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感染症とワクチン
2021/7/30(金)まで無料公開
【医療ゼミ#3 後編】アメリカと日本で大きく異なる安全性監視システム――手を洗う救急医Takaさんが教える「新型コロナワクチンの安全性」
2021/7/30(金)まで無料公開
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感染症とワクチン
2021/7/30(金)まで無料公開
【医療ゼミ#3 後編】アメリカと日本で大きく異なる安全性監視システム――手を洗う救急医Takaさんが教える「新型コロナワクチンの安全性」
2021/7/30(金)まで無料公開

2021年6月の時点で3億回以上の新型コロナワクチン接種を達成しているアメリカでは、新型コロナワクチンにおける安全性評価のシステムも優れている。日本にも同様のシステムはあるものの、課題も多い。

 

「医療情報の発信力を身につける」特別ゼミ3回目となる今回は、救急医としてキャリアをスタートさせ、ハーバード大公衆衛生大学院で公衆衛生を学び、現在は12万人のTwitterフォロワーをはじめ多くの人にワクチンをはじめとする医療情報を届ける活動をしている「手を洗う救急医Takaさん」こと木下喬弘医師に、アメリカと日本の新型コロナワクチンの安全性評価の違いや、日本における現行の仕組みの問題点などについて聞いた。
 

※本記事の内容は2021年6月30日時点の知見に基づいています。

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/6/30のライブ勉強会「【リディ部×手を洗う救急医Taka 特別ゼミ第3回】」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<手を洗う救急医Taka  / 木下喬弘医師>
2010年阪大医学部卒。大阪急性期・総合医療センターで初期研修、12年同救急診療科に入職。19年にフルブライト奨学生として、ハーバード大公衆衛生大学院に留学。20年HPVワクチン接種率向上への取り組みで同大大学院の卒業賞Gareth M. Green Awardを受賞。8月28日にHPVワクチンのsocial marketingを行うために一般社団法人「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」を共同設立し、現在副代表。科学に基づいた医療情報の提供を心掛け、Twitter(@mph_for_doctors)でも情報発信中。

アメリカの安全性監視システムとは

アメリカでは、新型コロナワクチンの安全性をどのように評価しているのだろうか。アメリカには「CDC」という疾病対策予防センターがあり、市販後のワクチンの安全性を監視するために、CDCが三つの優れたシステムを活用し、運用しているのだという。

 

一つ目が、ワクチン有害事象報告制度の「VAERS」。ワクチンを接種後に健康上の問題が発生した場合、医療従事者や患者・その家族、ワクチン製造業者など、ワクチンに関係するすべての人が報告できるシステムだ。
 

(提供 木下医師)

 

報告として上がってきたものはCDCとFDA(アメリカ食品医薬品局)の二つの機関が評価し、ワクチン投与により体調不良等が発生した人数などについて、常に監視している。同時に、自然発生との頻度も比較している。

 

「VAERSではワクチン接種後に死亡した人の人数はもちろん、ギラン・バレー症候群のような、ワクチン接種後に起きる可能性があるといわれる免疫系の病気がどの程度の頻度で起きているのかなど、常に比較しながら評価をしています。

 

ワクチンを接種した人のみのデータにはなりますが、規模の大きいデータベースとして参考にされています。接種後から報告まで、期間の制限などもありません。

 

ワクチンとの因果関係がなくても報告できる反面、報告は推奨されているものの受動的なシステムのため、なかには副反応のような症状を感じても報告しない人もいるなど、多少の報告漏れはあると考えられています」と、木下医師は話す。

 

二つ目のシステムは、ワクチン安全性データリンクの「VSD」。CDCと9つの民間病院が提携して運用する共同システムで、ワクチンの安全性評価のために、病院がデータを提供するシステムだ。
 

(提供 木下医師)

 

対象病院のすべての来院者が、どのような病気で来院したのか、ワクチン接種の有無などのデータを収集し、そのデータからワクチンとの因果関係などを推測できるという。

 

「VSDの優れた点は、VAERSとは違って、ワクチンを打った人と打っていない人の両方のデータを取得できる点です。

 

たとえばギラン・バレー症候群の患者数を比較する場合も、ワクチン接種者のうち何人が発症して、未接種者のうち何人が発症したのかといった比較もできます。

 

収集したデータの解析には通常数ヶ月から数年を要しますが、新型コロナワクチンに関してはその結果をCDCが速報で伝えていて、早い段階でデータも公開されます」

 

三つ目が、臨床的ワクチン安全性評価システムの「CISA」。これは、医師などの医療従事者がワクチンの専門家に個別に相談できるシステムだ。
 

(提供 木下医師)

 

「たとえば医者がワクチンの副反応のような症状が出ている患者を診て、ワクチン接種との関係性があるのかを知りたいとき、医師が専門家に症例を相談できるというものです。

 

CISAは、VAERSやVSDとはやや内容が異なるように見えますが、実はワクチンの安全性評価に一役買っています。CISAへの相談内容に、明らかにワクチン接種後に同じ病気を発症した患者の相談が続いたら『ワクチン接種との関係性があるのではないか』と、VAERSやVSDで確認することができます」

ワクチンの安全性を示す証拠はすでに十分ある

アメリカではこのほかに、CDCがワクチン接種者のスマートフォン上にテキストメッセージを送信し、接種部の痛みや熱が出たかなどの質問にチェックをつけて送信してもらい、局所反応および全身反応の頻度を調べる「V-safe」と呼ばれるシステムもある。

 

(提供 木下医師)

 

「V-safeは、VAERSやVSDの中間のようなシステムと考えるとわかりやすいかもしれません。VAERSと同様、ワクチンを打った人のみのデータにはなるものの、能動的に情報を取得できるという点で、報告漏れなどが少ないというメリットはあります。

 

V-safeでは、妊婦における接種後の安全性も確認しています。妊娠していると回答した人に協力を仰ぎ、ワクチン接種後の流産や死産、先天性異常や死亡などの頻度を比較したところ、どの事象も、ワクチン接種者の割合は自然発生の割合を上回っていなかったことがわかっています」
 

(提供 木下医師)

 

アメリカでは2021年4月の時点で2億回以上、6月には3億回以上、新型コロナワクチンの投与を達成している。そのなかで、ファイザーやモデルナ製などのメッセンジャーRNAワクチンが原因で死亡した症例はないということも、CDCは明らかにしている。

日本の「副反応疑い報告制度」の問題点

日本にもアメリカと同様、ワクチンの安全性をチェックする機関はある。しかし、その仕組みは大きく異なる。

 

日本の安全性監視システムは、厚生労働省によるものだ。予防接種法に基づいて医師が報告する「副反応疑い報告制度」と呼ばれるものと、薬機法に基づいて企業が報告する「副反応疑い報告」というものがある。
 

(提供 木下医師)

 

副反応疑い報告制度では、たとえば患者にワクチンを打った後に何らかの症状が起き、副反応が疑われた場合、医師がPMDA(医薬品医療機器総合機構)に報告。その後、厚生労働省が国立感染症研究所と協力・連携して調査を実施するという仕組みになっている。

 

しかし、現状の制度には問題点もあると木下医師は考える。

 

「まず、この制度における報告は、客観的な基準を元に行われているわけではありません。また、あくまで『疑い』のため、医者が患者に対して副反応を疑ったときだけ報告する仕組みになっているのが特徴です。

 

つまり、同じ症状の患者を診たときも、副反応だと考える医師とそうでない医師がいて、医師個人の判断で報告するかどうか変わってきてしまうということです。

 

たとえば、40代の男性が新型コロナワクチン接種の翌日に大動脈解離で死亡した事例が報告されています。

 

このケースでは、医師は『ワクチンとの因果関係はない』と判断したためPMDAには報告していなかった。ですが、今回の死亡は新型コロナワクチン接種との関連性が高いのではと考えた遺族の方から『この事例を国に伝えて、今後の研究に活かしてほしい』と言われたため、その声を受けて報告したという経緯があるそうです。

 

この場合、遺族の方に言われなかったら、医師は報告しないままだった可能性もあります」

 

(写真 木下喬弘医師)

 

実際に、2021年2月17日から同年6日3日までに日本国内で報告された280の副反応疑いの例のうち、275例が評価不能と判定されていることがわかっているという。副反応疑いの報告制度である以上、自然発生数との比較ができないという点もある。

ワクチン接種に関係なく病気は起きる

このほかにも、誤嚥性肺炎で入院していた100歳の女性が入院中に新型コロナワクチンを接種し、後日死亡した事例や、基礎疾患のない20代の女性がワクチン接種5日後に自宅で死亡し、血管腫や髄膜腫の疑いが見られたケースなどが副反応疑いとの事例として報告されている。

 

「この事例の場合、前者はもともと誤嚥性肺炎の症状があったことに加え、100歳と極めて高齢だった。後者は死亡理由として石灰化を伴う腫瘍が疑われましたが、これは年単位で形成されるもので、ワクチン接種後にすぐにできるものではありません。また、若年層の突然死は少数ではあるものの、常にゼロではない。

 

医学的見地からの検証なく『こういった死亡事例があるから、新型コロナワクチンにはリスクがある』と発信することは誤解を与えてしまいますし、無意味な恐怖心を煽ってしまうだけです」と、木下医師は話す。

 

新型コロナワクチンの安全性を伝えるときには、どのような伝え方をすべきなのだろうか。

 

「新型コロナワクチンの因果関係について伝えるときは『0か1か』ではなく、グラデーションで伝えることが重要だと考えています。

 

ワクチン接種の有無に関係なく病気は起きますし、数百万人にワクチンを接種していれば、接種後のタイミングで亡くなる人は出てくる。ワクチンの影響である可能性は低いにもかかわらず、あたかも、ワクチンのせいで死亡したように報道されてしまうことが問題です。

 

接種後の死亡例について伝えるときには、専門家の評価(解釈)とともに情報提供することが望ましいと思います」
 

 

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