身近にひそむ「ゲーム依存症」――自分の意志ではどうしようもできない依存の実態(前編)
身近にひそむ「ゲーム依存症」――自分の意志ではどうしようもできない依存の実態(前編)
2019年5月、WHO(世界保健機関)は「ゲーム障害(gaming disorder)」を国際疾病として正式に認定した。ゲーム障害を盛り込んだWHOの「国際疾病分類(ICD-11)」は2022年1月に発効される。
「ゲーム依存症は新しい病気。ギャンブルや薬物といった依存症ですら、まだ歪んだ認知がされています。ゲーム依存症はまだまだこれから、社会の認識を変えていかなければなりません」
こう話すのは、自身もゲーム依存の経験者であり、現在は依存症からの回復支援施設で生活支援員として勤務している坂本拳さんだ。
今回は、坂本さんに自身の経験やゲーム依存症の実態を伺った。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/7/30のライブ勉強会「何が子どもをゲーム依存にさせるのか」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
一般社団法人グレイス・ロード(ギャンブル依存症回復施設)生活支援員。1994年千葉県生まれ。 元看護師。ネット・ゲーム、ギャンブル依存症の当事者。2017年11月に山梨県にあるグレイス・ロードに繋がる。現在は支援者として当事者支援を行っている。2020年4月より現職。 看護師資格以外にASK認定依存症予防教育アドバイザー、令和元年度ギャンブル等依存症回復施設職員研修修了、令和2年度ゲーム・ネット依存症相談対応指導者養成研修修了など依存症に関する資格を取得。
ストレスからゲーム依存に
一般社団法人グレイス・ロードで依存症の人たちの支援に当たる坂本さんは、ゲーム依存症に苦しんできた一人だ。
「20歳頃、クレジットカードを作ったことをきっかけにスマートフォンのゲームに課金をするようになりました。最初は100円〜1000円くらいの課金だったのが、ゲームにのめり込むにしたがって1万、2万となり、社会人になる頃には25万円くらいの請求が来ました。
正直、当時は生活が苦しくても危機感はあまりありませんでした。『親がどうにかしてくれる』『最終的にはなんとかなる』という気持ちでいたんです。
でも社会人になって看護師として働き始めてから、消費者金融で借りたり、その借金を返そうとギャンブルにのめり込んだりと、どんどんひどくなっていきました。お金もなくなり、人間関係も壊れました」
一時は「仕事中に、目の前にある薬剤を見て『これを使って死のう』とまで考えました」と語る坂本さん。
そして23歳のとき、母親にSOSを発信。母親の紹介でグレイス・ロードにたどり着いた。
「グレイス・ロードで自分の話をして周りの話を聞いたら、『なんだ、俺だけじゃないんだ』と感じることができたんです」
回復プログラムを経て依存症から脱却した坂本さんは、今度は自身が当事者に手を差し伸べる道を選んだ。
(写真 坂本拳さん)
坂本さんがゲームにのめり込んだ背景には、ストレスがあったという。
「18歳で一人暮らしを始め、看護学校に通っていましたが、実習がすごくつらかったんです。
高校生くらいまでは『自分は努力すればできる人間だ』と思っていました。でも自力だけではどうにもならない部分が出てきて、理想と現実のギャップがすごく大きくなってきました。どうしてもそれが受け入れられなかった。
そこに友達や彼女との人間関係のトラブルもあり、いくつかのストレスが重なった結果、ゲームに走ってしまったんです」
ストレスのはけ口として始めたゲームだが、続けるうちに焦燥感やむなしさにも襲われるようになっていったという。
「スマホを肌身離さず持っていて、常にゲームの画面を開きたがる自分がいました。
自分でも、時間を無駄に使ってるとか、本当はもっと別にやらないことがあるのは分かっているんです。それでも、自分の意思じゃやめたくてもやめられない」
そこで、坂本さんは仕事中に死のうとまで考えるようになったという。
(提供 坂本拳さん)
疾病認定された「ゲーム依存症」
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