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感染症とワクチン
2021/7/29(木)まで無料公開
【医療ゼミ#3 前編】ワクチンの安全性はどのように評価されているのか――手を洗う救急医Takaさんが教える「新型コロナワクチンの安全性」
2021/7/29(木)まで無料公開
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感染症とワクチン
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【医療ゼミ#3 前編】ワクチンの安全性はどのように評価されているのか――手を洗う救急医Takaさんが教える「新型コロナワクチンの安全性」
2021/7/29(木)まで無料公開

2021年7月現在、日本でも新型コロナワクチンの一般接種が進むなか、一部メディアなどではワクチンによる副反応などが大きく報じられ、接種に不安を感じている人もいる。実際に、新型コロナワクチンの安全性はどのように評価されているのだろうか。
 
「医療情報の発信力を身につける」特別ゼミ3回目となる今回は、救急医としてキャリアをスタートさせ、ハーバード大公衆衛生大学院で公衆衛生を学び、現在は12万人のTwitterフォロワーをはじめ多くの人にワクチンをはじめとする医療情報を届ける活動をしている「手を洗う救急医Takaさん」こと木下喬弘医師に、新型コロナワクチンの安全性の確認方法やワクチン認可までの仕組み、誤った情報を報道する危険性などについて聞いた。
 

※本記事の内容は2021年6月30日時点の知見に基づいています。

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/6/30のライブ勉強会「【リディ部×手を洗う救急医Taka 特別ゼミ第3回】」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<手を洗う救急医Taka  / 木下喬弘医師>
2010年阪大医学部卒。大阪急性期・総合医療センターで初期研修、12年同救急診療科に入職。19年にフルブライト奨学生として、ハーバード大公衆衛生大学院に留学。20年HPVワクチン接種率向上への取り組みで同大大学院の卒業賞Gareth M. Green Awardを受賞。8月28日にHPVワクチンのsocial marketingを行うために一般社団法人「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」を共同設立し、現在副代表。科学に基づいた医療情報の提供を心掛け、Twitter(@mph_for_doctors)でも情報発信中。

ワクチン接種と死亡に因果関係はあるのか

2021年6月から、日本でも新型コロナウイルスワクチンの接種の一般接種が開始されている。しかしメディアでは「ワクチン接種後に重い副反応が出た」「こんな死亡事例がある」などといった、人々の不安を煽るような報道がなされることも少なくない。

 

ネット上のコメントでも「新型コロナにかかるより、ワクチンの副反応で死ぬほうが怖い」「ニュースを見ていると、ワクチンを接種するのをやめようかと思ってしまう」という声が上がるなど、一部ではワクチン接種を躊躇する要因の一つになっている面もある。

 

さまざまな情報が溢れるなかで、新型コロナウイルスワクチンの安全性を心配する人もいるだろう。しかし木下医師は「そもそも、新型コロナワクチンの安全性がどのように確認されているのか、その仕組みを正しく知り、理解している人自体が少ない」と話す。

 

まず、ワクチンを打って起きる症状は「有害事象」と「副反応」の二種類に分けられること、ワクチン接種とそれらの症状の因果関係の有無についても、理解しておく必要があるという。

 

有害事象とは、医薬品を投与された患者に起きる、あらゆる好ましくない症状や病気のことで、その薬物の投与との因果関係は問われない。一方で副反応は、その症状がワクチン接種との因果関係があるとみなされたもののみを指す。
 

(提供 木下医師)

 

木下医師は「新型コロナワクチンを接種した後になんらかの症状が出たからといって、それらすべてが副反応によるものだとは限りません」と話す。

 

「個人レベルのワクチン接種と死亡の因果関係は、確認のしようがないんです。

 

たとえば一人の人がワクチンを打ったとして、その後、体調が悪くなり死亡したとします。それがワクチンの副反応であることを示すためには、ワクチンを接種していなければ死亡しなかったことを証明しなければならないのです。

 

しかし、タイムマシンがあるわけではないので、ワクチンを打ってしまった後に『もし打たなかったらどうなったか』ということは確認のしようがないんです」

市販の医薬品は「使用するメリットの方が大きい」

ワクチンを含む医薬品の安全性評価は厳しく、医薬品が市販されるまでには、第一相試験から第三相試験までの三つの試験が実施される。

 

(提供 木下医師)

 

第一相試験は、健常のボランティアを対象に用量試験を実施。第二相試験では、比較的少数に対し「ランダム化比較試験」と呼ばれる試験を行う。第三相試験では大規模なランダム化比較試験が行われ、場合によっては第二相試験と一緒に実施されることもあるという。

 

これらの試験の後に、行政機関の認可を経て市販される。市販後もサーベイランス(調査)が実施され、より多くの症例が観察研究されていくことになる。

 

「行政機関による医薬品の認可は、非常に慎重に行われています。少なくとも、その医薬品を投与することで、デメリットよりもメリットのほうが圧倒的に上回るであろうことを確認したうえで認可されます。

 

ただし『接種のメリット・デメリットの差が思っていたほど大きくなかった』『接種後に重い副反応が出たため改良して販売すべき』という理由で認可が撤回されたり、使われなくなったりしたワクチンも、過去にはあります。

 

しかし『打ったほうがよい』という知見がひっくり返ることは、基本的にはありません。つまり、行政に認可されたワクチンという時点で、新型コロナワクチンを接種するメリットは、デメリットを大きく上回ると考えて大丈夫です」と、木下医師は話す。

ランダム化比較試験は優れた試験である

現在日本でも使用されているファイザー・ビオンテック社のワクチンの大規模なランダム化比較実験では、約3万7000人をランダムに約半数の二つのグループに分け、片方のグループ(1万8860人)はワクチンを、もう片方のグループ(1万8846人)は生理食塩水を接種し、対象者に何が起きたかを確認した。

 

その結果、接種後に有害事象が発生した割合は、ワクチンを接種したグループが0.6%にあたる126人、ワクチンを打たなかったグループが0.5%にあたる111人と、ほぼ違いはなかった。死亡例についても、ワクチンを打ったグループ内で2人、打たなかったグループ内で4人と、ほとんど大きな差はなかったことがわかっている。
 

(提供 木下医師)


つまり、新型コロナワクチンを打ったとしても打たなかったとしても、感染とは無関係の病気や入院をしたり、死亡したりする可能性はほぼ同じだということになる。

 

なお、モデルナ社製の新型コロナワクチンでも同様の試験が実施されたが、こちらも大きな差はなかったことが確認されている。

 

新型コロナワクチンの安全性を考えるとき、ランダム化比較試験の実験結果は大きな意味を持つと、木下医師は考える。

 

「ランダム化比較試験の優れているところは、ランダムに二つのグループに分けているため、感染、発症、副反応のリスクにおいて、グループごとの大きな違いがないことです。

 

たとえば若者と高齢者、外出が多い人と自宅にいる時間が長い人、基礎疾患の有無などで、一人ひとり感染リスクは異なります。ですがリスクの高い人も低い人も二つのグループに均等に分けることで、感染や発症、副反応のリスクもほぼ同じ条件のなかで比較ができるため、簡単かつ精度の高い試験ができるんです」と、木下医師は話す。

 

もちろん、ワクチン接種に関係なく病気になったり亡くなったりする人はいるため、ランダム化比較試験をしても、有害事象の発生や死亡者はゼロにはならない。また、大規模な臨床試験を実施しても、たとえば10万分の1、100万分の1などの確率で発生する稀な副反応まではわからない。

 

しかし木下医師は「『新型コロナワクチンを接種したから病気や死亡が起きた』と誤解させるような報道をしているメディアは、決して少なくないのが現状です」と話す。

 

「メディア側がワクチンを打った人の結果だけを見て、『因果関係がある』と間違った判断をしてしまっているのが問題だと思います。

 

打っていない人のデータは見ず、打った人のデータだけを対象にしているから、たとえば『ワクチンを打った人のうち、126人も有害事象が発生した』『ワクチンを300万人に打ったところ、200人が死亡しているというデータがある』など、あたかも因果関係があるように報じてしまう。

 

私も、メディア向けのセミナーでこういった報道の危険性について伝えてはいるのですが、きちんと理解しているメディア関係者は一部で、大半は知らないのではないでしょうか。

 

もちろん、ワクチンの安全性を懸念するのは悪いことではありません。しかし、その安全性に対し誤解を与えてしまうような報道や伝え方は、人々の健康に害を加えかねない行為ではないかと考えています」
 

 

・・・後編「【医療ゼミ#3 後編】アメリカと日本で大きく異なる安全性監視システム――手を洗う救急医Takaさんが教える『新型コロナワクチンの安全性』」に続く

 

 

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