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公開日: 2021/6/8(火)

「人権か管理か」の二元論に陥らない議論を――元職員が語る入管の実態(後編)

公開日: 2021/6/8(火)
公開日: 2021/6/8(火)

「人権か管理か」の二元論に陥らない議論を――元職員が語る入管の実態(後編)

公開日: 2021/6/8(火)

2021年5月18日、政府・与党が2021年の国会で成立を目指した出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案は、国連人権理事会から批判された上、野党からの追及を受けた結果、取り下げを余儀なくされた。

 

長期化する収容を是正したい政府と、人道上の配慮を求める立場の意見がぶつかり合っているが、元入管職員の木下洋一さんは、長年現場に立ち続けてきたからこそ、どちらの言い分も理解できると話す。


後編では、それぞれの立場からの目線に加え、当事者の苦しみや入管のあるべき姿について聞いた。

 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/5/20のライブ勉強会「元入管職員が入管法の賛否両論を語る〜行政の一部がブラックボックス?〜」で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<木下 洋一さん>
現役時代の密やかな自称、「入管のはみだし者」 。大学卒業後、1989年4月、公安調査庁(法務省の外局)入庁。(国家Ⅱ種採用) 2001年、入国管理局(現・出入国在留管理庁)へ異動。以降、2019年3月に退職するまでの18年間、入国審査官として東京局、横浜支局、羽田支局等地方(支)局において、在留審査、上陸審査、違反審判等の業務に従事し、現場から入管行政の内側を見続けてきた。入管行政に対する疑問から、現役職員であった2017年4月、神奈川大学大学院法学研究科に社会人入学。「出入国管理システムにおける行政裁量の統制に関する一考察」で法学修士学位取得。2019年3月、大学院修了と同時に入管局を早期退職。現在、未来入管フォーラム代表。

国と外国人、それぞれに言い分がある

今回、入管法改正案が提出された目的は二つある。難民申請を繰り返している限り不法残留者が日本に留まり続けられる仕組みの見直しと、送還を拒むことで収容が長期に渡る現状の是正だ。

 

収容の長期化が顕在化したのは、五輪を踏まえ、一時的な身柄の解放である「仮放免」の運用を厳格化したことが要因だ。6ヶ月以上に及ぶ「長期収容者」は、2015年の290人から、2019年には462人に増加。これはすべての収容者の約44%に当たる。


改正案では、三回目の難民認定申請が却下された場合に祖国への強制送還を行う制度を盛り込んだ。

 

木下さんは「難民申請中は送還されないということを奇貨として、これを悪用して送還を忌避する外国人への対応策としてのことだと思います。しかし難民申請者側から見れば、日本の難民認定はハードルが高く、本国に帰れば迫害のおそれがあるため、繰り返し難民申請をせざるを得ないということになります」と説明する。

 

相反した二者の主張だが、木下さんはどちらにも一定の理解を示す。
 
「たとえば現状では難民申請中は送還されませんが、難民申請は誰でも可能で、かつ、難民申請は繰り返しすることができます。

 

そのため、国サイドから見ればどんなに悪いことをした人でも難民申請が繰り返される限り、その外国人をいつまでたっても送還することができないという懸念があります。

 

一方、日本は難民認定率が低く(※)、外国人からしてみれば難民申請が適正に認定されないという不満がある。どちらにも言い分はあると思います」

 

※難民申請率の低さの背景にある問題などについては、構造化特集「難民問題」をお読みください
 
木下さんはアメリカで9.11同時テロが勃発した2001年、入管に異動した。

 

「テロリストを入国させてはならない」という思いから、「かつては自分も『外国人は厳しく管理するべき』という気持ちがありました。いまでも、入管行政には一定の厳しさがないとだめだと思っています」と、吐露する。
 
「人権を守るのも大事である一方、入管としては入国管理をするというのも責務です。『人権を取るのか管理を取るのか』という二元論で語りがちですが、両立できるんじゃないかというところから考えてほしい」
 

(写真AC)

罪のない子どもも本国に送還される

入管生活18年を通じて強く印象に残ったのは、「やっぱり子どもの送還のこと」だと木下さんは振り返る。

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構造化特集「地域医療」の内容を一部公開します
2023年6月9日

みなさんこんにちは、リディラバの鈴木です!今回は、リディラバジャーナルで公開中の構造化特集「地域医療」の冒頭をこちらのnoteでも公開します。何かあったら病院で治療が受けられる。私たちの「当たり前」を維持するために、様々な課題を抱えながら尽力する医療現場の姿を知ってもらえたら嬉しいです。


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6月の構造化特集「地域医療」への思い
2023年6月9日

この投稿はリディラバジャーナル会員限定のFBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。

******みなさん、こんにちは!担当した構造化特集「地域医療 超高齢化社会に必要な『撤退戦』」が本日より公開となりました!今日は特集内には書いていない、特集に込めた思いをご紹介させてください。

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子どもの発達障害、構造化マップを公開
2023年4月16日

※この投稿はリディラバジャーナルの会員限定FBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。*****みなさん、こんにちは!!!リディラバジャーナルの井上です。

今週はとても嬉しいことがあったので、ご報告させてくださいm(_ _)m

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構造化。テーマは「子どもの発達障害」
2023年4月7日

この投稿はリディラバジャーナル会員限定のFBグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。******みなさん、こんにちは!リディラバジャーナルの井上です。

早くも4月ですね。あっという間に過ぎ去る日々に「!?!?」という感じですが、今日も今日とて、リディラバジャーナルのご案内です。

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編集部メンバーの想いを公開しました
2023年3月26日

※この記事はリディラバジャーナルの会員限定Facebookグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。******皆さん、こんにちは〜!

編集部の井上です。今日は、

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「無戸籍」当事者の声を聞いてほしい。
2023年3月26日

※この記事はリディラバジャーナルの会員限定Facebookグループ「リディラバジャーナル企画室」からの転載です。ーーーみなさん、こんにちは!リディラバジャーナル編集部の井上です。

2〜3月は3年ぶりの構造化特集の復活ということで、「無戸籍」をテーマに構造化特集をお届けしてきました。

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CONTENTS
intro
ホームレス
no.
1
no.
2
若年介護
no.
3
no.
4
奨学金
no.
5
no.
6
差別
no.
7
no.
8
観光
no.
9
no.
10
子どもの臓器提供
no.
11
no.
12
都市とコロナ
no.
13
no.
14
ICT教育
no.
15
no.
16
産後うつ
no.
17
no.
18
宇宙
no.
19
no.
20
戦争
no.
21
no.
22
人工妊娠中絶
no.
23
no.
24
緊急避妊薬
no.
25
no.
26
テロリスト・ギャングの社会復帰
no.
27
no.
28
社会起業家
no.
29
no.
30
海上自衛隊
no.
31
no.
32
プロジェクト
no.
33
ソーシャルビジネス
no.
34
教員の多忙化
no.
35
no.
36
性的マイノリティ
no.
37
no.
38
出所者の社会復帰
no.
39
no.
40
ワクチン
no.
41
no.
42
薬物依存
no.
43
no.
44
性の悩み
no.
45
no.
46
リブランディング
no.
47
no.
48
少年犯罪
no.
49
no.
50
学校教育
no.
51
no.
52
LGBT
no.
53
no.
54
スロージャーナリズム
no.
55
no.
56
ソーシャルセクター
no.
57
no.
58
教育格差
no.
59
no.
60
メディア
no.
61
大人の学び
no.
62
no.
63
地方創生
no.
64
no.
65
家族のかたち
no.
66
no.
67
他者とのコミュニケーションを考える
no.
68
no.
69
地方創生
no.
70
no.
71
地方創生
no.
72
no.
73
非正規雇用と貧困
no.
74
no.
75
他者とのコミュニケーションを考える
no.
76
no.
77
家族のかたち
no.
78
no.
79
他者とのコミュニケーションを考える
no.
80
no.
81
地球温暖化対策
no.
82
no.
83
就労支援
no.
84
no.
85
1年の振り返り
no.
86
no.
87
動物との共生
no.
88
no.
89
行政のデジタル化
no.
90
no.
91
温暖化対策
no.
92
no.
93
動物との共生
no.
94
no.
95
地方移住
no.
96
no.
97
動物との共生
no.
98
no.
99
温暖化対策
no.
100
no.
101
組織論
no.
102
no.
103
キャリア
no.
104
no.
105
復興
no.
106
no.
107
コミュニティナース
no.
108
no.
109
MaaS
no.
110
no.
111
地球温暖化
no.
112
セックスワーカー
no.
113
no.
114
感染症とワクチン
no.
115
no.
116
大学生の貧困
no.
117
no.
118
温暖化対策
no.
119
no.
120
同性婚
no.
121
no.
122
フェアトレード
no.
123
no.
124
シェアハウス
no.
125
no.
126
飲食業
no.
127
感染症とワクチン
no.
128
no.
129
国際報道
no.
130
no.
131
社会的養護
no.
132
no.
133
認知症
no.
134
no.
135
入管法
no.
136
no.
137
国際問題
no.
138
no.
139
コミュニティ
no.
140
no.
141
コミュニティ
no.
142
no.
143
コミュニティ
no.
144
no.
145
吃音
no.
146
no.
147
コンサル×社会課題解決
no.
148
no.
149
いじめ
no.
150
no.
151
社会課題×事業
no.
152
no.
153
社会課題×映画
no.
154
no.
155
感染症とワクチン
no.
156
no.
157
社会教育士
no.
158
no.
159
山岳遭難
no.
160
no.
161
支援者支援
no.
162
no.
163
いじめ
no.
164
no.
165
ゲーム依存
no.
166
no.
167
トランスジェンダーとスポーツ
no.
168
no.
169
うつ病患者の家族
no.
170
no.
171
パラスポーツ
no.
172
no.
173
代替肉
no.
174
no.
175
弱いロボット
no.
176
no.
177
戦争継承
no.
178
no.
179
女性の社会参画
no.
180
no.
181
子どもの居場所
no.
182
no.
183
感染症とワクチン
no.
184
no.
185
デジタル社会
no.
186
no.
187
若年女性の生きづらさ
no.
188
no.
189
ゼブラ企業
no.
190
no.
191
多胎児家庭の困難
no.
192
no.
193
ソーシャルイノベーション
no.
194
no.
195
ジェンダー
no.
196
no.
197
毒親
no.
198
no.
199
葬儀
no.
200
no.
201
感染症とワクチン
no.
202
no.
203
子どもの安全
no.
204
no.
205
優生思想
no.
206
no.
207
感染症とワクチン
no.
208
no.
209
障害
no.
210
no.
211
水産資源
no.
212
no.
213
教育格差
no.
214
no.
215
障害と性
no.
216
no.
217
医療
no.
218
no.
219
シングルマザー
no.
220
no.
221
多文化共生
no.
222
no.
223
誹謗中傷
no.
224
no.
225
児童労働
no.
226
no.
227
不登校
no.
228
no.
229
政治
no.
230
no.
231
食料危機
no.
232
no.
233
お金と社会課題
no.
234
no.
235
震災
no.
236
no.
237
まちづくり
no.
238
no.
239
精子提供
no.
240
no.
241
選挙
no.
242
アロマンティンク・アセクシュアル
no.
243
クラウドファンディング
no.
244
レイシャルプロファイリング
no.
245
子育てと科学的根拠
no.
246
高齢者雇用
no.
247
介護
no.
248
no.
249