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国際問題
2021/6/11(金) : 2021/6/18(金)まで無料公開
貧困の連鎖から脱却するために必要なこと――若きアントレプレナーが見たサブサハラ・アフリカ(後編)
2021/6/11(金) : 2021/6/18(金)まで無料公開
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国際問題
2021/6/11(金) : 2021/6/18(金)まで無料公開
貧困の連鎖から脱却するために必要なこと――若きアントレプレナーが見たサブサハラ・アフリカ(後編)
2021/6/11(金) : 2021/6/18(金)まで無料公開

前編では通称サブサハラ・アメリカと呼ばれる国々の現状に触れたが、特にガーナ国内の貧困の格差は根強く残っている。
 
世界銀行によると、2016年時点の国内の貧困率は、首都がある地域では5.2%にとどまる一方、北部の農村地帯では45.2%となっている。 
 
現地で小規模農家向けの事業を営む牧浦土雅さんは、その原因の一つに「教育の格差」があると訴える。都市部に比べ農村部の就学率が低いことが、農村に支援が行き届かず、貧困から抜け出せない仕組みが変わらない要因となっているという。
 
後編では、なぜ農村地帯での教育が進まないのか、リディラバ代表の安部敏樹と対談。新型コロナウイルスの影響で海外に行く機会が減少する中での国際協力の意義や、牧浦さんの事業の今後の展望についても聞いた。
 

※本記事の取材は「リディ部〜社会問題を考えるみんなの部活動〜」で行われた2021/3/4のライブ勉強会『【国際問題を自分ごとにVol.1】「援助」は途上国を豊かにするのか〜理想論で終わらせない国際協力〜』で行われました。リディラバジャーナルの取材の様子は「リディ部」でご覧いただけます。

 

<牧浦土雅さん>
Degas株式会社 代表取締役。2012年以降、東アフリカはじめ5ヶ国以上(ルワンダ、インドネシア、フィリピンetc)に住み、オンライン教育からヘルスケアまで幅広い事業を立ち上げる。国連と共同開発した人工衛星解析サービス“Next Space”の代表も務める。第28回国家戦略特別区域諮問会議に出席し、サンドボックス特区創設を首相・関係閣僚に、カルロス・ゴーン日産自動車会長(当時)らと共に提言。Wedge誌『平成から令和へ 新時代に挑む30人』等に選出。趣味は能楽と農学。 

格差を生み続ける 「貧困な教育」

 牧浦土雅  貧困問題に関しては、とにかく教育水準を上げていくことが一番大切なことだと思っています。現地では「時間を守らない」とか「借りたものを返さない」とか、さまざまな課題がありますが、それはそもそもの基礎教育がなってないからだというところがあります。 
 
農村では「村長の長男だけが唯一高校を出た」とか、都市部との格差も大きいです。教育水準が低いと返済の話ができなかったり、新しいことにチャレンジしなくなったりする。
 
たとえば、我々はとうもろこしの生産量を上げるため、輸入した種を農家に提供しているのですが、2020年は干ばつで全然雨が降らなくて、収穫量が下がってしまった。 
 
雨が理由なのに、農家からすると「お前たちのせいだ」となるわけですよ。そういう間違った固定概念みたいなのが結構あります。 
 
彼ら彼女らの考えを教育を通じて変えていくのは大変です。ただ、国として見たときに、比較的教育水準の高いルワンダは、人件費は高いけれども良質な人材が生まれている側面があります。

 

 安部敏樹  とはいえ、現状としては「そもそも現地に学校がない」ということもありますよね。 

 

(写真 安部敏樹)

 

 牧浦  「学校をつくることが最優先課題なのか」という話はあると思います。 
 
現地では、親御さんが農家で、子どもは収穫とか種まきのときに一か月ぐらい手伝わなきゃいけないというケースがとても多い。これがいわゆる「児童労働」と世界中のNPOからバッシングされています。でも、親御さんたちもさせたくてさせてるわけじゃないんです。 
 
現地の人はみんな、「3食きちんと食べられて、子ども全員が大学に行けて、家族が幸せになる」という希望を言います。 
 
ただ小学校すら卒業できなくて、親の手伝いをしてそのまま農地も引き継いで、農家でやっていくという負のサイクルがあるので、これを脱却しないといけません。 
 
それを考えると「所得水準の底上げ」が急務です。我々としては、まず自助的で持続的なモデルを現地でつくって落とし込むことが大事なのではないかと思っています。

海外への関心で生まれる主体性

 安部  国際協力の話をすると、「日本だってこんなに問題あるんだから、寄付するのではなくそちらにお金を使うべき」という批判がよく出ますが、それについてはどう思われますか。

 

 牧浦  まず、国際協力は寄付だけじゃないですからね。たとえば、財政投融資では基本的にお金を返済してもらわないといけない。また、資源を持ってる国を支援をすることで、その資源を手にすることができるケースもあります。 
 
もちろん学校建設とか完全な寄付でやっているのもありますけど、大半はそういう投融資で、しっかりとリターンがあるものになっていますね。 
 
そういう外交プレーに恩恵を受けてる日本人も少なからずいるということを、まず理解するのが大事だと思います。 
 
それこそ仮に日本が国際協力を全部ストップして、ブラジルで道路を作ってるプロジェクトが止まったら、もしかしたらブラジルから輸入してる穀物がストップするかもしれない。そうすると、その穀物を食べている餌鶏の値段が上がって、ファミチキの値段が上がる。そういう話ですよ。 

 

 安部  いまの話を聞いて、海外への関心が日本の政治や外交問題に対するオーナーシップを促す一つの機会になるとしたら、すごくいいことだと思いました。 
 
一方で、新型コロナウイルスの影響で国際交流の機会が減った現在において、国際問題を肌で感じることも少なくなっているような印象があります。

 

 牧浦  我々が日々食べてるもの、使ってるものには海外のものが使われている場合が多いですよね。iphone一つとっても、日本で作られた部品なんて微々たるものでしかありません。 
 
そういうことを少し調べるだけでも、「こういう風に世界と日本は繋がっているんだな」というのは分かるし、外に出て実際に外国の人を見るだけでも、問題に対する感覚が変わるんじゃないのかなと思います。

 

(pixabay)

需給ミスマッチ解消の先に「JA」を目指す

 安部  最後に改めてお聞きしたいんですが、今後、農業の需給ミスマッチの解決はどう図っていくんですか。

 

 牧浦  我々はいま、アフリカで流通総額の大きいとうもろこしを扱っています。 
 
買いたい人はたくさんいるけれども、農村の生産者と繋がっていないという問題があります。 
 
2020年ごろまでは農家からちょっと高値で農作物を買い取って、それを都市部の方のバイヤーに流すという、卸業者みたいなことをしていました。 
 
ただサブサハラ・アフリカの農地はアメリカとかオーストラリアの穀物大国と比べると、高品質な種子や肥料を使わず、貯蔵方法もしっかりしていないから、1/4くらいの生産量しかないんです。 
 
なので我々で農業資材を提供して、農業の仕方も教えて、収穫物で返済してもらうということをしています。ただ需給ギャップを解決するだけじゃなくて、しっかりと生産性や生産量を上げるところにも尽力しています。 
 
結構みんな種の撒き方から分からないんですよ。コンサルティングするにも資材やらでかなりのコストも資本も必要なんですけど、やりがいはあります。というか、やるしかないなと思ってやっています。 

 

(写真 牧浦土雅さん)
 
  牧浦    一つの目標としては、JAのように組織化された団体、会社をアフリカで作るということがあります。日本ではJAのおかげで農家の可処分所得が増え、今度は融資をしたいということで農林中央金庫ができて、新聞や郵便局、病院も生まれました。 
 
我々もアフリカの農家の所得を上げて、ほかのライフスタイルサービスを提供するところに非常に意義があると思っています。 
 
ガーナでは今、自分たちがガーナ最大規模のとうもろこし農家になっていますし、いいところまで来ています。2021年にはファイナンス事業に参入する予定です。今後5年くらいで、ナイジェリア、エチオピア、タンザニアあたりのイニシアチブも取っていきたいですね。

 

編集長からのメッセージ
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差別
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産後うつ
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宇宙
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地方創生
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地方創生
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非正規雇用と貧困
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他者とのコミュニケーションを考える
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家族のかたち
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他者とのコミュニケーションを考える
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温暖化対策
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動物との共生
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地方移住
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動物との共生
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温暖化対策
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温暖化対策
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シェアハウス
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国際問題
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