子どもの声を社会に届けるには――社会的養護の課題と現実(後編)
子どもの声を社会に届けるには――社会的養護の課題と現実(後編)
社会的養護(※)のもと暮らす日本の若者たちは、18歳になると施設や里親家庭を離れ自立していく。そんな中、より良い社会的養護を実現していくために、経験者であるユースが声を上げ、制度を変える原動力になろうとしている。
※社会的養護:保護者がいない、または保護者による養育が難しいと判断された子どもを、公的責任によって施設や里親のもとで養育・保護するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うこと。児童福祉法では、社会的養護下での養育措置は原則18歳までと決められている
後編では、社会的養護のもとで育つ子どもと若者の当事者団体・IFCA(NPO法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンス)の取り組みに触れながら、当事者に必要な支援について永野咲さんに聞いた。
※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた4/23のライブ勉強会「地域で子どもを育てる〜実親でも里親でもない新しい関係性〜」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。
※リディラバジャーナルでは構造化特集「児童養護施設」を掲載しています。より詳しい施設への入所背景や内実、退所後の課題などについてはこちらをお読みください
東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科博士後期課程修了。博士(社会福祉学)。日本学術振興会特別研究員(DC2,PD)等を経て、2020年から武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 講師。NPO法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンス(https://ifcajapan.org)副理事長。著書に『社会的養護のもとで育つ若者のライフチャンス−選択肢とつながりの保障、「生の不安定さ」からの解放を求めて−』明石書店(2017年)。
「自分の経験から社会を変えたい」。ユースが取り組むアドボカシー
NPO法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンス(IFCA)は、アメリカのワシントン州シアトルで生まれた、社会的養護の当事者(ユース)が活動する国際団体だ。永野さんは、IFCAの日本法人で当事者の若者の声を社会に届ける活動を支援している。
前編で触れたとおり、社会的養護のもとで暮らす子どもたちはさまざまな困難を抱えている。
自分の人生を自分で選ぶことができない環境に追いやられてしまっていることや、親に甘えたり、褒められたり、思うことを自由に発言したりといった関係性を築く機会を奪われてきたため、自分の意思を表明することが難しいことなどだ。
永野さんは「おかしいと声をあげたら叩かれる、身の危険を感じるという経験は抑圧されてきた人々に共通している問題です。
IFCAのユースプロジェクトは、17歳から27歳ぐらいの若者が中心となり、社会的養護のもとで暮らす子どもたちの『声にならない声』をどうやって社会に伝えていくのかという課題に挑戦しています」と話す。
ベースにあるのは「自分の人生を自分で決めたい、これからの子どもたちの未来のケアを変えたい」というユースたちの思いだ。
子どもの福祉は他の福祉サービスとはある一点で大きく異なっている。それは、18歳でサービスが終了してしまうこと。どんなにつらい経験をしてきても、まだ支援が必要な状態であっても期限が限られるということだ。
「だからこそ社会的養護下にあるうちに、こうして欲しいという気持ちを汲み取ってもらい、丁寧なケアを受けることが重要なのです」と永野さんは訴える。
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