支援者支援に求められる受容と代弁者――医療従事者のメンタルヘルス問題を考える(後編)
支援者支援に求められる受容と代弁者――医療従事者のメンタルヘルス問題を考える(後編)
新型コロナウイルスが発生して早1年半。ウイルスとの闘いに、未だ多くの人が甚大なストレスを抱えながら日常を送っている。
前編では、コロナ禍で支援者が直面しているメンタルヘルスの問題と、3.11の震災時と共通する傾向について触れた。いまもなお新型コロナウイルスの感染が拡大する中、こうした「支援者」の問題は続いている。
コロナ禍のいま、支援者が求めることは?私たちができることは何なのか。クラスター発生病院にて医療スタッフのメンタルヘルスケアなどを行う、福島県立医科大学医学部・災害こころの医学講座の主任教授、前田正治さんにお話を聞いた。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/7/1のライブ勉強会「コロナ禍での支援者支援は十分か?〜医療従事者のメンタルヘルスから考える〜」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
福島県立医科大学医学部 災害こころの医学講座 主任教授、放射線医学県民健康管理センター 健康調査・県民支援部門長、ふくしま心のケアセンター 副所長。
1984年、久留米大学医学部卒業。同大准教授を経て、2013年より現職。専攻は災害精神医学、精神医学的リハビリテーション。ガルーダ航空機墜落事故(1996年)、えひめ丸米原潜沈没事故(2001年)等で被災者の精神保健調査・支援の責任者を務めた。現在は福島県立医大において、放射線医学県民健康管理センター・こころ生活習慣調査の責任者を務めているほか、新型コロナウイルス感染症対策にも関わっている。日本トラウマティック・ストレス学会会長を2010年から3年間務めた。著書として、「心的トラウマの理解とケア」じほう出版、「生き残るということ」星和書店、「PTSDの伝え方:トラウマ臨床と心理教育」誠信書房、「福島原発事故がもたらしたもの」誠信書房、「遠隔支援スキルガイド」誠信書房ほか。
コロナ禍で失われた「集団の癒し力」
支援者が直面する課題として、3.11の震災時と今回のパンデミックでもっとも違う点がある、と前田さんは指摘する。
「『集団の癒し力』が機能しなくなったんです。これが自然災害とパンデミックの明確な違いですね。
自然災害の時は、昼間がどんなに大変であっても、夜一緒に食事をとることで苦労を労い合ったり、『大変だったね』と肩をたたき合うことができました。
こうした時間を持つことで、集団のチーム力が発揮されて、セルフケアの役割を担保していたんです。結局のところ、我々人間が困難に直面した時の対処法として『語り合い』の効能は大きい。
コロナ禍だとこのようなセルフケアの機会が奪われます。外出や人との交流が制限された萎縮した生活の中で、日々大きな精神的負担を抱える。うつ病などの精神疾患に罹患するリスクも当然あがります」
(写真AC)
セルフケアができない状態で、困りごとを共有する場もなく日々の過酷な業務に従事し続けなければいけない。それが第二波、第三波……と長期化することで、そのダメージはボディブローのようにじわじわと効いてくる、と前田さんは話す。
「本来、看護職などの支援者のストレスを緩和する一番の方法は『ローテーション』なんです。交代しながら人員を順番に回し、休息を与えられたらいい。
しかしコロナ禍においては、感染防御の立場から、関わるスタッフを最小限の人数に抑えようとします。そのため、どうしても特定の人にストレスがかかり、過重労働になりやすいのです」
こうしたハードな状況下でスタッフの離職が相次ぎ、医療現場は深刻な人員不足に喘いでいる。病院から引き止められ辞められないケースもあるという。
「医療スタッフの方々は、コロナに携わっているからといって、勲章をもらえるわけでもない。『なんのために働いているのか』と感じている人も多いと思います。使命感だけでなんとかやっているところはあるんじゃないでしょうか」
必要なのは「リスペクト」と「アクセプト」
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