせる人が少ない、ということも影響しているんでしょうか。 

 

 牧浦  そうですね。それに国際機関などは基本的に「ギブ&テイクはダメ」という考え方のところが多いので、一方的な援助がなくならなかったんですね。 
 
また、農家もみんな「援助慣れ」をしているんですよ。 
 
2011年までは現地の銀行も農家に直接融資をしていたんですが、もう全員債務不履行みたいな状態になっちゃったんです。みんないい顔して「マイクロファイナンス」なんて言いますけど、金利が40%とかありましたから、返せない。 
 
そこにいろんな国際機関が来て、欧米のマネーをドカッと入れ込んでいきました。それで、「返さなくてもいいよ」という援助に慣れてしまいました。 
 
我々も支援に入って1年目、ある農家の農地に行ったんですけど、その農家だけ我々に対する返済率がすごく低かったんですね。 
 
私も彼らからすると「白人」の部類に入るので、私を見ると「何かもらえる」と、それで終わりだと思っちゃうんですね。なので2年目以降はなるべく現場に行かず、「あくまで現地の会社ですよ」という形にしました。

 

(pixabay)

使命感とビジネスチャンスの両方で課題解決に立ち向かう

 安部  そもそも、なぜアフリカに行かれたんですか。

 

 牧浦  もともと13歳まで日本にいて、中2のときにイギリスに留学しました。そのまま現地の大学に入学する前に、ギャップイヤーを使って東アフリカのルワンダに行ったのが、アフリカに関わった最初でしたね。 
 
ルワンダでは地方に行く機会が多かったんですが、とにかく農村だらけなわけですよ。 
 
ある日、農家の家の前に、売れ残りのとうもろこしが大量に包まれていたんです。でも後日、首都のキガリで国連の人たちと話をしたとき、「毎週、隣国のコンゴから難民が何十万人と流れてきているが、提供する食料が不足している」と言っていて。 
 
そこで需要と供給のミスマッチがあることに気づき、国連のトラックを使って地方に積まれている農作物を都市部の難民キャンプに届ける活動を半年くらいやりました。 
 
その後、イギリスの大学に入学したんですが、どうもピンと来なくて大学2年の春に中退。発展していく国の様子が知りたくて5年くらい東南アジアにベースを移し、またルワンダに戻りました。
 
すると首都はものすごく発展している一方、いざ都市部から一歩外に出てみると、そこは全く変わってなかったんですね。つまり、貧困層の問題が解決されてこなかった。 
 
それで、「これからはいまの援助とは抜本的に違う形での国際協力が大事なんじゃないか」と思うようになり、2018年、アフリカに戻ることを決意しました。

 

 安部  それはノブレスオブリージュという「富める者の義務」として思ってやっているのか、単純にビジネスチャンスがあるからやっているのか、どちらですか。

 

 牧浦  両方ですね。最初は「多くのものを与えられた者は多くのことを期待される」という精神はありましたが、突き詰めていくと、本当に自分がこの土地で頑張りたいんだったら事業としてやっていかないといけないよねと。 

「I love Africa」で来ているわけではないので、最終的には現地の人たちに会社を譲渡したいという思いはあります。営利企業なので、株も全部手放したいぐらいです。 
 
いまは私が先頭に立っていますが、いずれは現地の人たちが自分たちで回して、資本も調達できるという流れが出てくるのが理想形です。

 

(写真 牧浦土雅さん)

デジタル化でアフリカが変わる

 安部  アフリカではどんなことを実現したいと思っているんですか。

 

 牧浦  「change the world」ですね(笑)。 
 
たとえば、日本に輸入されるカカオの9割はガーナのものです。でも実は、日本の会社はカカオの買い付けをやっていないんです。
 
結局、さまざまな課題を抱えるカカオ農家に対して間接的な援助はできても、課題解決につながるような大きな影響力を持っていないので、直接的に農家の現状を変えることはできません。買い付けをしているカーギル社のような大きなプレイヤーでしか変えられない。

 

 安部  なるほど。「いまの流通の仕組みとビジネスの仕組みのところの真ん中に入り込んだ者が問題解決に強いインパクトを出せる」という話で、それがやりたいことなんですね。

 

(写真 安部敏樹)

 

 牧浦  最近は我々みたいなソーシャルビジネスを行う会社や、農家の生産性向上を目指す企業が出てきました。 
 
この背景にある一番大きな理由は、デジタル化だと思っています。最近は農家さんの中でも100人に1人ぐらいはスマートフォンを持っていて、外部の情報がたくさん入るようになってきました。 
 
すると買い手と簡単に繋がりやすくなります。またトラックとかの輸送手段も、いままでは周りの友達に「よろしく」みたいな感じだったのが、「あの人に電話をかけてプライスの交渉をして…」という風に広がっていっています。 
 
それでビジネス的なマインドセットが根付き始めてきました。ようやく抜本的に変えるチャンスが来たな、と感じているところです。

 

 

・・・後編「貧困の連鎖から脱却するために必要なことーー若きアントレプレナーが見たサブサハラ・アフリカ」に続く

 

編集長からのメッセージ
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地方創生
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温暖化対策
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動物との共生
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地方移住
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動物との共生
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同性婚
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フェアトレード
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シェアハウス
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感染症とワクチン
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認知症
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国際問題
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