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自分の行動や声がけで、セックスワークのリスクは減らせる——風俗講師が考えるセックスワーカーの労働問題(前編)
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セックスワークにはさまざまなリスクがあるほか、個人事業主として自らの力で収入を得ていくことが求められる仕事でもある。しかし実際には、ほとんどノウハウやスキルを教えてもらえず、いきなり現場に放り出されるケースも多いのだという。

 

「性風俗という特殊な仕事だからこそ、しっかりとした研修を受けて自分の身を守れるようにしておくべき」だと考えるのは、元風俗嬢兼風俗講師の水嶋かおりんさんだ。現在は育児休業中だが、数年前まで自らの経験を活かし、セックスワーカーの活動団体であるSWASHに参加したり、セックスワーカーや性に悩む一般の人たちにアドバイスなどをしていた。

 

前編では水嶋さんに、セックスワーカーから講師という仕事に携わるようになったきっかけや、性風俗における研修の必要性などについて聞いた。


※本記事はセックスワーカーの労働問題について扱ったものであり、倫理的・道徳的な観点での性産業の是非を問うものではありません
※特にセックスワーカーの中でも、異性向けに接客をする女性として「風俗嬢」にフォーカスしています
※性風俗を取り巻く実態や、風俗嬢が抱えている事情など、より構造的な課題について知りたい方はぜひ構造化特集「性風俗」をお読みください

 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた3/19のライブ勉強会「危険と隣り合わせのセックスワーカーの労働問題」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<水嶋かおりんさん>
元風俗嬢 兼風俗講師、リディ部員。1983年生まれ37歳非婚・2児の母。10代より性産業に従事。ヘルス・イメクラ・SM・ソープランド・M性感・回春マッサージ・くすぐりデリヘルなど他業種を経て独立開業。風俗嬢兼風俗嬢講師・愛情工房☆性戯の味方☆一人女将さん・メイクラブアドバイザーを経て、現在育児休業中のエッチなお仕事大好きお母さん。性感染症予防啓発活動や自助グループ活動など社会活動にも参加。粘膜・体液接触を防ぐセーファーサービス14番まで監修 等。「性産業で働いても不幸にならない生き方作り」をテーマに山梨県北杜市に移住しつつライフデザインを自由研究中。著作は2冊。Twitterアカウントは@kaorinmizushima

自分が知りたかったことを教える立場に

水嶋さんは4人兄弟の末っ子として、山梨県北杜市で産まれた。裕福ではない家庭で両親の仲も悪く、酔うと暴力を振るう父親からビール瓶で殴られたこともあったという。

 

幼いころから家庭内に居心地の悪さを感じていた水嶋さんは、中学3年生のころから経済的に自立するため、援助交際を始める。その後は住み込みでキャバクラのアルバイトをしたり、高校進学後もヘルスで働いたりするなど、10代の頃から性産業に携わる機会があった。

 

高校2年生のとき、貯めたお金でJICAが主催するスタディツアーに参加しタイのバンコクへ行った水嶋さんは、自分よりも年下の女の子たちが売春をしている姿を目にする。

 

「彼女たちと自分が置かれている環境の違いを目の当たりにして、もっと真剣に生きようと決意しました。高校卒業後は上京して専門学校へ通っていたのですが、早々に挫折してしまって。中退後は本格的に夜の仕事を始めて、さまざまなジャンルの風俗店に勤務しました」

 

23歳のとき、新人の女の子の研修担当を任された水嶋さんは、そこからセックスワーカー向けの講師の仕事もやるようになっていったという。

 

水嶋さんが、セックスワーカーの女性たちに講師として教える立場に立とうと考えたのは、なぜなのだろうか。

 

「風俗の仕事をしていたとき、さまざまなお店で体験入店をしたり実際に働いたりするなかで、新人研修をやってくれないお店がすごく多いと感じていたんです。

 

具体的な指示やお店のコンセプトなどがきちんと説明されないまま『いつもやっているようにやればいいから』という感じで現場に出されて、いきなりお客さんがつく。はじめて来店するお客さんに当たったりするとなおさらどうしていいのかわからず、うまくやりとりできずに残念な結果になってしまうこともありました。

 

あとは技術的なことだけではなくて、たとえばお客さんとのネゴシエーションや、相手を傷つけない断り方なども知りたいと思っていましたね。

 

性産業の仕事というのはやはり特殊で、お客さんと女の子は、他人が介入できないような関係性にあることも多いんですね。だからこそ、お客さんに対して『嫌だ』『NO』と言っていい場面がどこなのかわからず、傷つく体験をしてしまう女の子も少なくありません。

 

自分が知りたかったことを教える役割になれば、これからセックスワークをする人たちが、悪い状況に置かれてしまうことを防げるのではないかと考えたんです」と、水嶋さんは話す。
 

(PAKUTASO)

「身を守りつつ上手に稼ぐ」ための研修が必要

研修に力を入れている性風俗店の数は、実際には多いのだろうか。

 

「たとえば、マットやローションなどの特別な道具を使ってサービスをするソープランドや、ある程度きちんとした技術が必要になるマッサージ系のお店では、講師による研修が用意されていることが多いですね。ちゃんとしているお店であればあるほど、研修に力を入れている傾向があります。

 

研修中に報酬がもらえるのかどうかは、お店によって違います。『お客さんがつかないと無給』というルールのところだと、お店側も女の子側も「お金にならない研修に時間をかけるのは無駄」という認識で、研修をやりたがらないところもあります。

 

あとは女の子側の気持ちとして『覚えなければいけないことがたくさんあるような難しいことはやりたくない』というふうに考え、研修を嫌がる人もいますね」

 

だが、性風俗店で働く女性がきちんとした研修を受けるのはメリットが大きいと水嶋さんは言う。

 

「私が実施する研修のなかには、女の子自身が嫌な思いをする機会を減らすための方法を教えるものもあります。

 

たとえば、初対面のお客さんに会ったらすぐに『優しそうな人で安心した』と伝えると、向こうも変なことをしにくくなる。あとは早い段階でハグなどの接触をして距離を縮めておくことで、相手の感情がマイナスにいかない流れにできるとか、そういうテクニックですね。

 

ちょっとした声がけや行動を工夫するだけで相手の反応が変わったり、嫌なことをされたり言われたりする隙を与えにくくなることがあるんです。

 

あとは延長をもらうためのトークや、一回きりではなくその場で次回の予約までつなげてから終えるというような、接客業としてのクロージングの手法を教えたりして、上手に稼ぐためのコツも教えています」と、水嶋さんは話す。

 

だが通常の研修がある店舗でも、水嶋さんが指導しているような自分を守ったり上手に稼いだりするための方法は、なかなか教えてもらえないという。

 

性風俗の仕事は雇用関係を結んでいるわけではなく、お店と女性は『事業主同士』ということもあるため、女性側が事前にこういったことを学んでおくことには意味があるという。

 

また、単に性的サービスを提供するだけではなく、接客業として相手を上手にコントロールすることで、嫌な思いをする回数を減らせるとも水嶋さんは考える。

 

「性産業の仕事は『感情労働(※)』と呼ばれることがあります。たとえば仕事中は、女の子側は『早く時間が過ぎないかな』と、自分の心を無にして取り組んでいたりもする。でも私は、コントロールする必要があるのは、自分の感情だけではないと思っているんですね。

 

お客さん側も、たとえばストレス解消や現実逃避を目的に性風俗を利用していたり、女の子の前で、普段の生活では見せない一面を見せたりもします。お客さんの感情が悪い方向に転んでしまうと、嫌なことをされたり言われたりするリスクが高まる。そうならないために、こちら側がコントロールしていかなければいけない部分があると思うんです」

 

※感情労働:感情の抑制や鈍麻(どんま)、緊張、忍耐などを不可欠の職務要素とする労働のこと
 

 

(写真 水嶋かおりんさん)

性産業について議論できない雰囲気がある

新型コロナ感染拡大は、性産業にも大きな影響を及ぼした。性風俗店で働くスタッフは個人事業主という立場にあるため、持続化給付金の対象となった。

 

しかし、性風俗店を経営する事業者は「公的支援による支援対象とすることに国民の理解が得られにくい」という理由で、支給の対象外となった。このことに対し、法の下の平等に反するとして、2020年9月には関西地方のデリバーヘルス業者が国に訴訟を起こしている。

 

性産業やセックスワーカーが国民の理解を得るのは、やはり難しいのだろうか。

 

「新型コロナのことがあるまで、たとえば性産業に関するロビー活動や、業界の団体をつくったりするという取り組みは起きていませんでした。そのことも、いまのような状況につながってしまっている側面もあると思っています。

 

ただ一方で『性産業』『性』というワードを聞いただけで拒絶反応を持ったり、どう関わっていいかわからないテーマだと感じたりする人たちがいることも、事実だと思っています。

 

私も自分の仕事について、すべての人に率直に伝えているわけではありません。いまは幼い子どもを育てている立場ということもあり、子どもを介して出会う人たちに対しては言わないことも多い。どこまで話すべきか、相手が不愉快に思わないようかなり慎重に手間と時間をかけて判断することはどうしてもありますね」

 

水嶋さんが問題だと感じることのひとつに、性産業というものがひとくくりにされてしまっていて、議論する場すら生まれていないということがある。

 

「たとえば今回、性風俗店以外にラブホテルの事業者も、持続化給付金だけでなくGOTOトラベルや都道府県ごとの給付金対象からも除外されていました。

 

ですが実際に、観光をするときの宿泊先として、ラブホテルを利用する人はいます。そういったこと自体も、そもそも議論の場に上げられないような雰囲気はあると思います」

 

 

・・・後編「労働者側と利用者側が知識や理解を深めることが必要ーー風俗講師が考えるセックスワーカーの労働問題」に続く

 

 

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