no.
163
山岳遭難
2021/8/4(水)
登山のリスクと家族の思い――山岳遭難と自己責任論(後編)
2021/8/4(水)
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163
山岳遭難
2021/8/4(水)
登山のリスクと家族の思い――山岳遭難と自己責任論(後編)
2021/8/4(水)

国際山岳看護師(※)の中村富士美さんが代表を務める山岳遭難捜索チームLiSSには、遭難者の家族から捜索依頼が届く。遭難事故の件数だけ、そこには「家族あるいは遺族の苦悩」がある。捜索活動のみならず、家族の心のケアも中村さんの重要な仕事だ。

 

登山者・遭難者の現状や実態、山岳遭難のプロセスについて触れた前編に引き続き、後編では中村さんに「登山のリスクを誰がどう引き受けるのか」「自己責任論を強めることが遭難の抑止力になるのか」といった点について話を聞いた。

 

※国際山岳看護師:日本登山医学会が認定する国際的な制度で、山岳で医療活動を行う看護師のことを指す。山岳医療の知識に加え、登山や救助の技術・知識も持つ。

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/7/15のライブ勉強会「山岳遭難から考える自己責任論」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<中村富士美さん>
国際山岳看護師/山岳遭難捜索チームLiSS代表。WMAJ主催のアドバンスコースを受講したことをきっかけに、野外救急に興味を持つようになり、2017年日本登山医学会認定(UIAA/ICAR/ISMM)の国際山岳看護師に。 看護師としては、都内の市立病院で救命救急センター、集中治療室、心臓カテーテル検査室勤務を経て、現在は非常勤職員となり病院勤務を続けながら、安全登山の啓蒙活動や、山岳地帯における行方不明遭難捜索、救助活動を山岳看護師の立場でサポートをしている。山岳遭難捜索チームLiSSの代表も務める。

家族のケアも大切な役割

警察庁の「令和元年における山岳遭難の概況」によると、年間2000件以上の山岳遭難が発生しているが、そのすべてがニュースで取り上げられるわけではない。同じ山岳遭難でも報道されるものとそうでないものがある。その理由の一つは、家族への影響にあった。

 

「実名報道によって個人を特定されますから、そこから『葬儀を行いませんか』のように、詐欺まがいの連絡がご家族に来たこともあります。そういったことにご家族が巻き込まれてほしくないという思いから、私たちは遭難者について一切公表をしていないんです」

 

もちろん、少しでも情報が集まるように報道してほしいと考える家族もいるし、遭難の詳細を公開する捜索チームも中にはある。しかし中村さんのチームでは、遭難者本人と家族への影響やプライバシーを考慮し、一切の公表を行っていない。

 

このように遭難者の家族・遺族を無用なトラブルから守るのも、中村さんのチームの重要な役割だ。

 

また、心のケアも大きな課題になる。

 

家族が行方不明になるということの心理的な負担は非常に大きい。心配もするし、後悔もする。「なぜ行かせてしまったのだろう」と自責の念に駆られることもある。さまざまな思いを持って捜索隊に依頼をしてくるのだという。

 

(写真AC)

 

そんな家族に対し、中村さんはいつも遭難者本人の話を聞くという。

 

「警察には本人の人柄など、深い話はできないかもしれません。だからこそ、私たちはご本人が普段どんなことが好きだったのかなど、ちょっとした思い出話も含めて話を聞きます。

 

その情報は行動予測などの形で捜索に役立つこともありますし、ご家族にとってみれば『話ができる』ことが精神的な負担を軽減することにもなります」

 

遭難捜索は長期化するケースもある。長い期間に渡って捜索を続けていくためには、家族との親密なコミュニケーションや信頼関係が欠かせない。

 

捜索の先に遭難者が発見された場合でも、ケアは継続していく。不幸にも遭難者本人が命を落としてしまっていた場合、発見されたこと自体は良いニュースかもしれないが、現実を受け入れるのは簡単ではない。

 

中には、自分の家族はどういうふうにして遭難していったのか、その現場を見たいという方もいるという。

 

「そういった方には、実際に遭難した現場のすぐ近くまでご案内したりして、ご家族が少しずつ納得できるような、区切りをつけられるような手助けもしています」

登山に潜むリスクとどう向き合うか

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